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分断と対談



 おぞましい魔力を感じ取ったコナーは急ぎ家を飛び出した。


 コナーの前に広がる光景、それは思い出したくないあの記憶。パぺティアが街に現れ何もかも壊した……あの……。


 「……パぺティアーー!!」


 コナーは雷の魔力を身にまとい、目にも止まらぬスピードでパぺティアの魔力の発生源へと向かった。


 ━━━━━


 「まぁ、こんな所ででしょう。さて、そろそろですかね。」


 パぺティアが自身の魔力により、正気を失った人間を眺めていると、爆音とともにコナー・エイベルが現れた。


 「お久しぶりですコナーくん。調子はいか……おっと!」


 パぺティアの姿を視認したコナーは神速の斬撃を放った。


 (なんだ……!今のは躱されたというより俺の剣が避けた!?)


 パぺティアは体を少しも動かしていなかった。コナーは目の前で起こったことを理解することができなかった。


 「お久しぶりですコナーくん。調子はいかがですか?」


 パぺティアはコナーの攻撃により中断された挨拶を再び再開した。 


「一家団欒の中、邪魔をしてしまい申し訳ありません。今日は我々魔人の最後の舞台!主演は我々魔人とコナー・エイベルご一行!世界の命運をかけた戦いの始まりです!」


 パぺティアはそう言うと手に持った大鎌をクルクル回転させ始めた。コナーが目の乾きに耐えられず瞬きをした一瞬の出来事だった。


 「ようこそ我々の城【テネーブル】へ」


 先程まで住み慣れた街にいたはずが、いつの間にか黒一色で統一された部屋へと移動させられていた。


 「……」


 コナーは自身の身に起きたことを理解できていないままパぺティアに斬りかかった。


 「無駄ですよ。あなたの攻撃が私に当たることはありません。」


 パぺティアの言葉通り、コナーの放った斬撃はまたしてもパぺティアの体を避けてしまった。


 「他の方々も戦闘を始めた頃ですかね?」


 「他の……みんなもここに来てるのか!」


 「皆さんには別の魔人と戦ってもらっています。ヤンくんにはジャンさん。クロエさんとシルヴィさんにはファウストさんを。」


 「ファウストは倒したはずだ!」


 「森の栄養にしていたでしょう?助けるのに苦労したんですからね……」


 「……ジル王子。ジル王子はどうした!」


 「あぁ、王子様なら今頃、マルク王と家族水入らずの時間を過ごしていると思いますよ。」


 「どうしてマルク王が……」


 「どうしてでしょうね?」


 クロエたちのことが心配なコナーは、がむしゃらに攻撃を始めた。

 

 (コナー!落ち着け!)


 チャクの声が頭に響き、コナーは冷静を取り戻した。


 (チャクさん……)


 (攻撃が当たらない仕組みを理解するまで魔力は温存するべきだ。今は様子を見ろ。)


 「まったく……ようやく落ち着いてくれましたか。そうですねぇ……ふむ。お茶にしましょうか」


 パぺティアが指を「パチン」とならすと、白いテーブルとその上にアフタヌーンティーが現れた。


 「お前は……何がしたいんだ!」


 「まぁまぁ、いいからいいから、さぁ座って。」


 パぺティアが椅子を引き座ることを促すと、コナーは体の自由が効かなくなり、椅子へと強制的に座らせられた。


 「君からあの日の答えを聞いていないからね。」


 サンテール城でパぺティアは「人は歩み寄ることはできても、真の意味で分かり合うことはできない」とコナーに言い残していた。


 「君のような善人が命懸けで魔物を滅ぼしたところで、人間がいる限り世界が平和になることは決してない。人間は分かり合えないからね。」


 「何を根拠に……」


「根拠?僕たちに根拠が必要なのかい?君だって知っているはずだ人の愚かさを、傲慢さを。」


 コナーは授業で習いこそしたものの、それは歴史として、過去の出来事としてしか考えたことがなかった。それを今、パぺティアによって考えさせられている。


 「人間には様々な壁がある。言語、人種、性別、性格、貧富、体質、環境。その全てが争いの原因であり、火種だ。仮にその全てが一致した人間がいたところで結局は赤の他人、全てを分かり合うことなんてできない。」


 パぺティアの生きた時代とコナーの生きた時代、それぞれ異なる環境であるものの、抱えていた問題は同じ、心の壁だ。


 「それを踏まえたうえで君に問う。果たしてこの世界に、君が命をかけるほどの価値はあるか?」


 これがパぺティアの出した答えなのだろう。現代を生きたコナーにパぺティアの言葉を否定することはできない。


 「俺は……」


 コナーが答えを出そうとした瞬間、三本の白い羽がパぺティアの頬を掠めた。


 「コナー・エイベル!何を呑気に魔人と話しているのですか!」


  そこに居たのはコナーを旅へと導いた、光の神ルミエルの守護者であるエクレレだった。


 「私が援護します、あなたは前衛を。」


 コナーへと指示を出す、エクレレをパぺティアは「やれやれ」というジェスチャーをしながら眺めていた。


 「エクレレさん。あなたはいつまでそんなことをしているつもりですか?」


 「何の話だ!?」


「まぁ、そろそろ話してもフェルメ様もお許しくださるでしょう」


 パぺティアが言葉を発すると同時に闇の魔力がエクレレを包み、エクレレに本当の記憶を取り戻させた。


 「う……嘘だ!」


 「嘘じゃありませんよエクレレさん。あなたは天使などではなく魔人です。」


 「で、では!ルミエル様は!」


 「ルミエル様はフェルメ様。フェルメ様はルミエル様なのです。あの御方が面白半分で作り出したもう一つの姿です。」


  (そうなんですかチャクさん。)


  (少なくとも俺が殺される前は光も闇も誰のものでもなかったからな……俺が二人の名前を知ったのはお前の記憶を見てからだ。)


 衝撃の事実にコナーは動転した。旅の始まり、その理由であるエクレレが敵である魔人であり、フェルメの手下だったのだ無理もない。


 「わ……わた……俺……は。」


 エクレレは頭を抱え膝から崩れ落ちた。


 「ハァ……なんだかしらけてしまいましたね。コナー・エイベル、そろそろ私たちも戦いましょうか。」


 パぺティアがそう言うと体の自由が効くようになり、コナーは後ろへ飛び退いて剣を構えた。 

 


  

 

 

 


 

 

 


 

 


 


 

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