海釣り
海釣り
「おう、コナー!戻ったか。ちゃんと親父さんたちにお別れしてきたか?」
ギルドにもどると昨日と同じ様に酒に酔ったジョゼフさんがそこにはいた。
「はい、まぁお別れと言っても同じ街にいるので会おうと思えばいつでも会えますけどね。」
「こういうのは形が大事なんだよ!形が!」
ジョゼフさんは一言話すたびに酒に手を伸ばした。
「おっとそういえば……ほらお前のギルドカード。今ナディアの野郎は、ギルドメンバー何人か連れて、海辺の生物の観察に行ってて留守だから、代わりに俺が預かっててやったんだ。」
「ありがとうございます!」
「これでお前もうちのメンバーの一人だ。このギルドに恥ずかしくない立ち振る舞いをするんだぞ。」
「このギルドに貢献できるよう頑張ります!これからお世話になります!」
ジョゼフさんからギルドカードを受け取り。ギルドの椅子に腰掛けナディアさんたちの帰りを待った。
「ただいまー!」
それから数時間が経ちナディアさんたちが帰ってきた。
「あっ、コナー!ちゃんとおじさんとおばさんとお話できた?」
「あぁ、ありがとうクロ。お前のおかげで胸のつかえが取れたよ。」
「ふふん!それほどでもないよ〜!そういえば私今日初めて海に行ってきたんだよ!海ってすごく綺麗なんだね!」
クロに海の良さがわかってもらえてとても嬉しい。これからこの世界の海について一緒にもっと知っていきたいと思った。
「明日も海に行くみたいだから明日はコナーも一緒に行こうね!」
クロと海に行く約束をしてから、すぐに次の日のための準備を急いだ。
━━━━━翌日━━━━━
「ねぇコナー。そんなに木の棒持って何かに使うの?チャンバラごっこ?」
「なわけないないだろ。海に着いてからのお楽しみだ。」
俺とクロは馬車に荷物を積み数名のギルドメンバーと共に海へと向かった。
「懐かしいな……」
向かっていた海は昔よく親に内緒で遊んで怒られた海だった。
「今日も私たちの船は魔力を貯めていて使えないから。砂浜の生き物の探索をするわよ〜。モンスターが出ることはほとんどないけど気をつけて作業してね。」
ナディアさんの話が終わり、俺は荷物を持ちクロを連れ海の近くに向かった。
「ねぇコナーそれ何してるの?」
俺は海に行けなくなった日から今に至るまで一人でコツコツ作っていた釣り道具一式を準備していた。当然この世界には存在しないものなのでクロは首を傾げている。
「はい、これクロのぶん。今から先に俺が投げるからクロも真似してみて。」
俺は丈夫でよくしなる木の棒に木のツルと木を削って作った針に幼虫を付けたものを海に飛ばした。クロは頭に?が浮かんでいたが針を海に飛ばした。
「ねぇコナーこれって何するものな!?」
「おっクロのにもうかかったか!クロ!その木の棒絶対離すなよ!」
俺は慌てるクロの釣竿を後ろから掴み慎重に魚が針から外れないように砂浜に引き寄せた。
「えっ何これ!」
小さな魚が砂浜にあがるとクロはとても驚いていた。
「ねー。それってなぁに?そんな木の棒で魔物を釣ることができるなんて凄い道具ね。」
ナディアさんが俺とクロの横から顔を覗かせていた。気がつくと周りにはギルドメンバーが全員集まっており全員不思議そうに俺たちのことを見ている。
「えっと……これは釣竿っていって。海の魔物を捕まえるための道具なんです。」
「なるほどね。木のツルの先にある針に餌をつけて捕まえるのね……いいわね!これ!帰ったらジョゼフさんにも教えてあげなくっちゃ!」
「よかったら、あと五本あるので皆さんもやってみますか?」
その日は帰りの時間になるまで釣りを楽しみ。釣った魚は氷魔法で凍らせお土産としてギルドへと持ち帰った。
ギルドに帰りナディアさんがジョゼフさんに釣竿のことを話すとギルドが資金出すから作り方を教えくれと言われ。俺はそれを受け入れ、ついでに母さんに投網の説明をして編んでもらい。俺は釣竿の設計図を描いてジョゼフさんに提出した。
「コナー届いたぞ!」
ギルドの扉が勢いよく開けられ、ジョゼフさんが嬉しそうな顔で俺の名前を呼んだ。ジョゼフさんの後ろには大量の釣竿を持たせられたギルドメンバーがいた。
「出来を見てくれ!どうだ使えそうか?」
ジョゼフさんが持ってきた釣竿は、設計図通り穂先に向かうほど細くなっていて、よく曲がり折れにくい。素人目でしかないがよくできているように思えた。
「よくできてると思います!それにしてもこんなにも早くできるとは思ってませんでした。」
「まぁな!大金出した甲斐があったな!」
大金を出した?
「ちょっとジョゼフさん!ギルドの金庫のお金ないんですけど!もしかして全部釣竿作りに!?」
ナディアさんはそう言い終えると同時に大量の釣竿を見て膝から崩れ落ちた。
「この釣竿で新種釣り上げれば金が入るんだからいいじゃねぇか、こまけぇやつだな。船のチャージも終わったことだし今日は全員で海に出るぞ!野郎ども準備しやがれ!」
「ーーーーーー!!」
ジョゼフさんの一声でギルド内に喜びの声が響き、一斉に準備を始めた。




