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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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鈴との打ち合わせ


今日は鈴との打ち合わせ。


待ち合わせは朝の2時半。

アパート前。

狂ってるのか?


「お嬢様?時間ですよ?」

フランに揺すられて目が覚めた。

早起きには慣れてきたとはいえ、流石にこの時間は厳しい。

「……ねむい。寝ちゃだめ……?」

なんでこんな時間に待ち合わせ。

了承しなきゃ良かった……。


コンコン


小さな音でノックの音。


「ほら、鈴お姉様来たみたいですよ。

 急いで急いで。」


フランがぼーっとする私を着替えさせてくれている。

全然頭が働かない。


「……ごめん、お待たせ。」

「遅い!」


3時。私は車の中で怒られていた。

鈴が運転してくれている。


「鈴、運転できたんだね……。」

「そりゃ勿論よ。

 足がねえと自分探しの旅はできねぇからな。」


鈴は高校を卒業してからずっと自分探しの旅に出ていた。

鈴の自分は見つかったんだろうか。

ああ、でも今聞いても絶対に頭に入らない。

大事な話をできる脳みそじゃない。


「お嬢様。寝ても良いですよ。」

「うん、大変なのはこれからだからなー。

 ゆっくり寝ろよ!」


2人に促されて私は目を瞑る。

でも大変なのはこれから?

今日は打ち合わせじゃないの?


フランと鈴がお喋りしてる声。

2人の声はなんとなく気持ち良くて、私はすぐに眠ってしまった。



「お嬢様?」

しばらく寝てただろうか。

時計を見ると4時半。

「思ったよりも早く着いちゃった。

 先にご飯食おうぜ。」

着いたのは漁港?

船が泊まってるのが見える。


「……今日は何するの?」

どう考えても打ち合わせじゃない。

「ん、釣り。」

鈴が遠くの船を指差した。

「つり?」

どういうこと?

「だって小鳥にバレたら不味いじゃん。

 海なら盗聴の心配ないぜ?」

ごめん、全然理解できない。


「私は釣りしてみたかったので嬉しいです!

 お嬢様も一緒にやりましょう?」

フランが上目遣いで私を見る。

それをされると断れない……。

「う、うん。

 じゃあ頑張るよ。」

でも釣りかー……。

初心者でも大丈夫なのかな……?


「じゃあ時間あるから先に打ち合わせしようぜ。」

「え、盗聴されないための海じゃないの?」


さっそく海に出る理由を見失った。

まだ思いっきり陸だよ。


「そんなん建前に決まってるじゃん!

 お前はほんとにバカだな!」

これは殴ってもいいかな。

うん、あとで殴ろう。


「あ、そうだ朝ご飯作ってきたんだぜ。」

鈴がおむすびをくれた。

「お嬢様。良ければ私のも。」

フランもおむすびをくれた。

両手におむすび。


「じゃあさっそく本題な。」

鈴が切り出した。

打ち合わせをしたいと言い始めたのも鈴だ。

なにかプランでもあるのかな。

古民家で驚かせるための作戦とか。


「よく考えたら俺たちで打ち合わせする意味ないや!

 打ち合わせ終わり!いたっ!」

さすがに手が出た。

後部座席から鈴の頭を叩いてしまった。

「だって俺らは現場で頑張るしかないじゃん!

 今日は釣りを楽しもうぜ!」

ていうかこいつ。

釣りがしたくて呼んだだけだろ。

汚い罠を張りやがって。


「……もう。」

まあここまで来ちゃったらしょうがない。

観念して鈴から渡されたおむすびを食べた。

「……あれ?」

食べてものすごい違和感に襲われた。

「お嬢様?どうしましたか?」

固まった私を見て、フランが心配そうな目で見てくる。

私はそれに首を横に振って答えた。

「うん、大丈夫。ちょっとびっくりしただけ。

 鈴、料理すごく上手なんだね。」

ただのおむすびなのにすごく美味しい。

中の焼鮭も塩が効いてる。


「ヘヘ。褒めても何も出ないぜ?」

「お嬢様!私のも!」


フランのおむすびにも齧り付く。

うん、さすがフラン。

もちろん、フランのおむすびも最高に美味しい。

甲乙つけがたい。

フランと甲乙つけがたいなんて、最高の評価だ。


「彼女からも好評なんだぜー。」

鈴がドヤ顔している。

でも本当に美味しいからしょうがない。

「……ていうか彼女居るんだよね?

 私たちのところに入り浸ってて大丈夫?」

週末はほとんど私たちのところに遊びに来てる。

さすがに心配されるんじゃ……?


「その分平日にイチャイチャしてるから大丈夫!

 それに俺がウロウロしてるのはいつものこと!」

「……そのうち刺されるよ。巻き込まないでね。」


その彼女さん今度紹介してもらわなきゃ。

私たちに害がないことをアピールしておきたい。


「私はその彼女さんにも会ってみたいです。」

フランが言いたかったことを言ってくれた。

「うん、そのうち連れて行くー。」

鈴はニコニコとそう言った。

できるだけ丁重におもてなししなければ……。


「あ、もうこんな時間。そろそろ行こうぜ!」

鈴が時計を見て声を上げた。

もう5時半。

ご飯を食べて、のんびり話してる間に時間はあっという間に経った。


(……でもこれから釣りかー。)


釣り、何も分からない。

不安しかない……。


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