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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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めぐるちゃんへのリベンジ


は、失敗した。


「めぐるさんは全然上達しなかったわ。」

そんな雛乃の言葉を信じたのが間違いだった。

真っ向勝負でボコボコにされた。


「ご主人様、お加減はいかがですか?」

今めぐるちゃんは笑顔で私の足を揉んでいる。

勝者は敗者に言うことを1つ聞かせられる。

めぐるちゃんからのペナルティ。

『今日1日だけめぐるちゃんのご主人様になること。』

倒錯してる気がする……。

そんな言葉は飲み込んだ。


「うん、良い心地だよ。

 めぐるちゃんもマッサージ上手になったね。」

「みゆちゃんにやり方教わったんです。

 こっちの足も失礼しますね。」


サッカーは終わったけど、ランニングなどの日課は継続中。

こうやってマッサージして貰えるのは悪い気がしない。


「今日は2人きりですからね。

 なんでも仰ってくださいね、ご主人様?」


ニコニコと笑いかけてくるめぐるちゃん。

今日はフランも小鳥とみゆちゃんとお出かけ中。

2人きりなのはちょっと珍しい。

でもめぐるちゃんにして欲しいことか……。

ぱっと思いつくことは特になかった。


「とりあえずこのままマッサージして貰おうかな。」

うつ伏せの姿勢で力を抜く。

マッサージして貰ってる間に次のことを考えよう。

何も思い浮かばなければ、スマブラの練習でも付き合って貰おう。


「……♪」

めぐるちゃんが鼻歌混じりに私の身体を揉む。

まあ楽しんでるのは良いことだ。

「あ、それフランがよく歌ってるやつだよね?」

よく聞くとフレーズに聞き覚えがあった。

フランの鼻歌。

歌詞もあるけど、地球人用じゃなかった。

人間には発音できない不思議な言語。


「フランちゃん、楽しくなるとよく歌ってますよね。

 フランちゃんのオリジナル曲ですか?」

「うん、多分そうだと思うな。

 フランは作曲の才能もあるのかもね。」


本当のところはどうか分からない。

フランの故郷の曲なのかもしれない。

宇宙を旅している間に考えた曲なのかもしれない。

私にも分からないことだらけだ。


それにしてもめぐるちゃんのマッサージがすごく気持ちいい。

みゆちゃんは力がまだ足りないけど、マッサージのツボは分かってる。

それを教えてくれるから、みんなどんどん上手になっていく。

私も前に小鳥に褒めてもらえた。


「……次は腰もお願いしていい?」

「今日はご主人様なんですよ?

 お願いじゃなくて、命令してください。」


やっぱり少し倒錯してる。

でも勝者の命令だからしょうがない。


「めぐる、次は腰。

 上手にできなかったらお仕置きだよ。」


私がそう言うとめぐるちゃんが息を呑む音が聞こえた。

その息遣いから緊張してるのが伝わる。

ていうかこれ、めぐるちゃん絶対に……。


「ストップ。」

めぐるちゃんの手が触れる直前に私はそう言った。

「!?はい!」

振り向くとめぐるちゃんが目を逸らした。


「……今わざと失敗しようとしたでしょ。

 正直に言って。何しようとした?」

めぐるちゃんは何も言わない。

「そう、めぐるちゃんは悪い子だね。

 そんなにお仕置きされたいんだ?」

めぐるちゃんが目を伏せる。

口元のニヤつきは隠せていない。


でもこのままお仕置きしたらめぐるちゃんの思うつぼだ。

なんとなくそれは悔しい。


「あ、そうだ。」

ちょっと良いことを思いついた。


「……ひゃっ」

めぐるちゃんを思いっきり抱き締める。

するとすぐにめぐるちゃんはその顔を赤くした。


「お、王子様???いったいなにを!??」

バタバタと腕の中で暴れる。

でもめぐるちゃんの抵抗は力が足りていない。

容赦なく抱き締めることができる。


「お仕置きが欲しいんでしょ?

 だから逆に甘やかしてあげる。」


困惑してるのが手に取るように分かる。

私はめぐるちゃんを抱え込んだまま、布団に倒れ込んだ。


「……めぐるちゃんは本当に可愛いね。」

髪を撫でつけ、耳元で囁く。


「ふふっ。耳まで真っ赤。」

「お、おうじさまぁ。これ以上は……」

「なに?」

耳に息を吹きかける。

するとめぐるちゃんは素っ頓狂な声を上げて黙り込んだ。


「ふふっ可愛いね。

 みんなが帰ってくるまで離さないからね。」

さらに強く抱き締める。

めぐるちゃん、すごく良い匂いがする。

小鳥と同じ匂いだ。

同じシャンプー使ってるのかな。


「ほら、目逸らさないで。

 私の方をちゃんと見て。」

その目は泳いでいて、焦点が定まってない。

私にお仕置きさせようとした罰だ。

もうちょっと楽しもう。

そう思ったところで、めぐるちゃんが口を開いた。


「……も、もう無理です!助けて!小鳥ちゃん!

 このままじゃ死んじゃう!」

めぐるちゃんは泣きながらそう叫んだ。


「え、小鳥?なんで??」

私が口に出してすぐにその答えは分かった。


押入れが開いて、そこからお出かけしてるはずの3人が現れた。


「!???え!ちょっと待って!

 お出かけしてるんじゃなかったの!?」


何も事態が飲み込めない。

誰か何か説明して!


「小鳥ちゃん!」

めぐるちゃんが小鳥の胸に飛び込んだ。

そして思いっきりデコピンされた。


「お前が仕掛けたんだろ。」

「なんでにげちゃうの?」

小鳥とみゆちゃんが溜め息をついた。


「私たちはお嬢様を守る為に待機しておりました!」

めぐるちゃんと入れ替わるようにフランが私の胸に飛び込んできた。

「あれ?私を守るため?

 めぐるちゃんじゃなくて?」

フランを撫でたら頭がスッキリした。

ちょっと落ち着けた気がする。


「急に落ち着くなよ。

 まあそこはそれで合ってるよ。」

「痛い、痛いよ小鳥ちゃん……。」


グリグリされてる……。

なんか可愛そうになってくる。


「でも今日は1日めぐるちゃんのご主人様なの。

 ほら、もうちょっと楽しも?

 こっち来て。」

めぐるちゃんに手を伸ばしたが、首を横に振られてしまった。

「いたっ」

それにフランにデコピンされてしまった。


「めぐるお姉様は瀕死です!

 これ以上はドクターストップです!」

フランがそう言うならしょうがない。

「じゃあまた回復したらね。

 それとも今日は一緒に寝る?いたっ」

またフランにデコピンされた。


「一旦お嬢様は連れて帰りますね!

 小鳥お姉様はめぐる様を宜しくお願いします!」

フランに手を引かれて、自分の家に戻る。


なんとも消化不良だ。


「仕方ない。代わりにフラン抱いていい?」

「勿論です!どうぞ!」


それからはフランを抱き締めて過ごした。


(……照れてるめぐるちゃんも可愛かったな。)

そんなことをぼーっと考えながら。


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