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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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雛乃とこのみちゃんの関係


その日は雛乃の家でご飯にした。


雛乃の家は小鳥の家と違って、ちゃんと食材がある。

なのでフランが張り切り始めた。

フランの料理を待つのんびりとした時間。

そこで雛乃は思わぬ名前を口にした。


「……そういえば、もしかしてこのみちゃんと遭った?」

私はその質問になんて答えるべきか思い浮かばなかった。


小鳥からこのみちゃんに関してはあんまり触れないように言われていた。

でもあれ?

雛乃が知ってるってことは小鳥から伝えたのかな?

この場合は正直に言っていいのかな。


「あ、やっぱり新入りだったのね」

答えあぐねていると、雛乃はそう言った。

「……?やっぱり?」

よく分からないけど、カマをかけられた?

私の反応を伺っていたような反応だ。


「小鳥さんがね。

 知り合いが駅で会ったから一応気をつけとけって。

 それで1番可能性高いのって新入りじゃない?」

「……それは私と小鳥が仲いいからだよね?

 知り合いの中で1番心配されてるんじゃなくて。」


そう言うと雛乃は少し目を逸らした。

もしかして雛乃にすごく頼りないって思われてる?


「だって小鳥さん……。

 普段から新入りのことすごく心配してるもの。」


なんだかすごく複雑な気分………。

普段から私のことを考えてくれてるのは嬉しいけども。


「……ちなみにどんな心配してた?」

「フランちゃんが居なきゃ野垂れ死んでるって。」


それは否定できない……。

なんなら出会った日はフランが居なきゃ山奥で死んでた可能性もある……。


「否定はしないのね。

 やっぱりフランちゃんってロボットだったりする?

 未来から新入りを助けに来た執事型ロボット的な。」


違うと思う。

でもそれを完全に否定する根拠はない。

いや、違うよね?

平行世界の私、野垂れ死んでないよね?


「ううん、フランは私の従姉妹だよ。

 ちょっと、いやかなり大人びてるけど。」

どっちにしろ正体は言えないから誤魔化すしかない。

そのうち皆に打ち明けられたらいいけどね。


「そう……。じゃあちょっと話を戻すわね。

 結局、このみちゃんとは遭ったのよね?」

今さら誤魔化すのは不可能だろう。

私は正直に答えた。

「うん、このみちゃんとは同じ大学だったんだ。

 雛乃との話を聞いて驚いたよ。

 まさかストーカーだったとは思わなかった。」

そう言うと雛乃は複雑そうな表情をした。


「このみちゃん、どんな様子だった……?

 悲しそうにしてなかった?」

心配そうな声。

あれ?

このみちゃんは雛乃のストーカーだったんじゃ……?


「あの子、会った時はすごく落ち込んでたのよ。

 付き合ってた彼女が行方不明になっちゃったって。

 私も結局逃げちゃったから……。」

雛乃が気にすることじゃないのに。

「会った時は元気そうにしてたよ。

 雛乃にはちゃんと振られたって思ってた。」

だから前向きに私に声をかけてきた。

んだと思う。


「当時は怖かったけど……。

 もう少し2人で話しても良かったかなって思うのよ。

 ただね、1個だけすごく嫌なことがあったの。」


多分、それは私も思ったことだと思う。

このみちゃんの嫌なところ。


「告白が『前の彼女の代わりになってください。』

 だったの……。」

「そう!それ!それはすごく分かるよ!」


それを言われて嬉しいとは思えないよ……。

人懐っこくて可愛いし。

友達として仲良くなるのは全然大歓迎。

でも雛乃に似てるから付き合ってって言われるのはあんまり嬉しくなかった。


「でも元気そうなら良かったわ。

 あ、あとこの話は……。」

「うん、小鳥には内緒ね。

 こんな話してたら小鳥にまた怒られちゃう。」


危機感が足りないって言われることは想像に難くない。

2人だけの秘密だ。


「2人ともー!そろそろご飯できますよ!

 運ぶの手伝ってください!」


フランに呼ばれて席を立つ。

今日のご飯は豚肉のみぞれ煮。

夏らしいさっぱりとしたメニュー。


その日はもうこのみちゃんについて触れることはなかった。

でもなんとなく。

またもう1回だけちゃんと話ができたら。

そんな風に思ってしまった。

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