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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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テレビゲーム対決 後編


「フラン……お願い……負けないで……」

私は涙目でフランを応援する。

鈴とフランの一対一。

もしフランが負けたら、私は1日鈴の専属メイドとして傅かなければならない。

そんな屈辱には耐えられない。


鈴は思ったよりもずっと強かった。

私の攻撃は全部避けるかガードされ、全く歯が立たない。

しかも鈴はすごい勢いで煽ってくる。

攻撃の隙間に屈伸する。

私がふっ飛ばされたら、煽りでアピールを挟む。

挙げ句の果てには、セルフ縛りプレイまでしてくる。

私を倒せる状況で、散々に痛めつけられた。

この試合が終わったら、どっちが勝とうがボコボコにしてやる。

私にそう思わせる試合だった。


「おい、タオルいるか?」

「……ありがと、小鳥。」


小鳥から受け取ったタオルで顔を拭く。

まさか大学生になってゲームで泣かされるとは思わなかった。


「でも意外と接戦ですね……。

 鈴さん、すごく強いです。」


フランも鈴も何も喋らない。

それだけ2人はゲームに没頭していた。


「鈴はあとで絶対にしばくから。

 止めないでね。」

「言われなくても止めねぇよ。

 あれはさすがにやり過ぎだ。」


小鳥から暴力の容認が出た。

今のうちに肩を温めておこう。


「あ、必殺技のボール出ました!」

画面を見ると、ふよふよとボールのような物がステージを漂っていた。

それを壊すとかっこいい必殺技が撃てる。

私がやっていた頃にはなかったアイテムだ。


「……」

「……」


本当に2人は何も言わない。

いっけー!とかおりゃー!とか言わないの……?

いや、フランが真剣になってくれるのは嬉しいんだけどね。


2人の使うキャラの動きを追う。

両方ともあと1回大技を喰らったら負けになる。

そんな大接戦。


パリーンっ!

スマッシュボールが弾ける音。

必殺技を撃てるようになったのは鈴だった。


「よっしゃ!俺のかぎゃーっ!!!」

でも次の瞬間に、フランのキャラが鈴のキャラを吹っ飛ばした。

「一瞬、気が抜けましたね。私の勝ちです。」

最後に立っていたのはフラン。

そう、私の愛しのフランの勝利だった。


「フラン!ありがとね!大好き!」

フランに抱きつく。

フランはえへへと照れながら笑った。

これで鈴にメイドとして仕えるなんて辱めを受けずに済む。

本当にフランには感謝してもしきれない。


「じゃあちょっと待ってね!

 鈴のこと殴らなきゃ!」

「ほどほどにですよ!」


フランも認めてくれた。

それほどまでに鈴の煽りは度を越してた。


「えっと……ごめんちゃい♪

 え、俺に跨ってまさかそんな……みんな見てるぜ?」

「歯ぁ食いしばれ」


とりあえず鈴がちゃんと謝るまでデコピンした。

私も泣かされたんだからおあいこだ。


「うぅ……みんな酷くない?

 誰も助けてくれないなんて……」

鈴も小鳥から渡されたタオルで涙を拭った。

「いや、まじでお前の煽りにはドン引きした。

 初心者泣かせんなよ。」

フランとめぐるちちゃんもその言葉に頷いた。

「だって、こいつ泣かせるの楽しそうだったから……」

私はもう一度鈴に馬乗りになった。

「ごめん!ごめん!もうしない!もうしない!」

でも馬乗りになっちゃったしな。

このまま降りるのもつまらない。


「ひゃっ。やめっ!やめてっ!」

とりあえずくすぐってみた。

うん、これくらいの仕返しがちょうどいいだろう。


「ではお嬢様?」

鈴から降りたらフランが意地悪そうな顔で声をかけてきた。

「どうしたのフラン?なんか悪そうな顔してるよ?」

フランはすごくニコニコしている。

「罰ゲーム、決まりました」

フランがじりじりとにじり寄ってくる。

私はその気迫に気圧され、一歩ずつ後退する。


「わっ」

布団に躓いた。

そうだ、今日はもう寝る準備をしていたんだった。

「罰ゲームなので、抵抗しちゃ駄目ですよ?」

フランが私を布団に押し倒す。

私はその獲物を捕食するかのような目に魅入られて……。

つい、頷いてしまった。


「わ!ちょっごめっ!ふふっあははっ!」

フランが私の身体を全力でくすぐる。

やばい。

息ができない。

笑いすぎて苦しい!

「ほら皆さんも来てください!

 みんなでやりましょう!」

フランが満面の笑顔でみんなを呼んだ。

「まっまって!もうだめっ!くるしいっはひっ!」

笑いながら降参しても、フランは楽しそうに笑うばかり。


「ごめんなさい、フランちゃんの命令なので」

「いやぁわりいな。罰ゲームだしな」

「うんうん。これはやり返しじゃないぜ。」


3人もすごく意地悪そうな顔をしていた。

悪いとか絶対思ってない!

咄嗟に逃げようとしたが、小鳥に身体を押さえつけられた。


「お願い……まって……」


そんな私のお願いも虚しく、そのあとはひたすら皆の好き放題にくすぐられた。


それがゲーム大会の顛末である。

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