鈴主催、鈴の歓迎会
「おらー!俺の歓迎会やろうぜ!
ゲーム持ってきた!」
サッカー大会の次の日。
鈴は突然やってきた。
「歓迎会はあとで開く予定だったんだけど……。」
月曜日。思いっきり平日。それも夜。
どう考えてもパーティをするには相応しくない。
明日も大学があるし。
「俺がそんなの待てる訳ねえだろ!
これ繋いでいて!小鳥っちたちも呼んでくる!」
鈴が持ってきたゲーム機を置いて、外に駆け出していった。
めぐるちゃんもゲーム好きだけど、どっちかというとアナログ派だ。
急に言われても、繋ぎ方とか分からない。
「お嬢様。私に任せてください。」
フランがテキパキとテレビに繋いでくれた。
「あ!これ!」
鈴が持ってきたゲームソフトを見てフランが目を輝かせた。
「これ!やってみたかったんです!!」
そのソフトは私も知っていた。
色んなゲームの人気キャラで戦うゲーム。
そう、スマ※ラだ。
「確かにこれなら皆でできるもんね。」
私も昔やったことある。
中学生くらいの頃はちゃんと友達も居たし。
「連れてきたぜー!」
鈴が勢いよく戻ってきた。
その後ろには小鳥とみゆちゃんとめぐるちゃん。
小鳥は呆れた顔。
みゆちゃんとめぐるちゃんは困惑していた。
「え、えっと……。今日は何するんですか?」
「俺の歓迎会!さぁ歓迎してくれ!」
困惑したままの2人。
「鈴お姉様!来てくれて嬉しいです!」
フランだけが鈴のノリに適応していた。
「いきなりそのテンションはきついよ。
ちゃんと自己紹介して。」
そう言うと鈴はコホンと1つ咳払いした。
「俺は鈴!気軽にりんちゃんって呼んでおくれ!」
何も情報が増えてない。
「悪い、こいつすごくバカなんだ。」
小鳥がフォローしてあげた。
でもバカなのはもう分かってる。
やっぱり鈴の情報は増えてない。
「でもきてくれてうれしい。
わたしもりんちゃんってよんでいい?」
みゆちゃんがそう言うと、鈴はみゆちゃんを抱えてクルクルと回りだした。
「ありがとう!俺はみゅーって呼ぶね!
よろしく!みゅーちゃん!」
「わ!わ!」
みゆちゃんがさらに困惑してる。
「ストップ」
小鳥が鈴の肩を抑えた。
「わ!小鳥っち!何すんだよ!」
「みゆちゃんが目回すだろ。
変なことすんな。」
解放されたみゆちゃんは少しふらふらとしていた。
「大丈夫?みゆちゃん?」
「だいじょうぶ。おもしろかった。
もういっかいいい?」
ふらふらとした足で鈴に近づく。
鈴はその脇を抱えあげ、もう一回クルクルと回った。
「きゃっ」
ニコニコしながら振り回されるみゆちゃん。
鈴は背がすごく低いから、仲の良い姉妹に見える。
「ありがとね、りんちゃん。
こんどちゃんとかんげいかいするね。
おやすみなさい。」
みゆちゃんはしばらく振り回されたあと、大家さんの待つ家へと帰ってしまった。
時刻は19時。
小学生が遊ぶ時間じゃないからしょうがない。
「いやー、でもみんな可愛くて困るなー。
フランちゃん、歳上のお姉さんに興味ない?
わ!ごめん!蹴らないで!」
ガシガシと脛を蹴ると、鈴は敢えなく降参した。
私の前でフランをナンパするとはいい度胸にも程がある。
「歳上のお姉さんなら大好きですよ!」
そう言ってフランが私に抱きついてきた。
私もフランを抱き締め返す。
「私も大好きだよ、フラン。」
そう、私たちは相思相愛なのだ。
鈴が入る余地はない。
「ていうか鈴、復縁したんじゃないの?」
「それはそれ!
好きな人はたくさん居た方が幸せじゃん!」
うわ、すごくクズの発言。
その彼女に今すぐ別れた方が良いって言ってやりたい。
「めぐるちゃん、鈴みたいになっちゃ駄目だよ。
あれ?めぐるちゃん?」
めぐるちゃんを見ると複雑な顔をしていた。
「ほら!めぐめぐは俺に賛成だって!」
「い、いえ!違います違います!
私のはもっと皆が幸せになれるユートピアで……」
「めぐる?何言ってんだ?」
「……忘れてください。」
まあめぐるちゃんの様子がおかしくなるのは珍しいことじゃない。
一応、今日の主賓は鈴だ。
話を戻そう。
「それで歓迎会だよね。ゲームの準備は
「ばっちりです!早く始めましょう!」
フランにセリフを取られてしまった。
その手にはもうコントローラーが握られている。
早く始めたくてしょうがない様子だ。
「さすがフランちゃん!話が早いぜ!
ほら、お前らも早くコントローラー握れ!
決戦じゃー!」
鈴の掛け声に合わせて、私たちもコントローラーを握る。
どれも新品のコントローラー。
鈴のコントローラーだけは使い古されたゲームキューブのコントローラーだ。
きっと奴はこのゲームをやり込んでいる。
久しぶりの戦い。
その相手としては不足はない。




