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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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小鳥ちゃんから王子様の感情


「小鳥ちゃんは王子様のこと好きなの?」


帰ってきた小鳥ちゃんにも同じ質問をした。

小鳥ちゃんも王子様と同じように小さく唸った。


「えっと……友達としてってことじゃねぇよな?」

私は小さく頷いた。

「そっか……。難しい質問だな。」

困ったように頭を掻く。

「え、えっと答えたくないならいいよ?

 ちょっと気になっただけだから……。」

流れで聞いちゃったけど、デリカシーがない自覚はある。

せっかくの楽しい1日に水を差しちゃったら申し訳ない。


「あー……。まあ気になるのはそうだよな。」

意を決したように小鳥ちゃんが私に向き合う。


「あいつはあたしの大事な友達だよ。」


小鳥ちゃんはそう、王子様と同じことを言った。


「付き合うのはなんか違うんだよなー……」


「付き合ったら、友情が恋愛感情に負けた気がする」


「あー……でもどうなんだろうな」


「あーくそっ。付き合いたい気持ちもちょっとあるな」


「まあでも」


「あたしとあいつはこれからもずっと一緒だろうしな」


「お互い、誰か他の人と結ばれることはねぇだろ。」

 

「あ、フランちゃんは別な。

 フランちゃんには勝てねえ。」


「だからまあこの関係でいいんだよ。」


最後にそう言って小鳥ちゃんは恥ずかしそうに微笑んだ。


「じゃあ王子様と付き合いたいって訳じゃないんだね」

「まあそれを完全に否定はできねえけどな。」

王子様と同じようにジトーっとした目で私を見る。


「……もしかしてあいつに告白しようとしてる?」

「ち、違うよ!気になっただけ!」


「それなら良かったよ。

 独り部屋になったら寂しくて死んじまう。」

そう言ってホッとしたように息を吐いた。


「そういえば、高校の時は付き合ってたってほんと?」

百合漫画のことは口外しないように言われたけど、こっちは禁止されてなかった。

小鳥ちゃんの口からも聞いてみたい。


「あのバカ。余計なことを。

 まあでも本当だよ。振りだけどな。」

「おー」


「人払いには都合良かったからな。」

そこは2人とも同じ認識らしい。

対外的な関係としてのビジネスカップル。

そこに恋愛感情はなかったらしい。


「ただ困ったことが2つあってな。

 あ、あのバカには秘密な。

 あいつ気づいてなかったから。」


私は首を縦に振って答えた。

王子様も気づいてないことがあったんだ。


「まずは1つ目。

 私たち、めちゃくちゃ爛れた関係だと思われてた。」

「え、なんで?」


王子様からは校内で手を繋ぐ程度だったと聞いてる。

すごく健全な関係だったと。


「あいつ当時は貧血でよく倒れてたんだよ。

 そんで毎回保健室に連れ込んでたからな。」


でもそれだけでそう思われたりするのかな。

私もたまに保健室連れて行ってもらってるけど、そんな噂になったことはないし。


「あいつ、おんぶは嫌だって言うんだよ。

 お姫様だっこがいいって。」

「なんでそんなことを……?」

「知らねぇよ」


それは王子様が悪い。

いや、おおかた小鳥ちゃんをからかおうとしたんだろうけど。

お姫様だっこで保健室に連れて行かれるのを見る方の気持ちも考えて欲しい。

そんなの続いたら、私も余計なことを考える自信がある。


「しっかり首に手回してくるしさ。

 たまにあいつが何を考えてるのか分からねぇ。」

また1つ呆れるように溜め息をついた。


「じゃあもう1つの困ったことな。

 なんかあたしとバカの百合漫画があった。

 思いっきり成人指定の内容で。」

小鳥ちゃんも気づいてたのか。

「……なんかリアクション薄くない?」

私はそんなことないよって誤魔化した。


「あたしがあいつに無茶苦茶する内容でな……。

 あたしはあいつにそんなことしねぇっての。」

その言葉にちょっとだけ引っかかった。

「……逆ならいいの?」

ちょっとした冗談のつもりだった。


「……」

小鳥ちゃんの顔が一瞬で真っ赤になった。

嘘でしょ……?

2人の解釈は王子様が合ってるの!?


「……もうこの話はおしまいな。

 今日はもう遅いし、おやすみ。」

小鳥ちゃんが無理やり話を切り上げた。

「う、うんごめんね。

 あ、でもその本ってどうなったの?」

ちょっと気になる。

「作者締め上げて発禁にした。

 ていうかあれ、あたしをからかうためだろうし。」

当然の帰結だった。

というか知り合いの犯行?

「あー……書いたのは鈴だよ。

 ほら、前にサッカーしにきてた。」


そっか。


「鈴に頼もうとか考えてない?

 鈴は内緒で何かとかできないからな。

 もし書かせたらすぐバレるぞ。

 泣くまで2人にデコピンするからな。」


う。それはさすがにリスクが大きいな。


「じゃあ今度こそおやすみ。」

そう言って小鳥ちゃんは自分の部屋に戻ろうとした。


「あ、でも最後に。」

小鳥ちゃんが立ち止まった。


「もしお前があいつと付き合うことになっても。

 あたしとも友達で居てくれよ。じゃあな。」


そう言って今度こそ小鳥ちゃんは自分の部屋へと戻った。


そっか。











次の日、私は親友の元を訪れて秘密の会議をした。


「……2人とも、そんな感じだったよ。」

「わかった。だったらだいじょうぶそう。」

「うん。2人で頑張ろうね。」


私よりもずっと小さい親友きょうはんしゃと固く手を握り合う。


私は王子様が好き。

そして小鳥ちゃんも好き。

もちろん、フランちゃんも好き。

それに、みんなが仲良くしてるのを見るのも好き。


だからみゆちゃんと目標は同じ。


このアパートのみんなでお付き合いをする。


それこそが、私たちの目標だ。

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