王子様から小鳥ちゃんへの感情
「王子様は小鳥ちゃんのこと好きなんですか?」
前から気になってた。
王子様は小鳥ちゃんのことが恋愛対象として好きなのか。
正直に言うと、私は王子様のことが恋愛対象としても大好きだ。
いつか王子様にもそういう目で見てもらいたい。
そんな風に思ってる。
「お嬢様は小鳥お姉様のこと、大好きですよ?」
聞くまでもないことでしょう?
そう言いたげにフランちゃんが首を傾げた。
分かる。それは分かるよ。フランちゃん。
でも王子様の口から聞きたい。
王子様が小鳥ちゃんをどう思ってるのか。
「うーん……」
困ったように王子様が唸る。
「やっぱり小鳥のことは大事な友達だと思う。」
少し考えたあと、王子様はそう言い切った。
「小鳥は最高の親友だよ。」
「私は小鳥を置いてどこにも行かないし、小鳥も私を置いてどこにも行かないと思う。」
「それにあいつ不器用だし!
私がちゃんと見てあげないと!」
「だから小鳥とはこれからもずっと親友。
カップルが親友より偉い訳ではないしね!うん!」
そう言って王子様は一人で納得したように頷いた。
「じゃあ小鳥ちゃんと恋人になりたい訳ではないんですね……」
私がそう言うとジトーっとした目を向けてきた。
「もしかして、小鳥のこと好きになっちゃった?」
すごくすごく訝しげな目。
「私は王子様のものですよ?」
そう言うと王子様は少し安心したように微笑んだ。
「危ない。小鳥にめっちゃ嫉妬するところだった。」
それが冗談なのかは分からない。
でもそう言って貰えると、顔がどうしてもにやけちゃう。
「でも小鳥ちゃんってすごくモテモテですよね。
昔からそうなんですか?」
「うーん、そんなことは無いと思うな。
校内では私たちデキてることにしてたし。」
「え?」
え?
聞き間違い?
「え?え?」
「そんなに驚く??」
私の様子に笑いながら、王子様は話を続ける。
「いや!本当に付き合ってた訳じゃないよ!
付き合ってる振りだから!」
王子様が弁明を始めた。
「私、王子様気取ってたじゃん?
急に不登校になって、戻ってきたら陰キャじゃん?
だから今ならイケるかも!って思われたの。
それを小鳥がバッサリと切りまくってくれたの!
で、もうそういうの相手してもらうのも大変だし……。
校内では手を繋いだりしてました……」
告解するように王子様はそう捲し立てた。
「でも本当に恋人の振りだからね!
それは勘違いしないでね!」
王子様はそれを何度も強調した。
「まあでもお陰でお互いに浮いた話はなかったよ」
元王子様のダウナー受け。
そのイケメン用心棒攻め。
そこに割って入るのは確かに難しそう……。
眺めてるだけで眼福だもん。
「……涎出てるよ?失礼なこと考えてない?」
咄嗟に口を拭く。
危ない。バレるところだった。
「でもねー………ちょっと困ったこともあったんだよ」
「困ったことですか?」
また王子様が頭を少し捻った。
そして耳を貸してと手招きする。
「これは絶対に小鳥に内緒ね。
気づいてなかったから。」
「え、えっと。分かりました。」
耳に王子様の吐息がかかる。
それだけでドキドキするけど、今は我慢。
「私と小鳥の百合漫画見つけちゃったの。
それもめっちゃr18……。」
「ぶっ」
思わず吹き出してしまった。
いや、でもナマモノは本人に見せるのはご法度!
すっごく悪い人だ!
「私、小鳥にあんなことやこんなことされてた……。
普通逆だよね!私が小鳥にするほうだよね!」
王子様が私の肩を掴んで、がくがくと揺さぶる。
私はそれには苦笑いして目を逸らした。
ごめんなさい、私も王子様は受けだと思う……。
「犯人は懲らしめたけどね!
でも小鳥は意外と初心だから絶対秘密ね。」
そう言って王子様は私の口に人差し指を当てた。
「でも万が一、万が一にだよ。」
「もしめぐるちゃんが小鳥と付き合う時は、私もその輪に加えてね。」
「小鳥と付き合うんじゃなくて、一緒にめぐるちゃんの彼女になるならちょうどいい距離感かもだから。」
そう言って、王子様は少しはにかんだ。




