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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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お風呂屋さんのリラックスタイム


小鳥におんぶされて車に詰め込まれた。

自分で歩くの疲れるからありがたい。


「おじいさん、ありがとうございます。」

「最近、頑張っとるからね〜。

 それにみゆのこと見てくれて助かるよ。」


助手席の小鳥に、大家さんがのんびりと答える。

大家さんの運転で私たちは銭湯へと向かっていた。


「おふろやさん、たのしみ。」

「みゆちゃんはお風呂屋さん初めて?

 私も初めてだから一緒だね。」

みゆちゃんとめぐるちゃんも和気藹々としている。

車の中はほのぼのとした雰囲気に包まれていた。


「お嬢様?疲れてるなら寝てもいいですよ。」

フランが私の頭を撫でてくれた。

私は首を振って答えた。

このほのぼのとした空気を味わいたい。


そもそも寝るほどの距離でもなかった。

車で20分ほど走って目的地へと着いた。

国道沿いにスーパー銭湯があることを初めて知った。


「じゃあまた後でな~。

 みゆ、いい子にしてるんだよ?」

みゆちゃんが頷くのを見て、大家さんが男湯へと消えた。


「じゃあおねえさん、いこっか。」

みゆちゃんが私の手を引く。

他の3人も私が転けないように注視していた。


「おじいさんは声を掛ける相手を間違えたな。」

小鳥がくつくつと笑う。

「お嬢様、今日はすごく頑張りましたからね。

 私はすごく誇らしいです!」

まあフランが褒めてくれるからいいや。

早くお風呂で回復したい……。




「はぁ~生き返る……」

どうにか湯船までたどり着けた。

限界まで頑張ったあとのお風呂。

こんなにも気持ちいいとは。


大家さんと別れた後も大変だった。


めぐるちゃんが鼻血を出しそうになり。

小鳥の腹筋を触らせて貰い。

フランとみゆちゃんが私の身体を洗おうとしたのを固辞し。

また小鳥の腹筋を触らせて貰い。


そしてようやく湯船だ。

身体中から疲れが抜けていくのを感じる。


「お嬢様。気の抜けた顔してますよ。」

フランが口元を抑えて笑う。


「フランはどう……?気持ちいいー……?」

「心地よさそうなお嬢様を見て癒されてます。

 今日はすごく頑張りましたね。

 よしよししてあげます。」

「ありがとー……」


横に座ったフランが頭を撫でてくれる。

天国にいるような気分……。


「フランちゃん、すごくお肌綺麗ですね。」

一方で、めぐるちゃんはフランを見て驚いていた。

「でしょー……。

 フランは神様が作った芸術品なんだよー……。」

勝手に私が返事する。

「はい、私は完璧な生命体ですからね!」

フランも続けてドヤ顔で答えた。


「フランちゃん、お人形さんみたいだもんね。

 羨ましいな。」

「でもめぐるちゃんも肌綺麗だよ。

 白くて綺麗。

 触ってみてもいい?」

「ここじゃ恥ずかしいです……。

 お家帰ってからなら……。」


そう言ってめぐるちゃんは恥ずかしそうに目を逸らした。


「ちょっとのぼせてきちゃいました……。

 先に上がっちゃいますね。

 皆さんが出たら電話してください。」


最後にそう言ってめぐるちゃんはお風呂から上がってしまった。

でもめぐるちゃんの肌も本当に綺麗だった。

硝子みたいに華奢な身体。

真っ白な肌も合わせて、深窓の令嬢って感じ。


「そういえば小鳥はー……?」

「みゆちゃんと一緒に露天風呂に行きましたよ。」

「そっかー……。じゃあしばらく2人でのんびりだね。」

「肩をお貸しします。」


フランが肩を差し出してきた。

私はそれに身を預ける。

すごく眠たい。

気を抜けば瞼が落ちそうになる。


「寝ちゃ駄目ですよ?」

フランが意地悪そうに言う。

私が眠そうにしてるの分かってる顔。

「ほら、お嬢様。寝ちゃ駄目ですよ?頑張って?」

耳元で囁くように。

小さな優しい声で。


あぁ……フランはずるいな……。

そう思いながら私の意識は少しずつ薄れて……。


「寝ちゃ駄目だぞー」

「がんばって。おきて。」


急に増えた声に驚いて起きた。


「もう。2人のせいで起きちゃいました。」

「わりぃわりぃ。」

「ごめんね。フランちゃん。」


いつの間にかみゆちゃんと小鳥が戻ってきてた。

2人は悪びれもせずにそう言った。


「そろそろ上がろうと思ってな。

 2人はどうする?」

「私もそろそろ上がろうかな……。

 ちょっと眠い……。」


3人に連れられてお風呂から上がる。

めぐるちゃんと大家さんも待ってるしね。


大家さんはすぐに見つかった。

さっき別れた地点で待ってくれていた。

でもめぐるちゃんが見当たらない。

電話を掛けても繋がらない。


(まあでも腕輪があるから……)

そう思ってめぐるちゃんのことを思う。

すぐに場所は分かった。

リラクゼーションスペースでのんびりしてるみたい。

フランを連れて向かおうとした時だった。


「わたし、ばしょわかるよ」

みゆちゃんが唐突にそう言った。

「ついてきて。」

迷うことなく、みゆちゃんはリラクゼーションスペースへと向かう。


「めぐるちゃん、おまたせ。」

「あれ、携帯……。電源切れちゃってました!

 ごめんなさい!」


何はともあれ、めぐるちゃんと合流できた。

あとは帰るだけだ。


「みゆちゃん、よくめぐるちゃんの場所分かったね」

「ぷろふぁいりんぐだよ」


そう言ってみゆちゃんはドヤ顔した。

めぐるちゃんは外であんまりご飯を食べない。

1人でゲームセンターにも行かない。

そうなると時間を潰す場所は限られてくる。

みゆちゃんの推理を要約するとそんな感じだ。


「みゆちゃんは本当に頭がいいな」

小鳥に頭を撫でられてみゆちゃんが笑う。


(腕輪無くても分かるもんなんだな……)

便利だからって頼りすぎてたかな。

ちょっと反省。


「おかえり〜」

大家さんは車で待ってくれていた。


これで長かった今日も本当に終わり。


短い人生を精一杯充実させる。

そんなフランの目標どおりの1日だった。



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