全力の練習の後
「王子様?大丈夫ですか?」
「おねえさん、いきてる?」
倒れるように布団に転がる私。
それをめぐるちゃんとみゆちゃんが揉みほぐす。
今日は頑張りすぎた。
私は何も言えずに2人のマッサージを受けていた。
朝5時半に起床。
6時からラジオ体操とランニング。
7時からご飯。
その後10時までサッカー練習。
16時まで大学。
小鳥と合流して19時までサッカー練習。
めちゃくちゃなハードスケジュールだ。
いくら気持ちは昂っているとはいえ、頑張りすぎた。
身体が悲鳴をあげてる気がする。
「う、うん。2人ともありがとね……。」
みゆちゃんは背中の上をふみふみしてくれて、めぐるちゃんは太ももを揉んでくれている。
疲れた身体に心地よさが染み渡る。
気を抜くとこのまま寝ちゃいそうだ。
「フランちゃんと小鳥ちゃんはまだ練習ですか?」
私はそれに頷いて答えた。
私がフラフラになっても、あの2人は一切疲れを見せてなかった。
フランは分かるけど、小鳥も疲れてないのはおかしいと思う。
実は小鳥も宇宙人じゃないのだろうか。
「……王子様の太もも、モチモチしてますね。」
「めぐるちゃん、セクハラ……」
「わたしもさわっていい?」
みゆちゃんも私の太ももを揉み始める。
まあ減るもんじゃないからいいけど。
「もちもち」
「みゆちゃんもセクハラだよ。
あとめぐるちゃんは今度やり返すから。」
「……それは楽しみにしておきます。」
しばらく2人は私の太ももをムニムニし続けた。
「でも昔はもうちょっと引き締まってたんだよ。」
だらしないと思われるのも嫌だから私は言い訳を始める。
「ちゃんと筋トレもしてたし、しゅってしてたからね。」
みゆちゃんは首を傾げた。
想像ができなかったらしい。
「みゆちゃん、実はこれ本当なんだよ。」
めぐるちゃんがフォローを入れてくれた。
「昔の王子様、すっごくモテモテだったんだよ。
口調も僕だったし……」
「めぐるちゃん、ストップ!」
それ以上は私の黒歴史だ。
触れることは禁止されている。
「きになる」
「ごめんね、ストップかかっちゃった。」
めぐるちゃんが頭を下げた。
「みんなひみついっぱい。
いつかきかせてね。」
みゆちゃんはそう言ってまた私の背中を踏み始めた。
でもイケイケだった頃の話はともかく、だらしなくなった理由は言ってもいいかな。
みゆちゃんには助けられてばっかりだし。
あんまり秘密は持ちたくない。
「じゃあだらしなくなった話ならいいよ。」
「いいの?ひみつじゃないの?」
「みゆちゃんには特別だよ」
それから私は演劇部だった頃の話をした。
また、演劇部を辞めて引きこもった話も。
みゆちゃんは背中を踏みながら、何も言わずに聞いてくれた。
「たいへんだったね。」
最後まで聴き終えるとみゆちゃんはそう言った。
大したことない失敗談。
それでもそんな風に励まして貰えるのは嬉しかった。
「ありがとうね、みゆちゃん。」
感謝を伝えるとみゆちゃんは頭を撫でてくれた。
めぐるちゃんも手を握ってくれている。
自分の中では割り切ったはずの話。
なのに涙が溢れてしまいそうになった。
「……すきあり」
「わ!ちょっ!ひゃっ!」
だけど泣くことはみゆちゃんが許してくれなかった。
急にお腹をくすぐられた。
堪らず私は笑ってしまう。
「っ!めぐるちゃんったすけっ!」
みゆちゃんのくすぐりはすごく上手だった。
笑いが止まらない!
苦しい!
「……王子様。」
めぐるちゃんが口を開く。
「私もくすぐっていいですか?」
駄目!死んじゃう!
そう言う前にみゆちゃんが答える。
「いいよ」
そして私は2人からくすぐりを受けることになった。
その後の5分間の記憶は定かじゃない。
「おーい、お風呂屋さん行かないかー?
爺さんが車だしてくれるってよー。
……って何やってんだよ。」
小鳥が帰ってきたことでくすぐりは中止となった。
「なんにもないよ」
「う、うん。なんにもしてないよ。小鳥ちゃん!」
2人はしれっと嘘をついた。
絶対にいつか仕返ししてやる。




