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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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恋バナとパンケーキ


「わ!すごく美味しそう!

 カップル限定なんで、諦めてたんですよ!」

目の前に置かれたクリームがどっさりと乗った大きなパンケーキ。

それを見てこのみちゃんは目を輝かせる。


「好きなだけ食べていいよ。」

そう言うと更に目を輝かせた。

「それじゃあ遠慮なくいただきますね!

 ありがとうございます!」

私は帰ればフランのご飯が待ってるしね。

たくさん食べてくれるのはありがたい。

2人前はあろうかというパンケーキの山。

それはみるみると、このみちゃんの胃袋へと収まっていった。


「前に付き合ってた彼女が居たんですけどね。

 ここに来る前に振られちゃったんですよ。」

「ありゃりゃ。それは残念だったね。

 じゃあ今日は私を彼女だと思ってよ。

 あ、おかわりいる?」

「え!いいんですか!?」


このみちゃんがまた目を輝かせた。

やばい、本当に食べられるのか。

完全に冗談のつもりだった。


「ごめん、冗談のつもりだった。

 今日はそんなに持ち合わせてないの。ごめんね。」

「いえ、そっちじゃないです!

 今日は彼女だと思っていいって方は本気ですか……?」


そっちも勿論冗談のつもりだった。

コミュ症が背伸びして冗談言うんじゃなかったなー……。

めっちゃ分かりにくいボケになっちゃった。


「先輩が彼女になってくれたらすごく嬉しいです……。

 まずは1日だけでもいいので良ければ……。」


期待を込めた目。

1日だけって条件なら良いのかな……?

いや、でもそういう中途半端なことしたら駄目だよね。

小鳥にまた怒られちゃう。


「うーん、期待に応えたいのは山々なんだけど……。

 好きな人がいるから、ごめんね。」

「そっかー、それは残念です。

 でもいつでも大歓迎ですからね!

 好きな時に声かけてください!」


このみちゃんがどこまで本気なのかは分からない。

残念っていう割にはニコニコしてるし。


「ちなみに好きな人ってどんな人なんですか??」

「うーん、まぁ絶対に他言無用なら教えてあげる。」

「はい、口の堅さには自信あります!」


そう言ってこのみちゃんは手で口にチャックをした。


「同じアパートに住んでて、私をよく助けてくれるんだ。

 すごくかっこよくて、すごくかわいいんだよ。」

「それだけだと、どんな人か全然分からないですよ。」

ちょっと口を尖らせるこのみちゃん。

でもこれ以上は秘密だ。

今度サッカーする時にこの人かもって思われたら恥ずかしいし。


そんな話をしている間に、このみちゃんがパンケーキを完食した。


「このあとは時間ありますか??

 良ければちょっと遊びたいです!」

「夜ご飯はうちで食べたいから。

 ちょっとだけならいいよ。」


そう言うと彼女はやったーって両手を上げて喜んだ。

何をするにも喜怒哀楽が激しい。

すごく元気な子だ。

ちょっと微笑ましい。


「ゲーセンとカラオケ、どっちがいいですか?」

その2つならゲーセンかな。

初対面の人とカラオケってなに歌えばいいか分からないし。


そのあとは特筆すべきことはなかった。

普通にエアホッケーをして、普通にクレーンゲームをした。

前に雛乃と遊んだ時と同じ。


「前の彼女はこういう場所来てくれなかったんです。

 何回誘っても断られちゃって。

 今日は先輩と遊べて夢が叶った気分です。」


ホクホクとした顔。

そう言われると私まで嬉しくなる。


「このみちゃんならまたすぐにできるよ。

 次はいい恋になるといいね。」

「うーん、でも僕はいつも同じようなタイプの人好きになっちゃうので……。

 やっぱり先輩が僕の……


ブブブブブ


このみちゃんの言葉を遮るように携帯が震えた。


「ごめん、電話かかってきた!

 ちょっとだけ待っててもらっていい?

 ついでにお花摘んでくるね!」


このみちゃんを置いて少し離れた場所へ。

電話を掛けてきたのは小鳥だった。


「もしもし」

『おいバカ、すぐ帰って来れるか?』

急すぎる。

「藪から棒だね。どうしたの?」

『いや、メイドさんたちがカラオケ行きたいって。

 折角だからお前も来て欲しいってよ。』

あー、そういうことか。

それなら確かに早く帰らないとだ。

でもこのみちゃんとも遊びたいしなー……。

あ、そうだ。


「ねえ聞いて!小鳥!」

『急にデカい声出すなよ。どうした?』

「新メンバー1人獲得したの!

 その子も連れて行っていい?」

『まじか!?すごいじゃん!!』

「そう、私だってたまにはやるんだよ。

 褒めて褒めて。」

『あ、でもまた大人だったりしないよな?

 同年代ならもっと褒めてやるよ。』

「私の2個下。大学1回生だよ。」

『それなら後でたくさん褒めてやるよ。

 どんな子なんだ?』


「えっと、明るくて元気で……。

 結城ゆうきこのみって名前の子!」

『は?』


小鳥の声が一気に冷たくなった。


「……どうしたの?声、こわいよ?」

「……」


小鳥が黙り込んでしまった。


『……今はそいつ、近くに居ないよな』

「う、うん居ないよ。」

『腕輪も使え。それと声を抑えろ。』


腕輪を使ってこのみちゃんの位置を確認する。

まださっきの場所に居る。

声が聞こえる位置じゃない。


『いいか、絶対にそいつはメンバーに入れるな。』

小鳥が真剣な声で私に言う。

あんなにいい子なのに。なんで。

その質問を予期していたように小鳥は続ける。


『そいつは雛乃のストーカーだ。』


絶対に雛乃に会わせちゃいけない、と。

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