最後のメンバー?
「それじゃあ今日は頑張ってくるね。」
「いってらっしゃい!お嬢様!」
今日はメイドさんたちが家にサッカーの練習に来る。
私は普通の人の練習にはついていけないし、今日は単独でメンバー探しだ。
メイドさんたちはフランが目当てだし、小鳥も一緒だから任せてしまっても大丈夫だろう。
私は私の任務に集中しなければ。
大学の授業を受けて、あとは学内をウロウロ。
声を掛けられそうな人……。
できれば1人で、あんまりキラキラしてなくて、怖くなさそうな人。
サッカーしたいぜーって言ってる人は居ないだろうか?
居るわけがなかった。
1時間ほど構内を彷徨ったが、めぼしい人は居ない。
11人まであと3人。
でも小鳥とフランは運動能力で言えば2人分はある。
だから最低でもあと1人居ればいいかなって思ってる。
「……でもあとの1人が見つからないなー。」
ベンチに座って独りごちる。
フランが恋しい。
もう半日もフランと会えてない。
メンバーは見つからないし、フランとは離れ離れ。
なんとなく悲しくなってくる。
「あとの1人ってなんのことですか?」
「うわ!」
急に話しかけられてびっくりしてしまった。
知らない子だ。
「人手が足りないんですか?
僕で良ければ手伝いますよ!」
「えっと、君は?」
「僕は1回生の結城このみです!
あはは、こう見えて女の子なんですよ。」
気になっていたことを先回りされてしまった。
このみちゃんの見た目は性別不詳って感じだ。
むしろ男の子に近い。
サルエルパンツにぶかっとしたパーカー。
声は女の子だけど、見た目だけだと判断が難しい。
「それで人が足りないってどういうことですか?」
でもこれはすごく嬉しい申し出だ。
このチャンスは絶対にモノにしたい。
かくかくしかじか
「サッカーのメンバーを集めてるんですね。
僕で良ければ力になりますよ!」
「ほんとに!?すごく助かるよ!」
このみちゃんの手を取って感謝を伝える。
このみちゃんはへへっと嬉しそうに笑った。
「あ、でも1個だけお願いしたいことがあります。」
このみちゃんは一転して深刻そうな顔をした。
お願い?できることならなんでもするけど。
「駅前にカップル限定のパンケーキがあるんです。
不躾なお願いですが、一緒に食べてくれませんか?」
「それくらいなら全然大丈夫だよ。
私が奢ってあげる。
報酬の前払いってことで。」
「わ!そんな!ありがとうございます!」
そうして私はまた1人メンバーを獲得した。
そう思って、浮かれていた。
このみちゃんの怖さも知らないで。
それを知るのはこの少し先。




