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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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意外な助っ人


「……というわけでメンバーが足りないんだよ。

 雛乃は誰かツテとかない?」

大学で暇そうな人を探してみたが、そんな人は見当たらなかった。

しょうがないから雛乃のツテに賭けてみることにした。


『そもそもまだ集まってなかったことに驚きだわ。』

電話の向こうで呆れ顔をしているのが目に浮かぶ。

「あと1年くらいかけて集める予定だったんだよ。

 もう頼れるのは雛乃だけ!

 誰か居ない……?」

そう聞くと雛乃は小さくため息をついた。


『はぁ……。

 もう1度メイドカフェの皆に声をかけてみるわ。

 でもあまり期待しないでね。』

これから仕事だから、と雛乃は電話を切った。


「お嬢様?メンバーは集まりそうですか?」

「うーん、ちょっと微妙かも。」


一応、鈴にもサッカーのメンバーになって欲しいとショートメッセージを送った。

だけど高校卒業以来、既読がついたことはない。

期待度はごくごく僅かだ。


それから改めて大学で捜索を続けたが手応えはなし。

今日は1度諦めて家に帰ることにした。


「きっと明日は見つかりますよ!」

フランはそう言って慰めてくれた。


しばらく経って雛乃から折り返しがあった。


「あ、雛乃。どうだった?」

『そのことなんだけど……。

 1人見つかったわ。でも……うーん。』

嬉しいニュースだ。

でもその割に雛乃は困ったような声をしていた。

 

『あ、その人が変わりたいって。』

「メイドカフェの人だよね?

 私も知ってる人?」

『話せば分かると思うわ。』

そう言って雛乃が電話を誰かに渡した。

話せば分かる?

一緒にお店に入った同期の子だろうか?


「えっと……。多分久しぶり、かな?

そちらで働いていた『しんいり』です。」

『お久しぶり。

 元気そうで何よりね。』


聞き覚えのある声。

落ち着いた、大人の女性の声。

あれ、もしかして……。


「店長さん!?」

『はい、店長よ。

 その後はどう?フランちゃんも元気?』

「え、えっと、はい!元気にしてます!」


咄嗟に答えられたが、全然何が起きてるのか理解できない。

まさか店長さんにサッカーしようって声かけたの?

雛乃の勇気、すごすぎる………。


店長さんとは研修のときと辞めるように言われた時くらいしか話したことがない。

カジュアルフォーマルなジャケットが似合う、クールな女性ってイメージだ。

年下に混ざってサッカーをするなんて、全然イメージができない。


『2人とも元気なら良かったわ。』

そう言うと店長さんは電話の向こうでふふっと笑った。

『人手が欲しいって雛乃さんから聞いたわ。

 私で良ければぜひ手伝わせて?』

店長さんは穏やかな声で私に提案する。


電話だと拍子抜けするほどに店長さんは穏やかだ。

職場で話していた時とは別人だと思うくらいに。

意外すぎて会話のテンポが掴みにくい……。


「あの、人手が欲しいってサッカーなんですけど……。

 運動はできますか?」

『私、運動はすごく得意なのよ。

 きっとお役に立てるわ。』


その声は自身に溢れていた。

でも店長さんってすごく忙しいだろうし……。

こんな遊びに呼んでしまってもいいのだろうか。

迷っていると、店長さんが話し始めた。


『急に辞めさせちゃったこと、申し訳ないなって思ってるのよ。だから、良ければ力になりたいの。』

「でもお仕事とか……大丈夫ですか?」

『その日はビルの点検でお休みなの。

 心配は要らないわ。』


もう断る理由も無さそうだった。


「それなら、お願いします!」

『えぇ、任せてちょうだい。

 格好いいところ見せてあげるわ。

 それじゃあ雛乃さんに変わるわね。』


『もしもし』

「雛乃!すごいね!店長さんに声かけたんだ!」

『たまたま話してるところに通りかかったのよ。

 でもすごく頼りになるでしょ?』

「うん!小鳥にも報告しておくね!ありがと!」


これでメンバーは残り3人。

あとちょっと!


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