タイムリミット
「あ、おいバカ。止まれ。」
毎朝のランニングのあと、小鳥に声を掛けられた。
なんの用だろ?
めんどくさい用事じゃなきゃいいな。
「2週間後に試合組んだから。
予定空けとけよ。」
え?
「ちょっと待って、小鳥。
2週間後?2ヶ月後じゃなくて?それとも2年後?」
まだメンバー集めきれてないよ。
そもそも今何人だっけ。
「お前、もうメンバー集め忘れてたろ。
ケツに火ぃつけて頑張れよ。」
それだけ言って小鳥は私の家に入ってしまった。
えー……。
まずは今のメンバーを整理しよう。
私、フラン、小鳥、雛乃、メイドさんが3人。
合計で7人。
あと4人足りない。
……とりあえず朝ご飯食べよう。
フランを待たせるのも悪いし。
「でも2週間って急過ぎない?」
「そこしか全員の予定合わなかったんだよ。
本当は一ヶ月くらい猶予欲しかったんだけどな。」
私以外の全員には既にアポイントを取っていたらしい。
延期はできないことも教えてもらった。
「というわけだ。精々頑張れよ。」
「むぅ」
もう四の五の言ってる時間もなくなってしまった。
できることから頑張ろう。
「ねえ、今日買い物付き合ってもらっていい?
お酒を買いたいんだけど。」
2人の私を見る目が変わった。
一気に戦場のようなギラついた目。
最大限に警戒しているのが分かる。
「違う違う!私が飲むんじゃないよ!
山城さんにメンバーになってもらおうと思って!」
それを聞いて2人の目が元に戻った。
アパートの一階に住む山城さん。
飲んだくれてるイメージしかないし、なんなら外に出てるところを見たことがない。
でも今の私にとって一番身近な人間だ。
「んー……でも山城さんはできないと思いますよ。」
「あれ?フランは山城さんと会ったことあるの?」
ちなみに私は山城さんの顔を見たことがない。
手紙だけの関係だ。
「深夜に歩いてるのをよく見かけます。
この前、声をかけたら色々お話できました。」
私が寝てる間に仲良くなっていたとは。
さすがフランだ。
「私も改めて誘ったのですが断られてしまいました。
あの人、太陽を浴びられないそうなので。」
そっか、それなら確かにサッカーは難しそうだ。
なにか病気なんだろうか?
お酒ばっかり飲んでるから、元気な人かと思ってた。
「もし運動できたらすごく強そうなんですけどね。
山城さん、身長180センチもあるんですよ!」
「180センチ!?」
それはすごく気になる………。
小鳥より10センチも大きいなんて。
「今度ごはんに誘ってみよ。
山城さんのこと知りたくなった。」
「それよりも今はメンバーのこと考えろよ。」
そうだった。忘れるところだった。
「とりあえず今日1人は見つけてくるよ。
大学の準備しよっか。フラン。」
今日は月曜日。大学もある。
適当に暇そうな人を見つけて……。
いや、それはハードル高いな。
やばい。本当に宛てがない。
「あと4人、小鳥の方でどうにかならない……?」
「どうにもしない。お前もちょっとは頑張れ。」
「フランは……?」
「お嬢様、友達を増やすチャンスです!」
やっぱり私がどうにかしなきゃいけないのか……。
試合までは残り13日。
全員で練習もしたいから、メンバー集めに使える時間はもう1週間もない。
先が思いやられる……。




