プールで遊ぼう 後編
みゆちゃんとパフェを食べて、また2人と合流。
ラッキーなことにさっきの連中と遭遇することはなかった。
いや、ラッキーというのは嘘をついた。
腕輪を使って全力で避けた。
あいつらのことを考えるのは嫌だけど、顔を見るよりはマシだ。
「おかえりなさいませ!お嬢様!」
元いた場所に戻ると、フランと小鳥はまだ水を掛け合ってじゃれ合っていた。
「パフェどうだった?」
「すごくおいしかった」
みゆちゃんはご満悦だった。
ニコニコとしたみゆちゃんの顔を見るだけで私まで満たされる気分だ。
「じゃあ全員揃ったしちょっと動こうぜ。
ウォータースライダー行こう。」
また4人で歩き出す。
フランとみゆちゃんは2人で手を繋いで私たちの少し前を歩いている。
小鳥は、また私のすぐ後ろにくっついていた。
「ねえ小鳥。やっぱり水着恥ずかしいんでしょ?」
「はぁ?なんでそう思うんだよ。」
いや、私が1人でアイス買うのは見送ったじゃん。
それに腕輪でお互いの場所は分かるから、私たちが帰るの待つ必要はないし。
ここまで後ろに隠れられると嫌でも分かってしまう。
「まったく、しょうがないな」
ラッシュガードを脱いで小鳥に渡す。
めっちゃ大きめの買ったし、小鳥でも着れるでしょ。
「ほい、これ着なよ」
「いや、でもお前が……」
「いいの。小鳥がチラチラ見られてるの嫌だし。」
そこまで言うと小鳥がラッシュガードを受け取ってくれた。
うん、スタイルはだいぶ隠せてる。
いい感じいい感じ。
私はちょっと露出多くなったけど、需要ないだろうからセーフ!
私に需要を求めてくれるのはフランとめぐるちゃんとみゆちゃんだけ!
だから恥ずかしさとかはありません。
「あ、おねえさんうわぎぬいだの?かわいい。」
「お嬢様、水着すごく似合ってますよ!」
2人も褒めてくれたし、これはこれでいい感じだ。
「……ありがとな」
小鳥がぼそっと耳元で囁いた。
どういたしまして。
普段お世話になってるしね。
これくらいはしないと。
ウォータースライダーは思ったより勢いがあって怖かった。
でもフランとみゆちゃんが褒めてくれたから3回乗った。
何回乗っても2人は褒めてくれた。
流れるプールも楽しかった。
浮き輪をつけたみゆちゃんが流されかけた。
みんなで追いかけるとみゆちゃんはニコニコと笑った。
もう1回みんなで水を掛け合って、ジャグジーに皆で入って、1日はあっという間に過ぎていく。
「だいまんぞく」
「今日も楽しかったですね、みゆ様」
手を繋ぐ2人を眺めて、私と小鳥もゆっくりと後ろを歩く。
今は小鳥も後ろではなく隣を歩いてる。
やっぱり隣の方が楽しいし嬉しい。
「あれ、さっきのお姉さんじゃん。
水着めっちゃ似合ってんね。
うわ、友達もすげえ美人。」
楽しくてすっかり忘れてた。
このプールにお猿さんが紛れていることに。
「ぁ゙あ?」
小鳥が全力で睨みを利かせる。
一瞬男たちがたじろぐ。
それでも男たちはしつこかった。
「……もうこれシバいてもいいよな?」
小鳥が小さな声で囁く。
正直すごく賛成したい。
でも喧嘩になったら私が足を引っ張るだろうし……。
小鳥1人なら4人くらい楽勝だろうけど。
「……すぐ近くに売店があるからそこに通報しよ?」
安全策を取ることを提言した。
小鳥は今すぐにでも殴ってやりたそうにしていたが、抑えてくれてる。
「ぐべぇっっ」
そう思っている間に男の1人が奇声をあげながら、吹っ飛んだ。
3メートルくらい吹っ飛んだ彼は、気を失ったままプールへと飛び込んだ。
「!?!?ゆうた!?ぐべっっ」
困惑していた男の1人が同様にプールへと吹っ飛んだ。
何が起きてるのかは分からない。
でもこんなことができるのは……。
「お嬢様!小鳥お姉様!大丈夫ですか!」
ふと横を見るとフランが居た。
「う、うん。今のどうやったの?」
気を失った仲間を助けに、残ったお猿さんたちもプールに飛び込んだ。
私には何も無いところからプールに向かって吹き飛ばされたように見えたんだけど……。
「そんなのは後です!
今トドメを刺してきます!
少しお待ちください!」
プールに飛び込もうとするフランを止める。
トドメってなに??
殺すの??
「待って!トドメはいい!トドメはいいから!」
「お嬢様がそう言うなら……。」
そう言ってフランは足を止めてくれた。
「楽しい時間に水を差すなんて。
万死に値します!」
ぷんぷんと怒るフラン。
「でも助かったよ。
もうそろそろ、あたしが我慢できなくなってた。」
小鳥がフランの頭を撫でる。
みるみるとフランの怒り顔は笑顔に変わっていった。
「でもさっきのあれ、どうやったの?」
「うーん、詳しく説明すると長くなるので……。
大学などで使う、自身を不自然じゃなくする能力の応用です!」
「あのめっちゃ吹っ飛んでたのも何か腕輪の力?」
「あれは少林寺拳法です!
初めてでしたが、上出来でしょう。」
アチョーとフランは小さくポーズを取った。
「みゆちゃんはやり残したことない?」
「だいまんぞく」
そう言ってすごく楽しそうに笑った。
「じゃああとはのんびり帰るか。
いやー、楽しかったな。」
小鳥が伸びをする。
小鳥も楽しめたみたいで良かった。
私も勿論すごく楽しかった。
フランもすごくニコニコしているし、聞くまでもないだろう。
帰り道は小鳥が運転してくれた。
一応しつこいナンパ連中が着いて来ていないかは少し警戒していた。
もしまた絡んできたら、フランが殺しかねない。
「すぅ……すぅ……」
出発してしばらく立つとみゆちゃんが寝息を立て始めた。
今日はずっと元気に遊んでいたから仕方ない。
ちょっと大人びてるところもあるけど、寝てる姿は等身大の小学生だった。
「今日はね、みゆちゃんがしつこいナンパから助けてくれたんだ。」
みゆちゃんが寝てる間に、自慢を始める。
あれだけかっこよかったんだもん。
皆にもそのかっこよさを教えてあげたい。
「みゆちゃん、演技もすごく上手なんだよ。
声も大きくて、びっくりしちゃった。」
「さすがみゆちゃんだよな。
うかうかしてたら惚れちゃいそうだな。」
「その時は小鳥とフランも引きずりこむね。」
みゆちゃんのハーレム計画。
それもありかも。
そう思えた1日だった。




