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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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プールで遊ぼう 中編


「お姉さん、一緒に遊ばない?」

いつの間にか男3人が私と同じテーブルに座っていた。

他の席は空いてるのに。

見たところ大学生くらい?

折角の楽しい気持ちに水を差さないで欲しいんだけど。


「こんなところ、一人で来ると思う?」

できるだけ声色を冷たくして返す。

お前らと関わる気はありません。

さっさと消えろと声色に意味を乗せて。


「じゃあお友達と一緒??

 俺等と一緒に遊ぼうよ?」

だが相手はそれすらも通じないほど馬鹿らしい。

私は心の中で大きなため息をつく。

「遊ぶ訳ないでしょ。じゃあね。」

それだけ言って私は席を立った。

「いやいや、みんなで遊んだ方が楽しいって」

「試しにちょっとでいいからさ」

男たちも席を立って私を取り囲む。

大声で助けを呼ぼうか。

ここからなら誰かには聞こえるよね。

私の肺活量ナメないで。

そう思って大きく息を吸った。


「おかーさーん!!どこぉー!」

その時、聞き覚えのある声で大きな音を立てて泣く声が聞こえた。

私たちのすぐ近く。

「やだぁーー!!おかぁさーんっ!!」

それは聞くだけで悲しくなるような子どもの泣き声。

少し離れたところに居た店員も。

ナンパしていた男たちも。

全員がそちらを向いた。


そこに居たのはみゆちゃんだった。


男達をかき分けてみゆちゃんの元に駆け寄る。

みゆちゃんは私だけに見えるように小さくべっと舌を出した。


「この子を迷子センターに連れて行くので。」

そう言ってその場を離れる。

男たちは着いてこなかった。



「……おねえさん、だいじょうぶ?」

角を曲がったところでみゆちゃんが聞いてきた。

「うん、大丈夫だよ。

 ありがとね。みゆちゃん。」

みゆちゃんの頭を撫でる。

「おねえさん、ふるえてるよ。

 わたしがいるからだいじょうぶだよ。」

そう言ってみゆちゃんは手を握ってくれた。


「でもどうして来たの?」

「わたしもアイスたべたくなったの。

 たべられなくてちょっとざんねん。」

そう言ってみゆちゃんは少し悲しそうにした。

「ごめんね。あとで他の場所で食べよ。

 アイスじゃなくてパフェでもいいよ。」

私がそう言うと、みゆちゃんはすごく嬉しそうな顔になった。


「あれ?早いな」

戻ると小鳥が手を振ってきた。

「みゆちゃん一人で行かせるなんて危なくない?」

助けてくれたのは嬉しいけどそれはそれ。

みゆちゃん一人だとやっぱり危ない気がする。


「フランが大丈夫だってよ」

そう言って小鳥はフランの手首を指差す。

「私が腕輪で様子見てたので心配には及びません!

 みゆちゃんに悪いこと考える人が居たら私が始末します!」

フランは水の中でパシャパシャとシャドーボクシングをした。

それなら確かに大丈夫か。

フランと小鳥が全力で追いかけたらバイクにだって追いつけそう。


「ちょっと遠くまでアイス食べに行こうかなって。

 たしか入口の近くでパフェ食べれたでしょ。

 みゆちゃんと行ってくるね。」

「……あれ?お嬢様。なにかありました?」

やっぱりフランには気づかれたみたい。

「あったけど大丈夫。

 みゆちゃんが助けてくれたんだ。」

そう言うとフランも小鳥もそれ以上は何も言わなかった。


「はやくはやく」

みゆちゃんが私を催促する。

2人で手を繋いで歩き出す


「みゆちゃんはかっこいいね。」

私がふとそう言うと、


「だっておねえさんのかれしだから」


「なる、つもりだから」


そう言って小さくその胸を張った。


 

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