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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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クレーンゲームと相性占い


運動能力テストは終わり。

あとは好きに遊ぶ時間!

やったぜ!


という訳で私たちは当て所なくゲームセンターを彷徨っていた。


「フラン!好きなの取ってあげる!

 見てみて!豚のぬいぐるみ!」

「お嬢様、クレーンゲーム得意なんですか??」

「ううん、できない!

 雛乃、任せた!」

「えー……」


雛乃が挑戦する。

クレーンは人形をこてんと倒しただけだった。


「雛乃もこういうの苦手?」

「だって初めてだもの。」

「では私にお任せください。」


今度はフランの挑戦。

人形はいとも容易く入手できた。


「えへん」

さすがフラン。

精密動作の鬼だ。


「やっぱり、フランちゃんはサイボーグなの?」

雛乃がフランを抱きしめながら聞いてくる。

「違うよ。フランは完璧な執事だもんね。」

フランは雛乃の腕の中できゃーっと小さく鳴いている。

私たちの話は聴いてなさそうだった。


「あ」

雛乃の足が止まった。

その目線の先には小さな小鳥の人形。


「欲しいの?」

聞くと雛乃は小さく唸った。

「フラン、これ取れそう?」

聞くとフランは強く首を縦に振った。

早くご命令を、と言いたげにその目はキラキラと輝いていた。

 

「いや、いいわ。自分で取りたい。」

雛乃が腕まくりをして筐体に100円を入れる。

台の中には小さなぬいぐるみがたくさん。

その中の1つに狙いを定めてクレーンを動かす。


スカッ。そんな音が聞こえるくらいの空振り。


「むぅ」

小さく唸ってリトライ。


軽快なBGMが鳴る中でクレーンは動く。

今度はクレーンに引っかかったが、途中で落ちてしまった。


「惜しい、あとちょっとだったよ。」

「次はいけます!頑張ってください!」

私たちの応援を受けて3度目の挑戦。

今度はしっかりとぬいぐるみを獲得することができた。


「おめでと!思ったより早かったね。」

「……どれくらいかかると思ってたの?」

「15回くらい?雛乃、不器用そうだし。」

「馬鹿にしないで。」


冷たい言葉とは裏腹に雛乃はすごくニコニコしていた。


「雛乃は本当に小鳥が好きだね。」

「別に、これは小鳥さんとは関係ないわ。

 可愛かったから欲しくなっただけ。」

「雛乃お姉様。

 お嬢様は小鳥お姉様とは言ってませんでしたよ。」

「……騙したわね。」


とてもいじらしい。


せっかくだし、他にも何か面白いものないかな。

そう思ってキョロキョロと辺りを見回すと面白いものをみつけた。


「これ見て!やってみたい!」

指さした先にあるのは占いの機械。

2人の誕生日を入力すると、その相性が分かるとのことだった。


「雛乃と小鳥はメインディッシュとして……。

 まずは私とフランからね!」


4月1日を2つ入力する。

その結果は……。


『2人の間にあるのは永久の友情。

 時に亀裂が走ろうと、真に友情が終わることはない。』


「やったね!フラン!

 私たちはずっと友達だって!」

フランを抱えてクルクルと踊る。

「ずっと友達!嬉しいです!」

フランの顔も幸せに満ちている。

私たち2人の占い結果としてはこれ以上ないくらい最高だ。

「うん、ずっとずっと友達だよ!

 嬉しいね!フラン!」

4回転ほどしたところで目が回ってダンスは中断した。

ミュージカルのようにはいかないな……。

よろめきながら一度仕切りなおす。

 

「じゃあ次は……私と雛乃にしよっか。

 雛乃の誕生日教えて。」

4月1日と入力して雛乃を待つ。

「私は4月の2日よ。」

え?

「待って、4月の2日って本当に?」

「なんでそんな嘘つくと思うのよ。」

1つ下の学年の4月2日生まれ。

私と誕生日1日しか違わないのか。

同級生の小鳥とは364日誕生日がずれてるから、雛乃の方が同い年とも言える。

ていうか今はそれよりも……。


「よし、やっぱり雛乃と小鳥の相性調べよっか。」

「なんでよ。新入りと私の相性はどうでもいいの?」

じーっと雛乃が見てくる。

いや、そういう訳ではないんだけどね……。


4月2日は小鳥と同じ誕生日だ。

雛乃と私はともかく、小鳥との相性占いは何となく気まずい。

なんかこれで『燃えるような恋になる』とか言われたくない……。


「なに?本当にどうでもいいの?

 そうなら傷つくわよ。」

事情があるなら説明しろとその目は語っている。

ような気がする。

「お嬢様?早く早く!」

フランは多分、雛乃と小鳥の誕生日が同じなことに気づいてる。

その上で2人との相性が知りたくて催促してくる。

しょうがない!なるようになれ!

4月2日と入力して決定ボタンを押す。

その結果は。

 

『最高に甘々で蕩けるようなカップル!

 所構わずいちゃつく姿は周囲からの嫉妬を招くでしょう。』


ぐはっ

思ったよりも恥ずかしいのが来た……。

こんなのバーナム効果でしかないのに……。


「なんでそんなに照れてるのよ。

 私まで恥ずかしくなるじゃない。」

結果を見た雛乃が冷静にツッコミを入れる。

「雛乃お姉様、さっそく甘やかしてください!」

「ええ、もちろん良いわよ。

 フランちゃん、すごく可愛い。

 食べちゃいたい。」

「えへへ」

2人がいちゃつき始めた。

確かにこれは嫉妬しそう。


「新入りはなんでそんなに複雑な顔してるの?

 甘々の蕩々、そんなに私に似合わない?

 そんなことないわよね?フランちゃん?」

「はい!雛乃お姉様は甘やかし上手です!」

雛乃に似合わない訳ではないけど……。


「あとで小鳥お姉様にも甘やかして貰わなきゃです!」

「なんで小鳥さん?」

「?小鳥お姉様も4月2日生まれだからですよ?」

「え!?」

 

「私……小鳥さんと誕生日一緒だったの……?

 恐れ多すぎるわ……」

雛乃は変なショックの受け方をしていた。


「それはそれで、なんで相性占い嫌がったのよ。

 実は新入りも小鳥さんが好きなの?」

も、って言ったよ。

この子、小鳥のこと好きなの隠す気あるのかな……。

でもその質問は否定しておかねば。


「いや、そういう訳ではないよ。

 単に小鳥の解釈違いを聞きたくなかっただけ。

 甘々の蕩々とか、小鳥には似合わないよ。」

「え、すごく似合うじゃない?」

「小鳥お姉様、よく甘やかしてくれますよ?」


じゃあ甘やかして貰えてないの私だけかよ。

それはそれで釈然としない。


「あ!」

フランが遠くに向かって手を振る。

すると遠くに見える人影もこちらに手を振って返した。


「よ、こんなところで会うとか奇遇だな。」

「王子様たち、もう仲良しさんですね!」

人影の正体は小鳥とめぐるちゃんだった。


私は咄嗟に占いの画面を消した。



「小鳥お姉様!甘やかしてください!」

「急にどうしたんだよ?いいけど。」


小鳥がフランの頭を撫で始める。

フランと雛乃がしたり顔で私を見る。


「小鳥。私のことも甘やかして。蕩甘に。」

「気でも触れたか?」


やっぱり小鳥はそうじゃなきゃ。

私も2人にしたり顔で返した。


「あ!占い!

 私こういうの好きなんですよね!」

「めぐるちゃん、誕生日教えて。

 相性見てみよ。」

「私たちは燃え盛るような恋になるらしいですよ!」

もうやってた。

さすがめぐるちゃんだ。

誕生日教えたっけな……。


そんなこんなでそれからは5人で遊んだ。

ここのゲームセンターは、昔よく小鳥と2人で遊んだ場所。

それも楽しかったけど、大人数も悪くない。

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