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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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小鳥と雛


「小鳥、タイム。1回出ていって。」

「えー、フランの写真撮らせてよ。」

「いいから。いいから。」

「お前、雛乃ちゃんに変なことすんなよ。」

「しないよ!」


雛乃の様子がおかしいから、1回小鳥を退場させる。

ちょっと事情聴取タイム。


「もう居ない……?」

フランの後ろから雛乃が出てくる。


小鳥が来てからの取り乱しっぷりは目を見張るものがあった。

私の先輩としてのかっこいい雛乃はどこかに消えてしまっていた。


「もしかして小鳥のこと好きなの?」

「いや!いやいやいや!そんなこと!

 ない!ないわ!恐れ多いもの!」


だいぶグレーな反応だった。

まあ深くは踏み込むまい。


「でもびっくりしたよ。

 小鳥と知り合いだったんだね。」

「う、うん。小鳥さんはゼミの先輩で。

 色々と恩があるのよ。」

「小鳥、世話焼きだもんね。」

「ね、ねぇ。私の服変じゃないよね?

 小鳥さんが来るならもっとちゃんとお洒落すれば良かった……」


焦る雛乃を落ち着かせて事情聴取を続行する。


「でも雛乃さんの気持ちすごく分かるな。

 私も王子様のファンクラブやってるから。」

確かにちょっと境遇は似てるかも。

まあ雛乃はファンクラブ作るほど狂気的じゃなさそうだけど。

「王子様?」

「はい!こちらの王子様です!」

めぐるちゃんが手で私を示す。

雛乃は怪訝な顔をした。


「あ、もしかして眼鏡も小鳥に合わせて?」

アルバイト中は眼鏡着けてないし、コンタクトを使ってる様子もない。

伊達メガネなのは何となく分かっていた。

「……」

雛乃の顔が赤くなった。

なんていうか、いじらしいな。この子。


まあでもフランも小鳥も撮影会を早く再開したいだろうし。

ここらへんで事情聴取は切り上げることにしよう。


「めぐるちゃん、小鳥呼んできて貰っていい?」

「はい!行ってきますね!」


「雛乃お姉様は小鳥お姉様のこと大好きなんですね」

フランはいつもの笑顔でそんなことを言った。

「お願いだから、それ小鳥さんの前で言わないでね……」

フランが私を向いたから、口元に手を当てて秘密のジェスチャー。

フランも口元に手を当てて、秘密を約束してくれた。 


ガチャリと音がして小鳥たちが戻ってきた。


撮影会が再開され、その間はみんなでフランの可愛さを褒めちぎって楽しんだ。


撮影会も終わり、のんびりとしたお喋りタイム。

今日は小鳥がフランを抱え込んだ。

羨ましい。


「まさか雛乃が居るとはな。

 フランちゃんは本当に人気だな。」

フランを撫でながら小鳥が言う。

喉をゴロゴロと鳴らすように、フランが甘える。

羨ましすぎる………。


「……いいな」

それは最初、私の口から零れたのかと思った。

でも違った。


「雛乃?どうかしたか?」

「……っ!」

雛乃が口を抑える。


「いいなって言ってましたよ。

 代わりましょうか?」

フランは立ち上がり、私の膝の上に座り直した。

なんだかすごい既視感。


「いや、そんなこと……」

必死に否定しようとする雛乃。

でもここに居る雛乃以外の全員がフランが聴き間違いなどしないことを知っていた。


フランがどうぞどうぞと小鳥の膝に座るよう促す。


「えっと……座るか?」

雛乃が少し迷う。

ちょっとの躊躇のあと。


「……はい」

すごく恥ずかしそうに小鳥の膝にちょこんと座った。


そのあと雛乃は顔を真っ赤にして喋らなくなってしまった。

でも帰り際、雛乃は最後に少しだけ喋ってくれた。


「……今日はありがと。また来てもいいかしら……?」

「うん!いつでも来て!アポ無しでもいいよ!」


雛乃とは今日でちゃんと友達になれた。

それが私には嬉しかった。


そして多分一番仲良くなったのはめぐるちゃん。

めぐるちゃんは今日は雛乃の家に泊まることになった。

 

「では行ってきますね!」

私たちに手を振ってめぐるちゃんが雛乃と一緒に駅へと歩いていく。

「いってらっしゃい。気をつけてね。」

私たちは2人に向かって手を振った。


2人が見えなくなった。


『お嬢様!お電話です!』

そのタイミングで電話が鳴った。


『言い忘れてた!

 小鳥さんが居るなら私もサッカー頑張るわ。

 今日は本当にありがとう!』


それだけ言うと電話は切れてしまった。


「小鳥?めっちゃ好かれてんじゃん。」

「……あんまりからかうなよ」

「小鳥も雛乃も可愛かったからお得な気分。」


小鳥のいつもとはちょっと違う先輩としての側面も見れた。

次はいつ来るかな……。





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