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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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先輩からのお説教


「もし?えっと……」

「はい、『しんいり』でございます。」


バックヤードにて先輩に声をかけられた。

たしかお店で一番人気の子。

年齢的には私の1つ下。

金髪おさげのドジっ娘メイドさん。

だったはずだけど、裏だと全然違って見える。


私に声をかけたのはなんでだろうか。 

新入りにしてはやるじゃない?

いやー、まだまだですよ。

そんな会話を予見した。


「このあと時間ある?」

歓迎会でもしてくれるのだろうか?

ひとまず頷く。

「そう、じゃあ反省会するから。

 着替えたら更衣室で待っていてちょうだい。」

えー……。


フラン達をお見送りしてからも仕事は続いた。

初日は特に問題なく仕事ができたと思う。

でもなんで反省会?

私の他にも今日入った子は2人いた。

なんで私だけ?


タイムカードを切り、更衣室へと向かう。

これから着替えて、あの子を待って。

早くフランのところに帰りたいのに。

ちょっと気が重い。


更衣室の扉に手をかける。


「ま、待たせたわね……」

手をかけたところで後ろから声をかけられた。

そこに居たのは息を切らした先輩だった。


「え、いや全然待ってないですよ」

そもそもまだ更衣室にすら入れていない。

それにさっきまで先輩、お店の方に居たのに。

メイド服着て全力で走ったの?


「ごめん……ちょっと待って……」

数回深呼吸をして、ようやく息が落ち着く。


「えっと大丈夫ですか……?」

「勤務時間外なのに、待たせたら悪いもの……。

 それと敬語はやめて。

 私も歳上に敬語使いたいの我慢してるの……。」


変に律儀な人だ。


「とりあえず着替えよっか」

「それもそうね……。

 あとちょっとお水飲ませて……。」

先輩はまだ息が荒い。

ちょっと休ませた方が良さそうだった。


着替えて少し場所移動。

お店から離れたファミレスへと入った。


ちなみに先輩はお店から出ると眼鏡をかけていた。

金髪はウイッグだったらしい。

今は黒髪のおさげに眼鏡。 

小鳥が見たらきっと大喜びだ。


「あなた、ちょっと危機感に欠けるわ」

開口一番に先輩はそう言った。


「お客さんとの距離が近すぎる。

 サービスのつもりかもだけど、勘違いされるかも。」

先輩の指摘は至極真っ当なものだった。


距離が近いと勘違いするお客さんが出てくる。

もしストーカーが出てきても、私は何もしてあげられない。

だからもう少し程々の距離感を掴みなさい。

要約するとそんな感じ。


「『しんいり』はたしか短期バイトよね?

 楽しむのはいいけど、危機感は持って。」

その後も延々と私の身の安全を心配された。

ちなみに『しんいり』は私のお店での名前だ。


「えっと、先輩は大丈夫なの?」

「私?私は大丈夫よ。変装してるし。

 それにお客さんの好意はちゃんと否定してるわ。」

そこはさすがの先輩だった。

私よりも遥かにちゃんとしている。


「時間を取らせて悪かったわね。」

そう言うと先輩は伝票を持ってレジへと進んだ。

お金を払おうとしたら固辞された。

ささやかだけど歓迎会も兼ねてるとのことだった。


「そういえば……」

駅までは一緒。

2人でぼんやりと歩いていると、先輩が思い出したかのように口を開いた。


「私の本名は市川いちかわ 雛乃ひなの

 気軽に名前で呼んで。」

「うん、今日はありがとね。ひなの。

 私のことは気軽に新入りって呼んで。」

「それは気軽かしら……?」

「本名があんまり好きじゃないから。

 新入りって呼んでもらえると嬉しい。」

「なら分かったわ。よろしくね、新入り。」

「うん、こちらこそよろしく。」


人の良さそうな先輩と仲良くなれた。

それだけでこのバイトを始めて正解だったと思える。


「あ、そうだ。」

「?どうしたの?」

ひなのが怪訝そうな顔で見てくる。

これは聞いとかないといけない。


「良ければ一緒にサッカーしない?」

「運動は苦手なの。

 マネージャーで良ければいいわ。」


マネージャーがまた1人増えた。

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