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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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お買い物とプレゼント


「これがショッピングモール!

 キラキラしてます!!」

フランが黒髪を振り回して辺りを見回す。

目は燦々と輝いて、ワクワクしているのが丸分かりだ。


「まずお洋服見に行こっか。

 値段は気にしないでいいからね。」

預金残高を今日ほど誇りに思ったことはない。

50万円までなら使ってもいい。

お嬢様に相応しい振る舞いをしてあげよう。

私は内心ドヤ顔をしていた。


「あ!お金は私が払うから大丈夫ですよ!

 むしろお気に召すものがあれば仰ってください!」

そう言って彼女はパンパンにお札が詰まった封筒を取り出す。


「え?なんで?」

私のドヤ顔は早くも崩壊した。


「荷物の中に高く売れるものがありました。

 昨日ちょっとだけ売ってきたんです。」

そう言ってフランは金塊をチラリと覗かせる。

「まだまだたくさんありますからね!

 お嬢様に迷惑はかけないです!」

「そっかー……」

私はなるたけ落胆を隠しながらそう答えた。


「まずは執事の服が欲しいです!」

まあでもいっか。楽しそうだし。

フランの手を引いてモールを歩く。

普段は1人で歩く場所も2人だとちょっと輝いて見えた。

スーツ売り場に行く途中もフランはなんにでも興味を示す。

可愛い服を見れば、私に着てほしいとせがむ。

高いお鍋を見れば、料理の質が上がると力説する。

美味しそうなケーキを見れば、食べてる所が見たいと言う。

楽しませるつもりだったのに、気づけば2人で笑顔を浮かべていた。



「えー!私に合うサイズないんですか!?」

1人だと20分の距離を1時間。

ようやく辿り着いた私たちを待っていたのは非情な現実だった。

(でもそりゃそうだよね。)

140センチくらいの女の子用のスーツ。

やっぱりオーダーメイドじゃないと駄目みたい。

「じゃあ今日は採寸だけお願いできますか?」

フランに代わって採寸をお願いする。

フランはちょっと文句ありそうに店員さんに連れられていった。



「執事服、まだ先になりそうです。」

ちょっと口を尖らせてフランが帰ってくる。

「しょうがないよ。

 代わりになるか分からないけど……。」

採寸中に買ったもの。

それを見てフランが目を輝かせた。

「白手袋!白手袋じゃないですか!!」

さっそく手につけてまじまじと眺める。


「執事と言ったらこれかなって。」

「はい!執事と言ったらこれです!

 嬉しいです!大事にします!」

光に当てたり近くで眺めたり。

色んな角度で見るたびに笑顔を浮かべる。

私もそれを見て笑顔になる。


喜ばせよう作戦は成功かな。


2人手をつないで満面の笑顔でお店を出る。

そのあとも結局色々なものを買ってしまった。

布団にお鍋、色々な玩具。

帰る頃には両手が塞がった。

手を繋げないのは残念だったけど、それでも私たちは幸せだった。







「待った。」

家の近くまで来て、フランが急に顔色を変えた。


「どうしたの?」

「お嬢様に強い怒りを持つ女性が待ち構えています。

 いかがなさいますか?」

緊迫した表情でフランが警戒している。

「……とりあえず様子見てみよっか。」

強い怒り?

身に覚えがない。

恐る恐る家の前まで近寄る。

「彼女です。

 お嬢様は下がっていてください。」

家の前に居た顔を見て、緊張が解れる。

身長170センチのすらっとした女性。

彼女のことは知っていた。


「大丈夫。顔はこわいけど怒ってるわけじゃないよ。」

私はフランの頭を一度撫でて、彼女の名前を呼ぶ。


「久しぶり!小鳥!急にどうしたの!」

私に呼ばれて女性がこっちを向く。

彼女の名前は安藤あんどう 小鳥ことり

高校の時の同級生だ。


つかつかと近づいてくる。

「元気だった?今日は急にどうし

「こんのクソボケがぁあああ!!」


私の言葉を遮るように綺麗な一撃。

私の意識は一瞬で刈り取られた。


なんで?


倒れる間際、私はそんなことを考えたような気がした。

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