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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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映画鑑賞会


「それでは第1回映画鑑賞会を始めます!

 司会はこの私、フランが取り仕切らせて頂きます。」

小さくパチパチと拍手の音が鳴った。

今日は私の家で映画鑑賞会を行うことになった。

メンバーはいつもの5人。

私、フラン、小鳥、みゆちゃん、めぐるちゃん。

時刻は13時。

のんびりとした土曜日だった。


「それでは皆さん、ご用意頂いたものをこちらへ。」

机の上にそれぞれのおすすめ映画を置いていく。

この中からくじ引きで一本選び、それをみんなで見るというのが今日の趣旨だ。


私はめっちゃ怖そうなホラー映画にした。

小鳥のびびる姿が見たい。

ただそれだけの理由。


「では第1回の映画は……こちら!」

くじ引きの結果が公表された。

くじに書いてあった名前は『めぐる』。

今日はめぐるちゃんチョイスの映画鑑賞と相成った。


「わ、わたしですね!

 おすすめと言うより、皆で見たい映画です……」

めぐるちゃんがおずおずと自分の持ってきた映画を指差す。


「あ、これ知ってるわ。

 楽しいよな。」

小鳥がそう言った。

「私もこれ、久しぶりに観る。

 みんなで観たら絶対に楽しいよね。

 めぐるちゃん、いいセンスしてるよ。」

めぐるちゃんの頭を撫でる。


少林寺拳法の達人たちがサッカーをする映画。

一度は落ちぶれた男たちがサッカーを通じて奮起していく。

ストーリーは王道なんだけど、絵面がトンチキで癖になる映画だ。

私はこれが好きで、中学生の頃は録画したものを何回も観ていた。


(でも昔は1人で観てたからな……。

 みんなで見れるのは嬉しい……!)

内心でテンションを上げていると、みゆちゃんもニヤニヤしていることに気付いた。


「みゆちゃんもこの映画好き?」

みゆちゃんは小さく首を振る。

「みたことない。だけどたのしそう。」

そう言ってみゆちゃんがテキパキとDVDをセットし始める。

みゆちゃんもすごくワクワクしているようだった。


「お嬢様?これはどんな映画なんですか?」

フランは訝しげにパッケージを見ている。

「見れば分かると思うよ。

 ほら、フランも座って。」

フランを私の膝に乗せる。

「カンフーしながらサッカーしたらファールになってしまいそうです。」

まだちょっと疑問は残ってそうだけど、フランもきっと気に入るはず。


コーラの準備もおっけー。

映画が始まった。


「私、仲間集めのパート好きなんだよね。

 次にどんな人が来るかワクワクしない?」

「あ、私初めてみるので!

 ネタバレは厳禁ですよ!」

「うん、大丈夫。気をつけるよ。」


そんな感じでお喋りしながらの映画鑑賞会。


「あ、あたしはこのシーンが一番好き。」

「なんかへんなシーン」

「駄目なおっさんたちから空気変わるじゃん。

 それが格好いいんだよ。」

 

少林寺拳法の達人たちがサッカーの中で覚醒するシーン。

サッカーの試合中に急に瞑想を始める男たち。

正直、すごくシュール。


「フランはどう?楽しい?」

聞いてみたけど、フランは映画に釘付けになっていた。

私の言葉も届いていないみたいだ。


そのまま映画は盛り上がっていき、最後は大団円を迎えた。


「面白かったですね!」

めぐるちゃんが目を輝かせる。


「普段はあんまりこういう映画見ないの?」

「親が厳しかったのであんまり……。

 でも今は小鳥ちゃんと2人暮らしなので!

 気にしないでどんどん見ます!」

「めぐるはゾンビとかサメ好きだもんな。」

「抑圧の反動です。」


ふふん、とめぐるちゃんはちょっと誇らしげに笑った。


「……フラン?」

フランの顔を見ると、まだぼーっとしている。


それだけ楽しかったのかな?

余韻に浸ってるみたいだし、ちょっと放っておいてあげた方がいいかな。


「次は誰の映画かな。」

「わたしのだったらいいな。」

「みゆちゃんはどんな映画にしたの?」

「らしょうもん」

「……渋いな」


そうしてみんながそれぞれの家に帰っていく。

フランは私の膝の上でぼーっとしたまま動かない。


「小鳥!鍵閉めて帰ってもらっていい?」

「はいよー」


小鳥にはうちの合鍵を渡してある。

まあこれでセキュリティは大丈夫だろう。


「フラン?大丈夫?」

「……わ!ごめんなさい!お嬢様!」


フランが慌てて私の膝から降りようとする。

私は抱え込んでそれを防ぐ。


「ん、大丈夫だよ。楽しかった?」

「すごく!すごく楽しかったです!

 ……あの、もう1回つけてもいいですか?」

「うん、大丈夫だよ。」


DVDは入ったまま。

めぐるちゃんは持ち帰るのを忘れてしまったみたい。


もう1回つけると、フランはまたテレビに釘付けになった。


まさかフランがこんなに気に入るなんて。

あとでめぐるちゃんにはお礼を言わなきゃ。

私はそんなことを思っていた。


次の朝が来るまでは。

 

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