ボードゲームで遊ぼう 後編
このゲームの肝は裏切り者が居ない可能性もあること。
裏切り者以外もそれぞれの使命があり、それを達成しながら6ラウンドの生存を目指す。
だから程々に周りを疑う振りをしていれば、消去法によって私が裏切り者とバレることはない。
5ラウンド目に全滅が私の目標。
とりあえずしばらくは協力しよう。
そう思いながらゲームを進める。
ゾンビが溢れればキャラは死ぬ。
食料が足りなくてもキャラは死ぬ。
だから私は食料の独占を目指す。
そして5ラウンド目にみんなの食料係になったキャラを殺せば私の勝利。
我ながら完璧なプラン。
「私はキャラの能力的に砦に残るね。
食料の管理は任せて。」
私は自身のキャラである『料理人』を本拠地に置く。
そしてもう1人の『主婦』は物資の調達に行かせた。
「移動の時にもゾンビに遭遇する危険があります。
ダイスを振ってドクロが出たらそのキャラは死亡です。」
渡されたのは20面ダイス。
ドクロの面は1面。
「まあ最初だし大丈夫でしょ。」
コロコロと転がるダイス。
ドクロが出た。
「……えっとご愁傷さま。」
小鳥が可愛そうな目で私を見た。
「……主婦死んだの?」
「はい、死にました。
王子様、ついてないですね……」
私のキャラが『料理人』1人だけになった。
「ねえ、料理人も移動させていい?」
「いや、料理人は本拠地以外だとカスだろ。
大人しく飯作っといてくれ。」
『料理人』の能力は本拠地で『ご飯』カードを増やすこと。
外に出てできることはなかった。
あれ?これもしかして詰み?
みんなはそれぞれの役割を持って物資を集め、ゾンビを倒している。
私は本拠地でご飯を作り続けるしかできない。
「お嬢様、こちらをどうぞ。」
フランが狙撃銃をくれた。
本拠地にいながらゾンビを撃てる優れもの。
さらに本拠地から出られなくなった。
「おー!戦うコックじゃん!かっこいいな!」
「王子様!大活躍ですね!」
「お嬢様は縁の下の力持ちです!」
みんながすごい褒めてくれる。
私の活躍により、特に問題なく5ラウンド。
「ふっ。デザートに鉛玉はいかがかな。」
もうやけくそだった。
私がゾンビと食料を解決せざるを得ないせいで、みんな物資に困ってないんだもん!
主婦!あいつが生きていれば!
そんなことを思っても、どうしようもならなかった。
5ラウンド目が終わり、6ラウンド。
私の敗北はもう決定した。
愛銃、インフィニットマグナ厶プリズムブーストは6ラウンド目も火を吹いた。
結果的には無事にゲームクリア。
私以外は完全勝利と相成った。
「裏切り者っていたんですか?」
めぐるちゃんが聞く。
「どうやら誰も気づかなかったようだね。
私こそが裏切り者だったのだよ。」
精一杯の黒幕感を出したが、一笑に付されるばかりだった。
裏切り者ってバレなかったから私の演技力は落ちてない。
そう思うことにしておく。
その後の2回戦はフランが裏切り者だった。
私は気付いたんだけど、小鳥とめぐるちゃんは信じてくれなかった。
フランの圧勝で、その日のゲームは幕を閉じた。




