小鳥の家の違和感
そういえば昨日の夜から何か違和感を感じる。
小鳥の家で朝ごはんを食べながら、私はそんなことを考えていた。
「わるいな、フランちゃん。
せっかくご飯作ってくれるって言ってくれたのに。」
私たちの目の前にはコンビニで買ったパンが並んでいた。
私はその中からスティックパンを手に取る。
フランが来てから食べる機会なかったからなー。
久しぶりに食べる私の好物。
「まさかフライパンもないとは……。
小鳥お姉様の食生活、心配しかないです……。」
フランはそう言ってパンを見つめながら唸っている。
フランが料理をしようと台所に行くと、そこには何もなかった。
調理器具もなければ食材もない。
台所を見るなりトボトボと戻ってきてしまった。
「ほんとに悪かったよ。
必要無いものを買うのが苦手で……」
珍しく小鳥が心から申し訳なさそうにしている。
小鳥にはいつも怒られてばかりだから、ちょっと面白い。
でも小鳥の部屋は本当に物が少ない。
全てが必要最小限で構成されている。
部屋も必要最小限の広さ。
服も必要最小限。
究極のミニマリストの部屋って感じ。
「……あ」
分かった。小鳥の部屋の違和感。
「ねぇ小鳥?」
私はニコニコと小鳥に声をかける。
小鳥は気色の悪いものをみる目で私を見た。
でも私はそんな目で怯まない。
何故なら今の私は微笑ましさでいっぱいだから。
「小鳥は必要なものしか買わないんだよね?」
「あ、ああ」
怪訝な顔をして頷く。
「じゃあなんでお布団は3組あったの?」
「……あ」
私の言いたいことを察したみたい。
途端に顔が赤くなった。
「私たちがお泊りに来るの待ってたんだよね?」
顔を逸らす小鳥に畳みかける。
こんな小鳥を見れるのは貴重だ。
存分にからかってやろう。
「小鳥お姉様!そんな風に思ってくれてたのですか?」
フランも目を輝かせて小鳥を見る。
無邪気に小鳥を追い詰めてくれてる。
すごく頼りになる。
「……布団はただの予備だよ」
言い訳を始めた。
でもその言い訳は愚かな言い訳だ。
小鳥らしくない。
「子ども用の布団も?」
私が聞くと小鳥は小さな声で唸る。
「ほら、恥ずかしがらないでいいよ?
私たちに来てほしかったんだよね?」
「小鳥お姉様?ちゃんと言ってくれないと駄目ですよ」
2人で攻め続けると小鳥は机に突っ伏してしまった。
髪を少しずらすと耳まで真っ赤。
初めて見る小鳥の姿だ。
「……そうだよ。」
机に突っ伏しながら、くぐもった声で小鳥は答えた。
「そっかー。小鳥も可愛いところあるじゃん。」
そう言って頭を撫でると振り払われた。
「でも次からはちゃんと言ってね。
そうじゃなきゃまた恥ずかしい目に合うよ。」
私がそう言うと、また小鳥が小さな声で唸る。
なんとなくお泊りに来なければ、布団は多分使われないままだった。
私とフランのしたいことに小鳥を巻き込むことは多い。
だからこそ小鳥のしたいことにも巻き込んで欲しかった。
「これだけ言えばもう大丈夫だよね?
フラン、甘やかしてあげて。」
「承知いたしました。」
今度はフランが小鳥の頭を撫で始める。
小鳥はフランには強く抵抗できない。
されるがままになる。
「もういい、もういいから」
5分ほどして小鳥が元に戻った。
まあでもこんな小鳥も良いかもしれない。
耳まで真っ赤なまま平静を装う小鳥を見て、もう1回くらい隠し事してくれないかなーと思う私も確かに存在していた。




