フランはなんでも知っている
今日は水曜日。
ディズニーを明日に控えても、今日は大学。
フランとこのみちゃんと一緒に授業を受けて、このみちゃんとは夕方ごろにバイバイ。
その帰り道。
「お嬢様。えへへ。今日もお疲れ様でした!
今日の講義はばっちりそうでしたね!」
フランが私の顔を見上げてそう笑う。
いつも通りの可愛い笑顔。
私の頬はついにやけてしまう。
「フランが隣にいるからね。
頑張るぞーって思えるのです。」
「えへへ。お役に立てて光栄です。」
手を少し強く握ると、フランはもっと強く握ってきた。
最寄り駅からアパートまでの30分。
まだ駅を出発して5分。
あと25分はこの幸せな時間が続く。
「フランフラン。そういえばね。
明日のディズニー、買いたいお土産あるの。」
私がそういうと、フランはふふっと口元を綻ばせた。
なにか面白いこと言ったかな。
まあいいや。
教えてあげよう。
「カチューシャ買いたいな。
みんなでお揃いしたい。」
「ふふっ。知ってました。
お嬢様、すごく欲しそうに目を輝かせてましたよ?」
ありゃ。
バレてたのか。
さすがフラン、私のことをよく見てる。
「じゃあどのカチューシャ欲しいか分かる?」
ちょっとだけ試してみる。
スマホで『ディズニー カチューシャ』で検索。
ズラっと出てくるカチューシャの一覧。
フランは迷わずダッフィーのちょっともこもこしたカチューシャを指さした。
「ふふー。これで間違いないです。」
フランは自信満々。
そして正解はもちろんそれ。
私のことでフランが知らないことはないんじゃなかろうか。
でもとりあえず……。
「大正解!ご褒美にぎゅーをあげる。」
「えへへ……。」
駅からアパートまでは人通りもほとんどない。
道の端っこでフランをぎゅっと抱きしめる。
またフランはぎゅっと抱きしめ返してくれた。
フランの体温は人より温かい。
11月になって、夕方は少し寒い。
だからフランの体温が身体に沁みる。
いつまでだってこうしてたい。
ぽけーっと抱きしめてしばらく。
フランが優しく私の身体を押した。
「ふふっ。ずっとお外に居る気ですか?
お家に帰りましょう?」
上目遣いのフラン。
確かに正論だ。
ここよりお家の方が、ゆったり抱きしめられる。
「えい。」
「きゃっ。おじょうさまー。もー。」
もがもがとするフラン。
ふふっ。やっぱりもうちょっと抱きしめたいのです。
しょうがないな、というふうにフランはされるがまま。
アパートまで20分の距離。
そこから中々動けない。
「ねぇね、フラン。
あのね、そういえばね。」
フランを抱きしめたまま、そう呼びかける。
そういえば、フランに伝えたいことがあったんだった。
フランが腕の中で私をみあげる。
えへへ……。
ちょっと照れるけどね。
「昨日ねー。
めぐるちゃんとちゅーしたんだ。
めぐるちゃんすごく上手だったよ。」
そういうと、フランは微笑みを浮かべた。
腕を伸ばそうと、私の腕の中でもがく。
私が力を緩めると、フランは私の腕をとりしゃがむように促した。
しゃがんだ私の頭を、フランがぽんぽんと撫でる。
優しい手つき。
頭のてっぺんから、身体中が暖かくなるのを感じる。
「ふふっ、お嬢様。
昨日からナデナデされてばっかりですね。」
フランはそう言って笑ってみせた。
あ、やっぱり昨日のこと知ってる。
「あ、フラン。やっぱり聞いてたでしょー?
ちゅーしてたのも聞いた?」
「はい、もちろんですよ。」
フランの優しいナデナデは止まらない。
頭を撫でながら顎も撫でる。
猫ちゃんの気分。
あ、そういえば。
すごく大事な大事なこと。
それをちゃんと聞いておかないといけないんだった。
めぐるちゃんは元から覚悟のうえだろうけど、改めてフランの思いを聞いとかないと。
首を横に振る。
するとフランは撫でるのを一度やめた。
「お嬢様、どうしましたか?
もう帰りますか?」
「ん。ちょっとだけ真面目な話していい?」
「はい!もちろんです!」
きりっとするフラン。
私はまっすぐにその目を見つめる。
「えっとね。めぐるちゃんとちゅーしたの。
というかフランだけと付き合わないの。
今さらだけど大丈夫?
嫌な気分にならない?」
フランはきょとんとした顔。
そしてすぐに私に抱きついた。
「お嬢様は私のこととーっても好きですよね。
それにみんなのことも!
みんな幸せなら問題なしです!」
フランにとっては些末な問題らしい。
さっきまでと変わらないニコニコ。
さっきまでと変わらない暖かさで私を包んでくれた。
私もぎゅーっと抱き返す。
うん、やっぱり私はフランのこと大好きだ。
そしてフランもそれを知ってくれている。
こんな幸せ、他にないだろう。
でも。
(最近、フランと居るの当たり前になりすぎてたな。)
フランへの愛情表現が足りてない気がする。
ということで、明日のディズニーはフランを最優先にしよう。
たくさんたくさんフランに楽しんでもらう!
それがディズニーの目標だ!
それから20分かけてアパートに戻り、いつものようにご飯を食べ、いつものように一緒にお風呂。
それからいつものようにちゅーして寝た。
明日はディズニー。
きっとすごく楽しい!




