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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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キスしたい症候群の終わり

ちょっと書くのが追いつかなくなってきたので、しばらく更新を3日に1度にします……。

楽しんでくださってる方には申し訳ないです……。


「……うー……ごめんよぉ……」


ベッドの上。

よれた服を直しながら、そう平謝り。

結局、我慢できずにめぐるちゃんと深いキスをしちゃった。

私はそこまで欲望に弱い人間だったのか……。

ちょっとショック……。


「私は楽しかったですよ……?

 王子様の可愛いところ見れて……。」

「励ましになってないよ……。」


こう言ってる間も、めぐるちゃんは私の頭を撫でている。

歳上として、大人としての威厳が崩れていくのを感じる。

このままじゃ駄目だ。

一回メンタルを整えよう。

深呼吸して、大きく息を吸い込む。

私はクールな女。

キスくらいじゃびくとも……。


「えっと……気持ち良かったですよ?」

「……。」


めぐるちゃんの手から逃れ、枕に顔を埋める。

そんな具体的なこと言われるとね。

私はすごく恥ずかしいのです。


ああそれと一応、めぐるちゃんの面子のために言うとね。

私たちはキスしかしてないよ。

それ以上のことは断固としてしてない。

触られたのもお腹とか頭だけ。

めぐるちゃんはそこまでえっちな子ではないのです。


まあ、つまり言いたいことはというとね。


(私ってこんなに助平だったんだ……。)


めぐるちゃんによしよしされてること。

それも勿論恥ずかしいけど、欲望に負けてキスをせがんでしまった。

それが何より恥ずかしい。


「情けない王子様でごめんよ……。」


ゆえに私は枕に顔を埋めて、謝ることしかできない。

めぐるちゃんは無邪気に遊びたかっただけなのに……。


「情けなくないですよ。可愛い可愛いです。」

「うぅ……。」


駄目だ。

余計に情けなさが加速してる気がする。

どうすれば挽回できるだろうか。

えっちで助平で情けない王子様。

そんな風に思われちゃうのはいや……。

めぐるちゃんには尊敬されてたい……。


ただ、今の私にできることなんてない。

唸り声を上げながら撫でられ続ける。

でもそんな時間も長くは続かなかった。


「ただいまー。めぐる居るー?」


小鳥が帰ってきた。

まずい。

小鳥にこんな姿……。


「あ」


体勢を立て直す間もなく、小鳥が私たちの部屋に入ってきた。

布団に突っ伏して撫でられてる私。

小鳥はそれを見て、一瞬硬直した。

そしてすぐに扉を閉めて部屋を後にした。


待って、これには深い理由が。

なんて言う前に、小鳥は戻ってきた。

ジトーっとした顔。

見て見ぬふりはできなかったようだ。

半開きの扉から、私たちをにらみつけてる。


「……で?どんな状況?」

「えへへ。」


めぐるちゃんはそう幸せそうに笑った。

それを聞いて小鳥は苦笑い。

目線が私に移る。


「私は断固として喋らないよ。」

「じゃあフランに聞いてくるわ。」

「……。」


それはずるい。

フランは多分、さっきまでの全部を聞いてる。

そして聞かれたら楽しそうに話すだろう。

つまり、もう、黙秘という選択肢はない。


ただ、黙秘以外の選択肢がないわけじゃない。

最後の抵抗くらいはできる。

 

「今日はね。めっちゃ頑張ったの。

 だから撫でてもらってたんだ。」

「めっちゃ頑張ったってなにをだよ。」

「そこは……えっと……。ランニング……。」


すごくすごくじとついた目線。

嘘を言ってることはバレてるに違いない。

ただほんとのことは言えない。

もう最後の手段だ。


「……恥ずかしいから聞かないで。」


私は正直にそう言った。

少しだけ硬直する小鳥。

その後ばーっと、顔を真っ赤にした。


「そ、そっか、そこまで……。へー……。」

「うー……。」


気まずい。

深いキスはいちおうアパートの中だと禁止のルール。

破っちゃったこともそうだし、それを教えることも恥ずかしい。


気まずい沈黙。

だけど、それはおずおずと手を挙げるめぐるちゃんが遮った。


「えっとね、小鳥ちゃん。一個だけいい……?」


めぐるちゃんが目を泳がせながら、ゆっくりと口を開く。

言いにくいことがあるかのように。

そしてそれは確かに言いにくい内容。

小鳥にだけじゃなく、私にとっても。


「小鳥ちゃんにしたのと同じことしかしてないよ……?

 えっちとかはしてない……。」


顔を真っ赤にして、めぐるちゃんはそう言った。

その言葉を飲み込むまで、一瞬。

そして飲み込むと疑問があふれた。


「めぐるちゃん、ことりにもしてたの?」

「あ」


失言。

それを自覚して、めぐるちゃんは口を手で覆った。

小鳥もその発言を聞いて、一気に私から目を逸らす。

へー。

そっか、へー。


「小鳥、深いちゅーしてたんだ。」

「いや、それは、」

「えっち。」


小鳥にはそれだけ言った。

それだけで項垂れる小鳥。

私を問い詰めようとした分はこれでチャラ。

ていうか私もめぐるちゃんとちゅーしてる訳だし、小鳥を責める権利自体ないのだ。


でもさ。

こっそり2人とちゅーしてためぐるちゃんのことはちょっとくらい責めてもいいよね。


「めぐるちゃん。こっちきて。」

「あ、あう。」

「はやく。はりー。」


ぽんぽん、とベッドの上を叩く。

私の真横。

そこに座っためぐるちゃんと肩を組む。


あわあわと口をぱくぱくさせるめぐるちゃん。

キスしてた時とは大違い。

あの時の余裕はどこへやら。

 

「めぐるちゃーん。

 小鳥ともしてたんだねー。」


めぐるちゃんが小鳥をちらりと見る。

小鳥は気まずそうに目を逸らした。

この場にめぐるちゃんを助けるものは居ない。


「責めてるわけじゃないよ。

 でもね。ちょっとびっくりしたの。

 めぐるちゃん、2人にこっそりキスしちゃうんだ。

 肉食系だねー。」


うりうりとほっぺを弄ると、めぐるちゃんはうーっと唸り声を漏らした。

でもまさかめぐるちゃんがそんなに肉食系だったとは。

顔を赤くして、あわあわとするめぐるちゃん。

小動物にしか見えないのに。


でもその衝撃で、私の中のキスしたい症候群は終わりを迎えた。

明後日はみんなでディズニーランド。

変などきどきは忘れて、全力で楽しめそうだ。


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