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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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山城さんにもこんばんは


「やーましーろさん、あーそーぼ。」

「……いーいーよ。入って入って。」


店長ちゃん家から帰ってすぐ、山城さん家へ。

あらかじめメッセージを送った甲斐あって、山城さんはすぐに扉を開けてくれた。

半年前までは顔も見たことなかったのに、最近はよく遊んでくれる。

ちょっとは仲良くなれたのかな。


さてさて。

今日の本題は山城さんからお話を聞くこと。

ということで、最初にやるべきことは……。


「今日はお酒持ってきました!

 友達のおすすめなんですけど……。

 私は飲めないのでどうぞです!」


店長ちゃんから貰ったワインを山城さんへ。

私はワインのこと全然分からないけど、山城さんは目を輝かせた。

きっといいワインなんだろう。


「ふふー。こんないいワイン飲めるなんて。

 いいおつまみだしたげる。」

「あ、それはフランが作ってくれました。」

「……ひゃー。」


タッパーを2つとアルミホイルがひとつ。

タッパーの中にはミートボールの赤ワイン煮込みとオイルサーディン。

それにアルミホイルには手作りレーズンバターサンド。

お酒を飲まない私でもワクワクするラインナップ。


「ふふふ……。えへへ……。」


山城さんは飲む前から恍惚とした表情。

今にも涎が垂れそう。

さすがにそうなる前に、お手々を合わせていただきます。

涎が垂れるより先に、山城さんはミートボールをひとつ食べた。


「……おいし。やっぱりフランちゃんすごい……。」

「でしょー。フランは自慢のパートナーなのです。」

「いいなー。」


あ、期せずしてチャンス到来。

これは聞きたいことを聞けるタイミングな気がする。


「山城さんはパートナー居ないんですか?

 すごく綺麗だし、モテそうです。」

「いないよー。ねぇ、ほんとに飲まない?

 美味しいよ……?」


まだタイミングじゃなかったようだ。

山城さんはお酒とおつまみに夢中。

ガードは固そう。

まあいいや。

まだ時間はあるし!

酔っ払うの待とう!


(んー。でも私もちょっとは飲んだ方がいいのかな。)


私だけ素面だと話しにくいかも?

ちょっとだけなら大丈夫かな……。


「じゃあほんのちょっといただ

『お嬢様!お電話です!』

「フランに怒られちゃうからやめときます。」


速攻で電話がかかってきた。

さすがフラン。

ちゃんと私のことを見てくれてる。


「ふふっ。」

「……え、なんで誇らしげなの。」


なんか変なところあるかな。

フランが私の身を案じてくれてるのだ。

こんなに嬉しいことはないだろう。


「……やっぱりすごく仲良しだね。羨ましいな。

 それじゃあ遠慮なく飲ませてもらうね。」


山城さんがちびちびと飲み始める。

いつもはボトルごとがーっといくのに。

これは酔うまで時間かかるかも?

まあでも普通にお話を楽しめばいいか。


それからはのんびりと女子会タイム。

めぐるちゃんの好きなところを語り、スティックパンがいかに美味しいかを語り、ワインの美味しさについて聞いた。

1時間半くらい?

それくらい経って、山城さんはようやく酔いが回ってきた。


「にゃー……。202ちゃんはねこすきー?

 わたしはすきー……。にゃー……。」


酔わせすぎたかも。

いや、私は飲ませてない。

ちびちび飲むのに飽きて、勝手に安酒をがーっと飲み始めたのだ。

床に転がる4本のボトル。

どう考えても飲みすぎだ。


「山城さん起きて。恋バナしたいな。」

肩を揺すってみる。

すると山城さんはにまーっと笑った。

「202ちゃんがふたり……。

 よんまるよんちゃん……。えへへ……。」

うー……。

もう駄目そう。

会話できる気がしない。


今日はもう引き返す?

それとも……用意した切り札を使う?

どちらを選ぶか迷ったときだった。


「こいばな……。なんでもきいて……。

 わたしはねー……すきなひといたの……。」

「え、え、そうなんですか!?」

「そうなのー……。」


勝手にペラペラ吐き始めた。

私の言葉は、少し時間を置いて届いていたらしい。

恋バナできる。やったぜ。


(でも油断はできない……。

 店長ちゃんじゃ無い可能性もあるし……。)


「えっと、その人のお名前は?」


固唾を飲んで次の言葉を待つ。

店長ちゃんって言え。

店長ちゃんって言え。

お願い!


「わたしがすきなのはね……さきせんぱい……。」


さき先輩。

店長ちゃんじゃない……。

え、ど、どうしよ。

大事故だ!


『お嬢様!お電話です!』


フランから電話。

とりあえず取ってみる。

どうすればいい?

教えてフラン!


「……ちょっと失礼しますね。」

『さき先輩は店長さんのお名前です。』

「わ、ありがと。」


事態がすべて解決した。

やったー!


ということで尋問続行。

あとは今、好きかどうか。

それで全部が決まる。


「えっと……その人のことは今も……?」

「だいすき……。」


ぽけーっとした顔で、山城さんはそう答えた。

これでミッションコンプリート。

だけど不思議。

両思いなのに、なんでお付き合いしなかったんだろう。


「だいすき……だけど……つきあえないの……。

 わたしじゃつりあえない……。」


山城さんはポロポロと涙を零し始めた。

お酒で情緒が不安定になってるんだろう。

やっぱり飲み過ぎなんだと思う。


身長180センチ。

金髪赤目。

ひと目を引くような凄まじい美女。

そんな山城さんが泣いているんじゃ、私には手に負えない。


ということで……。


「フラン、出番だよ。」


私はそうひとこと呟いた。

これで私の出番は終わり。

すぐに扉の開く音。


「お嬢様!よくやりました!」


ぴゃーっと駆けてくるフラン。

そしてその後ろ。

その姿を見て、山城さんは口を大きく開けた。


「さ、さきせんぱい……?」

「久しぶりね。メアリ。」


久しぶりの邂逅。

果たしてどうなるのかな。

私はワクワクとその動向を見つめた。




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