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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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めぐるちゃんの勘違い


「殺してください……」

初めてなので優しくしてください。

その言葉の意味について考えると、答えは一つだった。

朝のランニングに付き合って欲しい。

その真意について伝えるとめぐるちゃんは床に正座して一言そう言った。


「私、そんなに女の子食ってそうに見える……?」

「現役の頃はファンの子を食ってたって……」

食ってない。

何その噂。

初耳すぎてこわい。

ていうか当時の私、まだ高校1年なんだけど……。


「めぐるちゃん、もっと自分のこと大事にしてね。

 悪い大人に騙されちゃうよ。」

「でも王子様が耳元で囁くから……」

「なにか言った?」

「でも王子様が耳元で囁くからって言ってました!」

「フランちゃんやめてぇ……」


フランの前で誤魔化しは通用しない。

めぐるちゃんは顔を手で覆って恥ずかしがる。

いやまあ言われると私も悪いけど。


女の子を自宅に招き、膝の上に乗せる。

フランを使って逃げられないようにする。

その上で耳元で意味深なことを囁く。


振り返ると私が悪いか、これは。

小鳥にバレたら怒られる。

このことは秘密にしよう。


「今日のことは誰にも言っちゃ駄目だよ。」

そう言ってめぐるちゃんの口元に手を当てる。

「今日のことは私たちだけの秘密だから。」

めぐるちゃんからしても恥ずかしい勘違いのことは広めたくないだろう。

「もしバラしたら大変なことになるよ」

私が小鳥にしばかれる。

「分かった?」

めぐるちゃんの手を取り念を押す。

すると……


「やっぱり食べるんですか……?」

「食べないよ!」

めぐるちゃんの誤解は加速するばかりだった。



かくかくしかじか。


「つまり、私にも運動に参加してほしいんですね……」

ちょっと残念そうにめぐるちゃんが言う。

食べられたいの?この私に?まさかぁ。


「うん、たまにでいいから遊びにきてよ。

 朝早いから前の日は泊まっていいし。」

一泊二日でフランの美味しいご飯つき。

悪い条件ではないはずだ。


「ごめんなさい。

 私、お医者様から運動は止められてるんです……」

申し訳なさそうにめぐるちゃんは言った。

「そっか。それならしょうがないね。」

まあめぐるちゃん、見るからに身体弱そうだもんね。


「お役に立てなくてごめんなさい。

 あ、でも応援くらいは……」

「うん、応援だけでも嬉しいよ。

 運動は無理でもたまに遊びに来てくれると嬉しいな」

そう言うとめぐるちゃんは嬉しそうに笑った。


「そろそろご飯ですよ!

 運ぶの手伝ってください!」

フランが台所から呼びかける。


「うん、ありがと!今行くね!」

「はい!わかりました!」

二人でフランに返事をして立ち上がる。

夜はまだ長く、時間もまだある。


私の黒歴史を知る女の子、めぐるちゃん。

最初は敵だと思った彼女。

そんな彼女と過ごす楽しい夜。


車のキーを落として良かった。


3人で散々遊んだあと。

私はそんなことを考えながら眠りについた。


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