表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
285/300

ハロウィンパーティーの帰り道


「まさかあれから逆転されるとは……。」


ハロウィンから帰る途中の車内。

私はそうひとりごちた。

運転席にはフラン、後部座席に小鳥とふたり。

結局、私は上位10人に入れなかった。

最初にリーチになったのについてない。


「ふふっ。私は嬉しいです!

 小鳥お姉様、今度遊びに行きますね!」


そういうフランのポケットには執事喫茶の無料券。

フランは9位に入賞。

無事に景品を確保できたのだ。


『ふふー!私は2等賞ー!

 新入りー!ありがとねー!』


スマホのスピーカーからいちごうさんの声。

鈴の車に乗って帰るメンバーとはビデオ通話中。

向こうは鈴、このみちゃん、雛乃、いちごうさん、にっきさんの大所帯。

来る時もそのメンバーで来たらしい。


「いえいえ、どういたしましてだよ。

 私といちごうさん、相性いいのかもね。」

『だねー!今度お菓子奢らせてー!』


ウキウキとした声のいちごうさん。

2等賞はオーダーメイドの執事服かメイド服を買ってもらう権利。

よっぽど嬉しいのか、喋ってない時もいちごうさんの鼻歌が聞こえる。


ちなみにいちごうさんはなんかすごい勢いで2等賞を獲得した。

途中まで全然だったのに、私が当たれ〜と念を込めたら大逆転。

おかげでさっきから何回も褒められているのだ。


『あとハロウィン限定のガチャもありがとね!

 また一万円くらい浮いた!』


それとビンゴの他にもいちごうさんのソシャゲで、限定キャラを当ててあげた。

吸血鬼……というよりサキュバスみたいな格好の女の子。

すごく強いらしくて、いちごうさんは大喜びしてくれた。

夏祭りの時といい、私はいちごうさんに運を振りまく才能があるらしい。


『新入り新入りー!』

「いちごうさんいちごうさん。」

『いえーい!』

「いえー!」


テンションの上がりきったいちごうさんと2人で謎のデュエット。

すると電話の向こうから別の声。


『新入りちゃん新入りちゃん♪』

「にっきさんにっきさん♪」

『いえー!』

「いえー!」


今度はにっきさんだ。

彼女もいちごうさんと同じくらいハイテンション。

私の名前を楽しそうに呼んでくれた。


「にっきさんはお菓子当たってたもんね。

 豪運カップルだね!」

『うん、おかげさまでね〜。

 見てみて、このみちゃんに餌付け中〜。』


スマホのカメラにこのみちゃんが映る。

にっきさんにじゃがりこをあーんで食べさせてもらっていた。


『わ、は、恥ずかしいです!餌付けだなんて!』

このみちゃんがあたふたと手でカメラを隠そうとする。

『こら、運転中に暴れんなよー。

 大人しく餌付けしてもらえー。』

『う……。』

だけど鈴の声にストップ。

大人しくポリポリと齧るのを再開した。

『見てみてー!可愛い!』

『小動物みたいだよね〜。』

『照れます……。』

いちごうさんとにっきさんにすごく可愛がられてる。

ひゃっひゃっひゃっと鈴の笑い声も聞こえる。

向こうの車、すごく楽しそうだなー。

きゃっきゃしてる。


「小鳥、あーんしたげる。お菓子出して。」

「んなもん無い。」

「なんでさ。」


こっちはお菓子が手元にない。

小鳥に餌付けするのはできないみたいだ。


「お嬢様、後部座席の私の荷物の中にありますよ。」

ああフラン。

本当になんて素敵な執事なんだろう。

フランの荷物を開けると、なかには確かにおやつ。

スティックパンが入ってた。

ふむ。

「小鳥、あーんして。」

「食べさせてくれんじゃねえのかよ。」

だってスティックパンだもん。

私の大好物。私が食べたい。

「ほらよ。」

「ありあと」

もぐもぐむしゃむしゃ。

小鳥がその様子をカメラで撮ってるけど気にしない。

いちごうさんたちの微笑ましげな顔も、スティックパン食べたい欲を止めるには足りないのだ。

 

すぐに食べ終わった。

そういえば全然喋ってない子がいるな。


「そういえば雛乃は?」

『ひなちゃんなら助手席〜。』

『疲れておねむしてるよ!』


道理で全然喋んないわけだ。

寝ちゃってたのか。

まあ雛乃はハロウィンパーティーの準備も頑張ってくれてたみたいだしね。

全部終わって、燃え尽きちゃうのも仕方ない。


ふむふむと小鳥と頷く。

あとで改めて感謝しないと。


そんな時だった。


『これからえっちパーティーするからなー。

 雛乃、起きたら驚くだろうなー。』

『ねー!』『だね〜。』


……え。


えっちパーティー!??

え、え、小鳥?

私の聞き間違いじゃないよね??


横を見ると、小鳥も豆鉄砲を食らったような表情してる。

た、確かに向こうはカップル二組だけど!

私たちより進んでるけど!

な、なにそれ!?


『き、聞いてないよ!えっちパーティー!?』


向こうではこのみちゃんが大慌てしてる。

きゃんきゃんと吠える声。

このみちゃんは聞かされてなかったようだ。


『このみー。そう吠えるなよー。』

『だ、だって!わ、あご、さわんないで!ひゃっ。』

『このみちゃんは可愛いねー!』


車の中、暴れることはできないからされるがままに可愛がられてる。

顎とか頭とか。

えっちな感じでは全然なく、言葉の通りに可愛がられてる。


まあ鈴のひゃっひゃっという笑い声を聞いて確信した。

これはこのみちゃんを弄るための嘘だなー。


「鈴。そんなにいじわるしたら嫌われちゃうよ?」

『確かになー。このみ、さっきのは嘘。

 今日は普通のお泊り会だぜ。』

『え、わ、鈴ちゃんのいじわる!もうっ!』

『ごめんねー。』『このみちゃん可愛いからつい!』


いちごうさんとにっきさんもこのみちゃんに謝った。

こっちからは見えないけど、このみちゃんのほっぺを浮かばせた顔が目に浮かぶ。


『……あ、ごめん。寝ちゃってたわ……。』


そんな時、雛乃の目覚める声。

今のがやがやで起きちゃったみたいだ。


「雛乃、おはよう。」

『あ、新入りの声……。電話……?』


ウトウトとした声。

やっぱりすごく疲れてるみたいだ。

もう一回ころんと寝ちゃいそう。


「雛乃、今日は頑張ってたな。お疲れ様。」

小鳥が声をかける。

雛乃は少ししゃきっとした声で返事をする。

『あ、小鳥さん……。楽しんでもらえたなら嬉しい……。』

「ああすごく楽しかったよ。今日は

『これからみんなでえっちパーティーするんだよ!』

「えっちパーティー!??」


小鳥の声をいちごうさんが遮り、それを受けて雛乃が完全に覚醒した。

また向こうからワイワイとした声。


「小鳥、えっちパーティーに負けたね。」

「うっさい。」


脇腹をつつくと、小鳥はちょっと恥ずかしそうに顔を逸らした。

多分なんかかっこいいことを言おうとしたのだ。

えっちパーティーに負けたけど。


そんな風に騒がしい帰り道。

そして明日はアパートのハロウィンパーティー。

私たちのハロウィンはまだ半分残ってる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ