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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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王子様の誘惑


「お、王子様のお家……!」

今日のゲストはめぐるちゃん。

今度遊びにこない?って誘ったらすぐに食いついてくれた。


「ごめんね、迎えにいけなくて。

 前の車はレンタカーだから今日は無いんだ。」

「いえ!王子様のお家に来れるなんて光栄です!」


めぐるちゃんはすごくそわそわしている。


「王子様のお家、すごく整頓されてて綺麗ですね」

周りをキョロキョロしながらそんなことを言った。

「あー、それはフランのおかげだよ。」

お茶を淹れてくれているフランの方に視線を飛ばす。

するとフランは振り返って私たちに手を振ってくれた。


「フランが来る前は散らかってたんだけどね。

 フランが片付けるようになっちゃったから。

 申し訳ないから、自分で片付けるようにしたんだ」

「フランちゃん、しっかり執事なんですね。」

「うん、自慢の最高の執事だよ」


そんな話をしている間にフランがお茶を持ってくる。


「ありがとね。フランちゃん。

 あれ?フランちゃんは飲まないの?」

「私はさっき飲んだので!気にしないでください!」

フランはそういうと私の膝に座った。


「……いいな」

「今なんか言った?」

「わ!ごめんなさい!何も言ってないです!」

そう言ってめぐるちゃんは口を押さえた。


「いいなって言ってましたよ!

 変わりましょうか?」

でもフランの前で誤魔化しは通じない。

気まずい沈黙が流れた。


「えっと……座る?」

冗談のつもりで提案してみる。

まあめぐるちゃんも本気で言った訳じゃないだろうし。


「え!!いいんですか!?

 じゃあお言葉に甘えます……」

そう言うとしずしずと私に寄ってくる。

フランが立ち上がると、めぐるちゃんは私の膝の上に座った。

さらにその上からフランが座りなおす。

え?どういう状況?

自分から提案した手前、剥がしづらい。


「王子様に抱いてもらえるなんて……

 夢が叶ったみたいです……」

しかもなんか恍惚としてる。


とりあえず本題に移ろう。


「ねぇ、めぐるちゃん」

喋ろうとしたらめぐるちゃんの髪の毛が私の鼻に触れた。

近すぎる……。

しょうがないから髪の毛を少しだけずらして耳元で喋る。


「ねえ、一緒に運動しない?」

そう言うとめぐるちゃんはビクッとした。

見たところ、めぐるちゃんも大概運動音痴だ。

フラン曰くナメクジの競争。

それが私とめぐるちゃんの追いかけっこだった。


運動できない仲間を増やしたい。

1人だけ運動音痴なのはなんとなく嫌だった。

それがめぐるちゃんを呼んだ理由。


「私が……王子様と……?」

運動に誘うと、めぐるちゃんの心拍数が上がるのを感じた。

息は荒くなり、ドキドキしているのが分かる。

この子は私の同類。

運動なんて死ぬほど嫌なんだろう。


「で、でも経験ないし……」

「大丈夫。私がリードするから。」

めぐるちゃんに合わせるという大義名分ができれば、よりゆっくり走ることもできる。


「どう?一緒にしない?」

最後に私がそれだけ言うと意を決したようにめぐるちゃんが口を開く。


「はじめてなので優しくしてください……」

めぐるちゃんが私の方を向き目を閉じる。

その鼻からは鼻血が垂れていた。


「わ!鼻血!フラン!ちょっと退いて!」

「大変です!今テイッシュをお持ちします!」

バタバタしながら考える。



はじめてなので優しくしてくださいって何?


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