ドラキュラエミュレーション
さてさて。
10月の残る予定は2つ。
アパートでのハロウィンパーティーと、メイド喫茶執事喫茶合同のハロウィンパーティーの2つ。
両方に必要なものはなんでしょう?
そう、かっこいい仮装なのです。
ということで……。
「やーましーろさん!
かっこいい吸血鬼の真似させてください!」
「か、かっこいいだなんて……。そんな。」
合同ハロウィンパーティーまで1週間。
私がチョイスする仮装は吸血鬼。
ということで、金髪に赤目の麗しき自称吸血鬼である山城さんに私は師事することにしたのだ。
時刻は朝の9時。
『吸血鬼を学びたいので、見学させてください。』
そんなお手紙を投函すると、すぐに扉が開いた。
遊ぶのは夜になるかなーって思ってたから、予想だにしない収穫だ。
これで今日1日山城さんの見学ができる。
「……でも見学?
私は普通に過ごしてればいいの……?」
「はい、いつもどおりにしててください!
勝手に見稽古しますので!」
「……ふーん。まあいいよ。
好きにしてね。あ、ポテチいる?」
山城さんがばりっとおっきなポテチの袋を開けた。
山城さんはポテチ大好き。
これも見習わせてもらおう。
2人でパリパリとポテチを食べる。
こんな朝早くからポテチ。
フランが居たら、小言を言われてたかも。
「……そういえばフランちゃんは?」
「えっと、めぐるちゃんと衣装の買い出しに。
私の服だけど、私には秘密にしたいそうで。」
「……?それ、大丈夫……?」
「うん?はい!大丈夫だと思います!」
山城さんはなぜか心配そうだ。
そんな変な服を容易するわけでもなかろ……。
「山城さん。ちょっと電話しても大丈夫ですか?」
こくりと頷いたのを確認して、めぐるちゃんに電話。
まだ出発してすぐ。
電車には乗ってないだろう。
『もしもし、あ、王子様。どうかしましたか?』
「めぐるちゃん。エッチなのは着ていかないからね。
そこは大丈夫だよね……?」
『え、え、えーと……。善処しますね!』
切られてしまった。
「山城さん、どう思います?」
「……えっちなの着せられるんじゃないかな。」
「ですよね……。」
めぐるちゃんの想像する吸血鬼……。
えっちなのかな……。
とりあえずパーティーにはフランセレクトを着ていくことにしよう。
フランならかっこいいの着させてくれそうだし。
「……まあ202ちゃんなら似合うんじゃない?
あ、お酒いる?一緒に飲まない?」
「フランに怒られちゃいますよ?」
「……やっぱりやめとく。お茶淹れたげる。」
のんびーりと立ち上がり、のんびーりとお茶を淹れてくれた。
よく冷えた烏龍茶。
ポテチの油を流してくれていい感じだ。
ポテチぱりぱりタイム続行。
とびきりおっきいスーパービッグサイズのポテチ。
そう簡単には無くならない。
(あれ?でもこれって……。)
「山城さん、いつもはこれ一人で食べてます?」
「うん。」
「不健康……。」
「真似していいよ。」
「しません。」
ほんとにこの人は。
お酒にポテチ、それにおつまみの暴飲暴食。
それでなんでこんなに美人なんだろう。
不思議な。
「フランにまた怒られちゃいますよ?」
私が言うと、山城さんはふふっと得意げに笑った。
「……202ちゃん、ちょっと待っててね。」
のそのそと動いて、なにか1枚の紙をとってきた。
そしてそれを机の上に広げた。
「げ、嘘でしょ……?」
「……嘘じゃありません。本当です。」
そこには山城さんの健康診断の結果。
全て正常判定。
え、こんな食生活で?
「……フランちゃんにも見せたの。
ぐぬぬってしてたよ。」
目に浮かぶ。
こんなの見たらなにも言えなくなる。
「……なんかね。私、何しても健康なの。
1日のどっかで3時間寝れば動けるし……。
いいでしょ?」
ふふーんとドヤ顔。
そしてパリッとポテチを3枚同時に食べた。
(ていうかやっぱりそれって……。)
「山城さんってほんとに人間ですか?」
「……失敬。すごく人間だよ。」
いや、だって、ねえ。
太陽を浴びれなくて、暴飲暴食しても健康で、それに3時間睡眠でも健康。
なんかすごい生態してる……。
食べ物を食べてるってことはフランや鈴と同じ宇宙人ではないだろうけど……。
謎だ。
「……まあいいや。今日は私の真似するんでしょ。
一緒にのんびり過ごそ?
小鳥ちゃんとはどうなったの?
それとめぐるちゃんとは?
ねえ、全部教えてね。」
そこからは山城さんの尋問。
洗いざらい吐かされた。
だけどのんびりとした時間の中、山城さんのことはよく知れた気がする。
ハロウィンパーティーの吸血鬼ごっこ、きっとうまくいくだろう。
ちなみに、山城さんのお仕事についても教えてもらえた。
動画配信……Vチューバーで日銭を稼いでるとのこと。
配信部屋、なんかこう高そうな機材ばっかですごかった。
最初は限界美人OLって自称してたのに……。
山城さんの嘘つき!