お絵かき大会の本番
「では!これより!秋の芸術発表会を始めます!」
ぱちぱちと拍手の音。
まぁ言葉の通りだ。
今日は芸術発表会。
みんなが描いてきた作品たちを審査し、1位を決める。
そして1位には私からの豪華景品。
芸術の秋に相応しいイベントだ。
「ではエントリナンバー1番は誰でしょうか!」
「はい。わたし。」
改めて参加者はフラン、小鳥、みゆちゃん、めぐるちゃん、私の5人。
誰から発表するかは決めてなかったけど……。
最初に手を挙げたのはみゆちゃんだった。
みゆちゃんがトコトコと前に出る。
その手にはスケッチブック。
まだ私たちからは何が描かれているかは分からないが、最初に手を挙げたことから自信は伺える。
「みゆ先生、テーマはなんでしょうか?」
「えっとね。おさかな。」
ペラリとスケッチブックを捲る。
そこには色鉛筆で色とりどりに塗られた可愛いお魚の群れが描かれていた。
「わ、可愛いな。みゆは絵がうまいな。」
「とっても綺麗ですね!
まるで虹を見てるようです!」
「うん、すごく綺麗だね。
みゆちゃんは絵もすごく上手だね。」
口々に褒められてみゆちゃんは満足げだ。
いや、実際めちゃくちゃ上手だと思う。
水族館で撮った写真をベースにしてるのか、お魚一匹一匹細かく描かれている。
それがみゆちゃんの感性で可愛く塗られているのだ。
小学生のコンクールに出したら、優勝だって狙えるだろう。
ただ今日の私は審査員でもある。
見惚れてないで、審査審査。
「みゆちゃんに100点。
こっちにおいで。王者の椅子だよ。」
ぽんぽんと膝を叩いてみゆちゃんを呼ぶ。
すぐに私の膝の上にみゆちゃんは収まった。
よしよし。上手な絵をありがとね。
「では次の方!」
「はい!はい!私!私が発表します!」
次に元気よく手を挙げたのはフランだった。
フランは絵のためにお出掛けしてたもんね。
どんな絵なのかな。
みんなの前に立って、フランがスケッチブックを捲る。
そこに描かれていた……いや写っていたのはペンギンだった。
真っ白な背景に、ペンギンの群れ。
あまりに精緻な描写。
絵を描いてくるってルールが前提になければ、どう見ても写真にしか見えない。
「ペンギン!ペンギンさんだ!」
その絵を見て、みゆちゃんは大喜び。
私の膝のうえで小刻みに跳ねている。
フランもドヤッと満更でもなさそうだ。
ただまぁ……。
(これ、見て描いたのかな?)
すごく可愛い絵。
だけどこの真っ白な背景。
ペンギンがいる方の極点に行って描いた可能性が高い。
みんながいる手前、迂闊に踏み込めない……。
「フラン、これ……すごいな。上手だ。」
小鳥も同じことを考えたのか、曖昧に褒めた。
「フランちゃん、これ……。す、すごいね!」
「でしょー!頑張りました!」
めぐるちゃんのなにか言いたげな賛美にもえへん、とフランは楽しげに返した。
うん、すごく可愛い絵であることに違いはないしね!
審査員として採点しなきゃだね!
「ひゃくてん。こっちきてー。」
私が言う前に、みゆちゃんが採点してくれた。
フランも暫定王者。
みゆちゃんと私の間に挟まるようにして腰掛けた。
フランの可愛い絵は後で額縁に飾るとして……。
次は誰の番にしよう。
残りはめぐるちゃん、小鳥、私。
うん、決めた。
「次。小鳥。見せて。」
「うっ。」
小鳥は苦虫を噛み潰したような顔になった。
よっぽど自信が無いらしい。
「いや、やっぱりあたしの絵は……。」
「良いから良いから。見せて見せて。」
促すと、渋々といった風に小鳥は前に出た。
そして恐る恐るとスケッチブックを捲る。
そこに居たのは……。
「わ!可愛い!猫ちゃんだ!」
すっごくすっごくちっちゃい猫の絵。
自信の無さは感じるけど、一生懸命描いたのは伝わる。
そんな素敵な虎猫の絵だった。
「すごくかわいいよ。じしんもってね。」
「はい!もっと堂々として良い作品です!
小鳥お姉様の猫愛を感じます!」
「うん、小鳥ちゃん。猫好きだから……。
す、すごく頑張って描いてたんですよ!」
みんなも口々に褒めた。
小鳥は恥ずかしいのか、顔を両手で隠してしまっている。
恥ずかしがることなんてないのに。
こんな素敵な可愛い猫ちゃんの絵。
みんなの絵と一緒に飾りたいくらいだ。
「も、もういいから!採点は!?」
「100点。膝の上、座る?」
「それはいい……。」
小鳥は私の膝の上に座る栄誉を固辞した。
残念。
せっかく撫でてあげようと思ったのに。
では残るはめぐるちゃんと私。
手でお先にどうぞ、と示すとめぐるちゃんはひとつ深呼吸をして前に出た。
さて、めぐるちゃんは何を描くんだろう。
お絵描き大会の発案者であるめぐるちゃん。
きっと素敵な絵に違いない。
褒める準備はばっちりだ。
「えっと……。こちらです……。
ど、どうでしょうか……?」
……。
その絵を見て、みんなの時間が一瞬止まった。
めぐるちゃんの描いた絵。
それが私たちの予想を超えてきたから。
「ど、どうでしょうか。
わ、私なりに頑張ってみま……
「めぐるちゃん。」
「は、はい!」
「100点。グループラインのトップにしていい?」
「は、はい!!」
さっそくスマホをいじって大急ぎでグループラインの設定を変えた。
めぐるちゃんの描いた絵。
それは沖縄旅行のメンバー全員をデフォルメした集合イラストだったのだ。
可愛い。可愛い。めっちゃ可愛い。
こりゃ語彙も無くなるよ。
フランも小鳥もめぐるちゃんも雛乃も鈴もこのみちゃんも、それに私だって。
みんながとっても可愛いもん。
「小鳥、すごくニコニコだね。」
「お前だってそうだろ。ふふっ。
めっちゃ美人に描いてもらっちゃったな。」
「わたしももかわいい。ありがとね。」
「えへへ……。私はかっこよく描かれてて嬉しいです。」
当然だけど、とっても大好評だ。
きっと後でグループラインを見た鈴とこのみちゃん、それに雛乃からも絶賛されるだろう。
「よしよし。えらいね。ありがとね。」
「はい、めぐるお姉様とっても偉いです。
よしよしです。ありがとうございました。」
「照れちゃいます……。」
みゆちゃんとフランも私の膝から抜け出して、めぐるちゃんをナデナデ。
傑作に相応しいご褒美だ。
そんな光景もそう長くは続かない。
めぐるちゃんがあることを思い出したのだ。
「そ、そうだ。王子様はどんな作品を?」
うん、そう。
私の番だ。
みんなの目が私の方を向く。
ちょっと緊張する。
だけど私だって頑張ったからね!
ここは自信を持って発表します!
「えっと……私も!こんなの描きました!」
スケッチブックの中から、1枚1枚千切ってそれぞれに手渡す。
私が描いたもの。
それはめぐるちゃんほど可愛くはないと思うけど……。
「わ!わ!わ!お嬢様!こちらは!??」
「ひゃ!王子様!!こんな素敵なもの!!
いただいていいんですか!?」
私のほんの少しの卑下は、一瞬で吹き飛ばされた。
雛乃で練習して、あとは皆の写真を参考に描いた似顔絵。
めぐるちゃんのと比べるとクオリティは低いけど、皆なら喜んでくれるかな。
そんな風に期待してたけど、それどころじゃなかった。
「わたしもかわいい。ありがとね。
だいじにするね。」
「ふふっ。あたしのもいい感じだな。
お前、意外と絵上手いんだな。」
みゆちゃんと小鳥からも大好評。
照れる……。
「おねぇさんもひゃくてん。おいで。」
最後はみゆちゃんがそう言って、その膝をぽんぽんと叩いた。
「ありがとね。でもみゆちゃんの膝には座れないな。」
「そう?えんりょしないでいいよ?」
丁重に断った。
代わりにみゆちゃんを膝に載せたところで、今日のお絵描き大会は終了。
まあほとんど出来レース。
優劣なんてつけようがない。
だけど皆の全力の絵が見れた、とっても楽しいお絵描き大会だった。




