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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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幕間 このみゆの休日 後編


目の前に並ぶのは色とりどりのケーキたち。

ショートケーキにチーズケーキ。

苺のムースに特製プリン。

どれも宝石みたいに綺麗で、僕のお腹はぐーっとなった。

食べたい。早く食べたい。

選んでる時間すら勿体ない……。


ぱちんっ。


自分のほっぺを軽く叩いて正気に戻る。

今日の僕はみゆちゃんの保護者なんだから。

落ち着かなきゃ。


「このみちゃん、ケーキとってもらっていい?」

みゆちゃんはトングを片手に背伸びしていた。

奥のケーキは取れないみたい。

「うん、どれがいいの?」

「えっとね。いちごの、2つとね。

 あとね。おいものモンブランとね。

 チーズケーキも2つほしいな。」

リクエストどおりに、みゆちゃんのお皿にケーキを置いていく。

1個置くたびに、みゆちゃんの顔はぱーっと明度をあげる。

可愛いなー……。


「ありがとね、このみちゃん。だいすき。」


トレーいっぱいのケーキを溢さないように、みゆちゃんはそろそろとテーブルに戻っていく。


(それにしても大好きか……。)


ちょっとにやけちゃうな。

みゆちゃんは将来、魔性の女になるのかも?

なんてね。


食べ放題のケーキが置いてある場所とテーブルはほんの目と鼻の先。

テーブルに先についたみゆちゃんは、じっと僕がケーキを取り終わるのを待ってくれてる。

早く食べたいのに我慢して、やっぱりすごく良い子だ。

僕も早く選ぼっと!


ささっとトレーをケーキで埋め尽くしてテーブルへ。

僕が戻ると、みゆちゃんはアイスティーの入ったグラスを僕に向けて持ち上げた。


「かんぱい。」

「うん、乾杯だね!」


カチンっとグラスを合わせてから、2人でいただきます。

まずはショートケーキをひと口。

ふわふわのクリームに苺の酸味。

ショートケーキはいつ食べても美味しいよね……。


「じー……。」


そこでみゆちゃんからの視線に気づいた。

ケーキを頬張りながら、僕のお皿をじっと見ている。


「どうしたの?あ、どれか気になる?」

「うん。ポテトたくさんあるね。」


みゆちゃんは僕のポテトお皿を指さした。

あ、欲しいのかな。


「とってきてあげるね!どれくらい欲しい?」


僕がそういうと、みゆちゃんは首を横に振った。


「ううん。たくさんだから。

 ポテトたべたらおなかいっぱいになっちゃうよ?

 だいじょうぶ?」

「?」

「?えっとね。ケーキたべられなくなっちゃうよ?」


僕が首を傾げると、みゆちゃんはさらに心配そうにそう言った。

あ、そっか。

みゆちゃんはちっちゃいから、まだ身体の構造とか詳しくないもんね。


「みゆちゃん、ケーキは別腹だからね。

 ポテトもたくさん食べた方がお得だよ。」


僕がそう言うと、みゆちゃんはまた首を傾げた。

いまいち伝わってないかな?

うーん、どう伝えればいいのかな……。


「えっと……。袋が2つあるとしてね。

 こっちはケーキ用で、こっちはポテト用なの。

 それでね。空っぽのままだと勿体なくてね……」

「え、えっとね。うん。わかった。

 このみちゃんはポテトもたべようね。

 このみちゃんはかしこいね。あむっ。」


みゆちゃんはそう言って、モンブランを頬張った。

もぐもぐもぐもぐ。

多分、納得してくれたみたい?

みゆちゃんは賢いな。

すぐに分かってくれるなんて。


「みゆちゃんもポテト食べる?美味しいよ?」

「えっとね。わたしはポテトのきぶんじゃないの。

 このみちゃん、たくさんたべてね。」


そうみゆちゃんはニコリと微笑んだ。

気分じゃないならしょうがないね。

みゆちゃんの分までたくさん食べちゃお。


それにしてもみゆちゃんはすっごくお利口さんだ。

スイーツバイキングなんて、子どもは大喜びで跳ね回ってもおかしくないのに大人しく食べてる。

まだ小学1年生だったよね。

フォークの使い方もすごく上手だ。


「?」


今度はさっきと逆。

僕がみゆちゃんを見てるのに気づかれちゃった。

みゆちゃんはもぐもぐしながら首を傾げた。


「えっとね、みゆちゃんフォーク使うの上手だね。」

「わたし、レディーだから。

 ナイフもおはしもじょうずだよ。

 こんどみせてあげるね。」


ふふんっと自信満々な表情。

それはすごく楽しみだな。


気をよくしたみゆちゃんは、食べるペースをちょっとだけ上げた。

2人でこれが美味しい、こっちも美味しいと話しながら食べる。

何回かお代わりをしたところで、終わりの時間は近づいてきた。


「みゆちゃん、最後のお代わりどうする?」

「おなかいっぱい。」


みゆちゃんはポンポンとお腹を叩いた。

ちびちびとリンゴジュースを飲んで休憩中。

それなら僕だけでもお代わりしてきちゃお。


「ここで待っててね。」


みゆちゃんはぐっと親指を立てた。

さて、最後はなにを食べよっかな。


チーズケーキをふたつ。

モンブランをひとつ。

季節のケーキをみっつ。

ムースとプリンも欲しい。

あとあと……。


悩む時間も含めて3分くらい。

それくらいで最後のセットは完成した。


(……♪)


内心踊りたいくらいの気持ちで席に戻る。

みゆちゃんのリンゴジュースは全然減ってない。

よっぽどお腹いっぱいなのかも。

僕のトレーを見るなり、ぽかんと口を開けた。


「このみちゃん、ほんとうにたべられる?

 むりしちゃだめだよ。

 わたし、てつだうからね。」

「だ、大丈夫だよ。心配しないでいいからね。」


なんだかすごく心配された。

これくらい楽勝なのに……。


そのあともみゆちゃんはずっとそわそわしていた。

僕の動き全部に反応する。


「わ、やっぱりおなかいっぱいなん……ちがうの?」


「わたしもがんばるからね。だめならいってね?」


「おなかばくはつしちゃう……。」


そんな声を聞きながら、無事に完食。

ごちそうさまをすると、みゆちゃんが駆け寄ってきて僕のお腹を撫で始めた。


「おなか、だいじょうぶ?やすも?」

「えっと、全然大丈夫だよ。

 僕食べるの得意だからね。」


そう言ってもナデナデは止まらない。

ちょっと恥ずかしい。

ナデナデする手を取って、ストップさせる。

みゆちゃんは心配するように僕の顔を見あげた。


「ほんとに?」

「ほんとのほんとだよ。僕、すごいでしょ?」


ぽんぽんとお腹を優しく叩かれた。

僕がなんともないか確認してる……。


「だいじょぶそう。」


みゆちゃんはほっとひと息ついた。

そして……。


「このみちゃんすごいね!

 たくさん!たくさんたべたね!」


ぱーっと顔を明るくして、手を握ってきた。

え、え、そんなすごいことしてないよ??


「わたし、おなかいっぱい。

 このみちゃんすごいな。

 わたしももっとたべたいな。」


ぶんぶんと握ったままの手を振られる。

て、照れちゃう…。


「こんどね。おうちきてね。

 おじいちゃんがたくさんごはんつくってくれるよ。

 わたしもね。おてつだいするからね。

 えへへ。このみちゃんすごいね。

 そんけいしちゃう。」


なにはともあれ、何だかすごく尊敬されちゃった。

目がキラキラしてる。

可愛い……。


(あ、そうだ。)


「ねえみゆちゃん」

「なぁに?」

「デザートにアイス食べにいかない?」


みゆちゃんはぽかんと口を開けた。


「いかない。」


断られちゃった。

でも今日はみゆちゃんとすごく仲良くなれた。

たまにはこんな休日もいいかもね。

 


 








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