表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
272/299

おまけの帰り道


「お風呂寄りたいかも。」

「かしこまりー!きったねえもんな!」

「きったなくはない……はず……。」


帰り道。

真っ直ぐ帰る予定だったけど、ちょっと変更。

お風呂屋さん行って帰りたい。


鈴のキャンプ場、景色も広さも完璧だった。

でも当然ながら、お風呂なんてものはない。

フランに身体を拭いてもらったけど、やっぱり一度すっきりしたい。

というわけで寄り道だ。


「高速乗る前の方がいいよなー。

 フランちゃん、探すのお願いしていいー?」

「かしこまりました!お任せください!」


フランが意気揚々とスマホを取り出す。

そして鼻歌混じりに検索を始めた。


「おんせん♪せんとう♪おっふろやさーん♪

 見つかりました!その角を右です!」


フランのナビで車はスイスイ進む。

そしてあっという間に目的地。

個人経営の銭湯へとたどり着いた。


番頭のおばあちゃんにひとり500円ずつのお支払い。

とっても安い。

タオルなどのお風呂セットも合わせてこのお値段。

採算取れてるのかな?


「とうちゃーく!いちばんぶろー!ぶろろー!」


更衣室に入るなり、鈴は猛スピードで服を脱ぎ飛ばして駆け抜けた。

幸いにも他にお客さんは居ない。

散らばった服を私が片付ければ、マナー違反を咎められることもない。

めちゃくちゃむかつくけど。


「お嬢様、私が片付けます!」

「いいよいいよ。これくらい瞬殺だし。」


ぽいっと適当にまとめて、かごに入れた。

さて私も早くシャワーを浴びたい。

身体が全体的にベトベトしてる気がする。


小鳥のお腹をちょっと触って行動開始。

デコピンはされたけど、これくらいならリターンの方が大きい。


「お湯加減はいかがですか?」

「生き返り中……。」


フランに髪を洗ってもらって、ついでにヘッドマッサージ。

体力がみるみる回復していくのを感じる。

さすがフラン……。

気持ちいい……。


「お風呂気持ちぃぞー!早く来いよー!」

「ちょっと待っててー……。」

「なぁフラン、あとであたしにもしてくれない?」

「はい!もちろんです!」


とまあのんびりとした時間。

そんなこんなで私たちは大いに銭湯を楽しんだ。


のだけど……。


「お風呂ありがとうございましたー。」

「でしたー。ってあれ?」


お風呂上がり。

さっきまで受付にいた番頭のおばあちゃんが居ない。

お風呂セット、返したいのだけれど。


「番頭さん、こっちみたいです。」

フランが銭湯の外を指さした。

なんで?まだ私たちお風呂入ってたのに。

「急用とかか?」

「まあなんでもいいじゃん!

 俺はここで待ってるからさ。

 近いなら声かけてきて!」

鈴がお留守番してくれることになった。

フラン曰く、番頭さんは目と鼻の先。

ちょっと声をかけて帰ろう。


「営業中にどっか行っちゃうなんてね。

 これも地域のほがらかさなのかな。」

「かもなー。緩い雰囲気なのは良いことだな。」

「ですねー。」


2分ほど歩いて、目的地に到着。

番頭さんは誰かと話していた。


(あれ?)


遠目から見て、番頭さんはすごく困ってるように見えた。

それに相手の人。

なんかちょっと雰囲気がこわい。


「フラン、どんな話ししてるか分かる?」

「はい、もちろんです。」


フランが番頭さんと相手の男の人の会話の復唱を始めた。


「そんで慰謝料はいつ払うんだよ?

 そんなお金はないんです。ごめんなさい。

 店、畳みゃいいだろうが。

 それはできません。亡くなった夫の……

「フラン、もういいよ。大丈夫。」


そこまで聞いたらだいたい分かる。

番頭さん、なんかやばい人に絡まれてる。


「……ちょっと助けてくるか。」

「いや、待って待って。小鳥、ストップ。」


小鳥が飛び出そうとするのを慌てて抑えた。

正義感は見習いたいけど、相手はカタギじゃなさそうだもん。

小鳥を危ない目には遭わせられない。


「では私の出番ですね!

 悪い人はくしゃくしゃにしちゃいます!」

「いや!待って待って!くしゃくしゃは駄目!」


そっちも慌てて止めた。

それはいくらなんでも駄目だ。

腕輪を外して、どうする気なの?


「くしゃくしゃにしてぽいっです。

 証拠は残さないので安心してください!」


さすがに論外だ。

いくらなんでもやり過ぎだろう。


(ここは私が頑張るしかないか……。)


「2人はちょっと待ってて。

 私にいい考えがあるの。」


小鳥のパワーにも、フランの更に強いパワーにも頼らない。

ここは私の演技力の出番だ。


「私はヤクザの組長の娘……。

 そう思い込ませて、退散させるわ。」

「おい兄弟。お前が1番バカだ。やめろ。」

「バカとはなによ?私を誰だと思ってるの?」


いつの間にか鈴が戻ってきていた。

お留守番を頼んでたのに悪い子。

パパに言いつけてやる……っいた。


「ちょっと待ってろ。俺が解決してやるよ。」


鈴がスタスタと歩いていく。

番頭さん、鈴、そしてこわい男の人。

3人が話し始めた。

それをまたフランが復唱する。


「あれ?貴方さっきの……」

「お風呂から出たら居なくなってたので!

 どうかしましたか?」

「嬢ちゃんはすっこんでろよ。今は取り込み中だ。」

「慰謝料がどうとかって聞こえましたが。」

「だからてめえには関係ねえっつってんだろ!

 痛い目見たくねえなら消えろ、クソガキ。」

「今はお兄さんとは話してないです!

 静かにしててよ!もう!」

「舐めてんじゃねぇぞ!」


男が鈴の首元を掴んだ。

小鳥が飛び出そうとしたのを、フランが抑える。


「鈴お姉様なら大丈夫ですよ。」


フランはひとことそう言った。

そしてそのすぐ。

ばちんっと大きな音がした。


鈴の方を見ると、拳を振り抜いた男。

そしてその場に立ち尽くす鈴が居た。


「……あーあ。手ぇ出したな。間抜けめ。」


にやりと笑う鈴。

そしてその次の瞬間、背後から警察が現れた。


「は?」

「詐欺とか暴力はダサいからやめろよ?

 まあもう遅いけどな。

 現行犯だ。連れてって。」


鈴は警察の人にひとことそう命令した。

あっという間にかけられる手錠。

悪いお兄さんが困惑してるなか、鈴は少しだけおばあちゃんと話して私たちのもとへと帰ってきた。


「さて!逃げるぞー!」


そして私たちを通り過ぎて、車へと走っていった。

え、逃げんの?なんで?


「色々めんどい!

 あとは現場の兄ちゃんに任せるから!

 ほら!早く!早く!ハリー!」


仕方ないから追いかける。

借りてたタオルとかは……。


「それも大丈夫だから!急いで!」

「ああもう!分かった!分かったよ!」


てってっと走って車に飛び込む。

大慌てで車は発進した。

 

「聞きたいことはたくさんあるけど……。

 殴られてたよね……?大丈夫?」

「地球人風情が俺様に傷を負わせられると?

 笑止!片腹痛いわ!」


地球人差別……はさておき、大丈夫ではありそう。

車のミラーには傷一つない鈴の顔が写っていた。


「大丈夫大丈夫。さっきの警察官は知り合いだし!

 R案件ってことで適当に処理してくれるよ。」


R案件……。

あ、りん案件ってことか。


「ねぇ小鳥。もしかして日本の権力って腐ってる?」

「あたしもそう思ったところだ。」

「警察……信用できないかもですね。ふふっ。」

「みんなひどくない?

 俺、権力そんなに濫用してそう?」


鈴の顔がぷくーっと膨らんだ。

だって、ねえ?

鈴に好き勝手させてるようじゃね。


「むー。まあいいもん。番頭さんは無事!

 ハッピーエンド!ほら、忘れろ忘れろ!

 俺は可愛い鈴ちゃんだからな!」


そう言って鈴はにししと笑った。

いつもと違う、鈴のちょっとかっこいい一面。

それを知れたのも良かったのかも?


その後は特にトラブルもなく、夕方にはアパートについた。

キャンプ編はこれで終わり。

また明日からはなにをしようか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ