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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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みゅーちゃんとめーちゃんはあいぼう


こんこんっ


テントの支柱を叩く音。

時刻は9時。

もうそろそろ寝ようかな。

そう思ってウノをお片付けしていた時だった。


「ちょっと出てくるね。

 小鳥はみんなを見てて。」

「へいへい。」


ということで外に出ると意外な人物がいた。

せっかくなので、テントに引きずりこんだ。


「みんなー!山城さん来てくれたよ!」

「……えっと、これ、どういう

「めーちゃんだ!!」


困惑する山城さんにみゆちゃんが勢いをつけて飛び込んだ。

でもめーちゃん?

……あ、山城メアリだからか。


「……久しぶり。みゅーちゃん。」

「めーちゃんもおひさ。げんき?」


ぐっぐっぱんっぎゅっ。

腕と腕をぶつけ、手のひらをぶつけ、最後は握手。

謎のハンドサインで2人は出会えた喜びを表現した。

生息時間のかみ合わない2人だけど、仲は相当にいいらしい。


みゆちゃんは山城さんをテントの中に座らせ、その膝の上に座り込んだ。

脱出不可能な体勢。

山城さんは少し困った顔をしたあと、諦めたようにみゆちゃんの頭を撫で始めた。


「……えっと、みんなこんばんわ。」


まだちょっと困った顔の山城さん。

でもなんでこんな時間に外に出たんだろう?

山城さんっていつももっと深夜にしか活動しないのに。


「珍しいっすね。こんな時間に。」

小鳥が質問してくれた。助かる。

「……ご飯。備蓄切れたの。」

山城さんはひとつため息。

そしてちらりとフランを見た。

「……え、えっと怒らないで……。」

「私、そんなにこわいですか?心外です。」

フランがじとーっと山城さんを見る。

山城さんはみゆちゃんを持ち上げて視線への盾にした。


「めーちゃんいじめないでー。」

「もうっ。みゆ様を盾にするなんてずるいです。」


楽しそうに笑うみゆちゃんのほっぺをぷにぷにしながら、フランはそうぼやいた。

フランの怒気が消えたのを確認して、山城さんはほっとひと息をついた。

でもフラン、備蓄が切れてるくらいじゃ怒らないけどな。

私が知らない間にこの人はどれだけ怒られてるんだろうか。


「そういえばみゆちゃん。

 山城さんは彼女にしないの?」


なんとなく気になった。

綺麗だし歳上だし。

みゆちゃんの好みにはあってるはず。

もしかしたらもう彼女かも。

そんなことを思ったけど、その答えは意外だった。


「めーちゃんはあいぼう。」

「……うん。私たちは相棒だよ。」


……?

相棒、なんだか不思議な関係だ。

2人は目線を合わせてにやりとしている。

ちょっと聞いてみよ。


「ねぇ、なんで相棒なの?」

「いっしょにぼうけんしたの。」


ふふーんとドヤ顔。

冒険とな。

気になる……。


そんな私の気持ちとは裏腹に、山城さんの登場でみゆちゃんのテンションは上がってしまった。

片付けていたウノを楽しそうにシャッフルする様子は、もっと遊びたいのだと雄弁に語っていた。


「……みゅーちゃん、もう夜だから。」

「や、あそぼ?」

「……ちょっとだけだよ。」


すごく甘い。

山城さんは一瞬で押し切られていた。


それからみんなでウノをして。

1回だけのつもりが盛り上がって2回戦。

3回戦の途中でみゆちゃんはうとうとし始めた。

そして……。


「うの……。」


その言葉を最後に電池が切れたようにこてんと眠ってしまった。

時刻は22時。

大家さんと約束した夜ふかしの上限。

隣に座っていた山城さんが倒れるみゆちゃんをキャッチし、そのまま抱えあげた。


「……みゅーちゃん、ここで寝るの?」

「はい、今日は4人でキャンプの予定っす。」

「メアリお姉様もご一緒にどうですか??」

「……私も寝るとギチギチ。遠慮しとくね。」


みゆちゃんをふとんに寝かして、山城さんがテントから出ようとする。

だけど私はその手を取って止めた。

まだ話したいことがあるのだ。


「ねぇ山城さん。冒険の話聞きたいです。」

「私も聞きたいです!どんな冒険だったんですか??」


ウノしてる間もすごく気になってた。

みゆちゃんと山城さんの冒険。

2人でコンビ組んでどんな探検したんだろ。

ウノしてる時はゲームに熱中してたから、聞くしか今しかない。

私とフランで目を輝かせて、山城さんを見つめる。

山城さんは分かりやすく、ぐぬぬというような顔になった。


「……え、えっとね。あれは秘密の……。」

「秘密の冒険!なおさら気になります!」


秘密という言葉の持つロマンに、フランの目が更に輝く。

でも秘密の冒険……。

なんだかすごく楽しそうな響きだ。


まあでも山城さんの活動圏はごく限られている。

お昼に外に出られないのだ。

頑張っても県内が関の山だろう。


(だからこそ知りたい……。

 そんな小さな冒険でどうやって相棒に?)


みゆちゃんの彼女候補であることは誇らしいけど、相棒という言葉も多大な煌めきを放っている。

すごく気になる。

いったいどんなアドベンチャーがあったんだろう。

ただ山城さんは答えようとはしなかった。


「ぁぅ」


困ったように口をぱくぱくとさせている。

2人だけの大事な思い出なのかな。

気になるけど、これ以上は深追いしない方がいいのかな。

いつかまた機会あったら聞こっかな。

そう思った時だった。


「あきた」


ぼそっとお布団の中からみゆちゃんが呟いた。

飽きた?


「秋田?きりたんぽのとこか?」

「みゅ、みゅーちゃん!」


小鳥の反芻に、山城さんは大慌て。

秘密の冒険、まさか秋田なの??

え、どうやって。

太陽に当たれない山城さんと小学1年生のみゆちゃんで?


「そそそ、そうだ!ご飯まだだった!じゃあね!」


首をかしげる私とフランを残して、山城さんは一目散に逃げていった。

凄まじい速度。

考えごとをしていた私たちは誰もそれに反応することはできなかった。


それからしばらくして。

寝る間際になって、山城さんから一通のメールが届いた。


『逃げちゃってごめんね。

 でもやっぱり聞かないでくれたまえ。

 これは私の失敗が含まれてるゆえ極秘なのである。』


まあそんな風に。

ふたりにはふたりの冒険があるらしい。

いつか聞かせてもらえたら嬉しいな。

そんな風にして駐車場キャンプも更けていくのであった。


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