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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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可愛い壁のいる夜


夜、部屋には3人。

私、フラン、そして唯華ちゃん。

ただしちょっとだけ……いやかなり変な夜だった。


「フラン、今日も可愛いね。」

「えへへ……。お嬢様も。」

「はわわわわ。」


いちゃつく私とフラン。

それを見守る唯華ちゃん。

唯華ちゃんは本当にこれで楽しいんだろうか?


話は唯華ちゃんがお部屋に来たときに遡る。


「ようこそ我が家へ!

 今日は私をお姉ちゃんだと思ってね!

 たくさん甘やかしてあげる!」


手を広げて抱きしめウェルカムの姿勢。

すると唯華ちゃんはぱっと顔を煌めかせて……。

次の瞬間にはぶんぶんと首を横に振った。


「い、いえ。今日はいいのです。

 今日はお姉ちゃんの普通を見せて欲しいのです。」

「私の普通?」

「はい、私は居ないものとして扱ってください。

 お姉ちゃんのことをもっと知りたいのです。」


まあ、唯華ちゃんがそうしたいならいいけど。


「でも普通だと私、めっちゃフランといちゃつくよ。

 それでも大丈夫?」


私が聞くと、唯華ちゃんは首を縦に振った。

本当にいいの?

私、フランといちゃいちゃするのは遠慮しないよ。


「私のことは壁かなにかだと思ってください。

 では消えます。にんにん。」


唯華ちゃんはそう言って、忍者のように印を結んだ。

じゃあここからは唯華ちゃん居ない風に。

なんか変な感じはするけど、望みには応えよう。


「フラン、撫でたげる。お膝に座って?」

「えへへ。今日はお姉ちゃん気分ですね。

 よろしくお願いします。」


ぽんぽんと膝を叩くと、フランは私の膝に座った。

そしてそのサラサラな髪を私は優しく撫でつける。


まあいつもどおりな流れ。

撫でるか撫でられるかはその時の気分次第。

あとどこを撫でるかも。

今日は私がフランの髪を撫でたい気分だったのだ。


「かいふくー。」

「私も回復です!」


フランの顔は見えないが、きっとニコニコだろう。

唯華ちゃんのことは一旦気にしないように目を瞑る。

フランの髪の毛に感覚を集中させよう……!


「よしよし。」

「お嬢様お嬢様。」

「なぁに?フラン。」


のんびり撫でていると、フランが声をかけてきた。


「唯華お姉様、大変なことになってますよ?

 本当に気にしなくて大丈夫ですか?」

「えっ。」


目を開ける。

するとそこには膝をガクガクさせてかろうじて立っている唯華ちゃんが居た。

3分くらい頭撫でてただけだよ?

そんなになる要素あった??


「お気になさらずに。」


顔だけきりっとさせて、唯華ちゃんはそう言った。

ほ、本当に大丈夫?

私の訝しげな視線に気づいたのか、親指を立てて返してきた。

し、信じるからね。

急に倒れたりしないでね……?


「お嬢様、少しお待ちください!」


フランがさっと動いて唯華ちゃんの足元にクッションを敷いた。

これで倒れちゃっても安心だ。


「フランさん、ありがとうございます。」

「どういたしましてです!

 ではお嬢様、撫で撫でしてください!」


また膝の上にちょこんと座ってそう言った。

それならお言葉に甘えよう。


それから私が満足するまでフランを撫でた。

終わる頃には、唯華ちゃんはクッションの上にぐてっと倒れ込んでいた。


「大丈夫?立てる?」

「立てないのでそっとしてください。」


またきりっとした顔。

言ってることは情けない。


(でもこれ以上見せて大丈夫なのかな?)


なんていうか普段はここからいちゃつきのレベル上がるから。

一緒にお風呂行って、抱きしめて。

そしておやすみのちゅー。

曲がりなりにも私を尊敬しているという可愛い子にそんな光景見せていいんだろうか。


「お嬢様、お風呂行きましょう?」


私の心配を他所に、フランが袖を引いた。

その途端、がたんっという音が響いた。


「おふ、お風呂。

 お二人はいつもご一緒されてるのですか??」

「はい!もちろんです!

 私がお嬢様を洗って差し上げてます!」


ちょっとの沈黙。

そしてパタリと唯華ちゃんは意識を失った。


「え、えっ、大丈夫??」


フランに聞くと、大丈夫だと首を縦に振った。


「えっと……とりあえずめぐるちゃん呼んで……。

 あとこの間にお風呂入っちゃおっか。」

「かしこまりました。」


電話を掛けると、すぐにめぐるちゃんがやってきた。

そしてひとつため息をついて、唯華ちゃんを寝かしつけた。


すーすーと寝息を立てる唯華ちゃん。

その寝顔はとっても穏やかで。

とってもとっても幸せそうに見えた。


(あ、そうだ。)

良いこと思いついちゃった。


見てるだけであんなに幸せそうだったんだから、実際にしてあげたらもっと嬉しいよね。

へへへ。

いい思い出作ってあげよ!


ということでお風呂から上がったら唯華ちゃんをとびっきり甘やかします。

とっても楽しみ。



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