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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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気まずい尋問


「ながいちゅーいいな。おいしかった?」

「……。」


きらきらとした目のみゆちゃんとその横に倒れ込んだ唯華ちゃん。

私とめぐるちゃんはその前で正座。

つまるところ、押し倒されてキスされているところを見られてしまったのだ。


めぐるちゃんが帰ってきた時、唯華ちゃんも一緒だったらしい。

そして家の前でめぐるちゃんが着替えて外に出てくるのを待っていた。

そこにみゆちゃんが合流。

中々帰ってこないめぐるちゃん。

一緒に呼びに行こう?と唯華ちゃんを引っ張って部屋に入ってきたみゆちゃん。

その目線の先にはキスしている私たち。

唯華ちゃんは失神。

そして今に至る。


「えっとね、みゆちゃん。」

「いいな、いいな。」


言い訳の言葉はきらきらな目に遮られた。

まずい。

さっきのキスはみゆちゃんの教育に悪いキス。

どうにか誤魔化さないと……。


「ねえねえ。おねえさん?

 わたしもしたいな。ねえねえ。」


無邪気に私の身体を揺さぶるみゆちゃん。

揺さぶられると頭がうまく働かない。

いや、みゆちゃんとしたくないわけじゃないんだよ。

でもこう、さすがにさっきのキスはまだ早いっていうか。


「み、みゆちゃんごめんね。

 わ、わたし唯華と用事あるから。

 起きて、唯華。」

「めぐるちゃん。それはずるいよ。」


唯華ちゃんを起こして逃げようとしためぐるちゃんの腕を掴んで止めた。

このタイミングで逃げようとするとは。

なんてずるい子だ。


「ようじあるの?

 じゃあめぐるちゃん、さきにちゅーしよ?」

「えっ。」


みゆちゃんの矛先が変わった。

ぎゅーっとめぐるちゃんに抱きついて、逃げられないように固定。

そしてニコニコとめぐるちゃんを上目遣いに見上げた。


「えっと、ちょっとだけならね。」

めぐるちゃんは目を泳がせながらそう言った。

だけどみゆちゃんは首を横に振った。

「わたしもながいのがいいな。」

じーっと真っ直ぐに見つめるみゆちゃん。

もう年貢の納め時かもしれない。

ただめぐるちゃんの抵抗は続く。 


「え、えっとね。

 長いちゅーは大人のちゅーだからね。

 みゆちゃんにはまだ早いよ?」

「だいじょうぶ。わたし、もうおとな。

 めぐるちゃんよりすききらいないよ?」


めぐるちゃんはご飯の好き嫌い多いもんね。

確かにみゆちゃんの方が大人かも。


「えっと……。

 長いちゅーは……コツ!コツがいるの!」

「みておぼえたよ?」


うんうん。

みゆちゃんはいつも覚えるの早いもんね。

この言い訳も通用しないのか……。


「しよ?」


口をぱくぱくとさせるめぐるちゃんの首にみゆちゃんが両手を回す。

チェスでいうところのチェックメイト。

もう逃げ場はない。


「うーん……。」


そんな時、唯華ちゃんが目覚めた。

ゆっくりと目を開けて、キョロキョロと周りを見渡す。

あ、やばい。

さすがにみゆちゃんとめぐるちゃんの濃厚なキスシーンは見せられない。


「?皆さん、なにしてるんですか?」


唯華ちゃんが首をかしげる。

横を見ると、みゆちゃんは今の一瞬のうちにめぐるちゃんの膝の上に座り直していた。


「私、どうして眠っていたのでしょうか?

 なにも覚えていません……。」

「ゆいかちゃんはなにもみてないよ。

 つかれてたのかも。こてんとねちゃった。」


みゆちゃんはしれっとそう言った。

立ち上がって唯華ちゃんをよしよしと撫でる。

そして流れるように私の膝の上に座り直した。


「……ゆいかちゃんにはおとなのちゅーはやいから。」


こそっとそう呟いた。

唯華ちゃんは大人判定ではないらしい。

あれ?

そういえば。


「みゆちゃん、長いちゅーはしたことない?」

「うん。」


そっか、初めてかー。

ふむふむ。

小鳥、普通のちゅーであんなに呆然としてたのかー。

ディープなのされたのかと思ってたのに。

全く初心だなー。


(まあでもおかげで……解決の糸口は掴めた!)


「ねえみゆちゃん。」

「なぁに?」


みゆちゃんが私を見上げる。

私はその頭に手を置いてゆっくりと動かす。

みゆちゃんは口元を緩めてえへへと笑った。


「思ったんだけどね。

 おとなのちゅーは小鳥にも早いかなって。」

「たしかに。」


私の言葉にみゆちゃんは頷いた。

さすが聡い子だ。


「私たちももうしないから、成長するまで待とう?

 小鳥が成長したなって思ったら、みゆちゃんからしてあげて。」


もう一度みゆちゃんは頷いた。

くしゃくしゃと頭を撫でると、体重を私に預けてきた。


「がんばってせいちょうさせる。

 そのときはおねえさんもしようね。」

「応援してるね。」


ぎゅっと抱きしめると、とても嬉しそうにまたえへへと笑った。


「?よく分からないですが……解決して良かったです。」


唯華ちゃんはなにも分からないままに、ぱちぱちと拍手を送ってくれた。

でもさっきは申し訳ないことをしちゃったな。

急にお姉ちゃんとのキスシーンを見せちゃったわけだし。

本人は忘れてるみたいだけど、何か罪滅ぼしをしてあげたいな。


「唯華ちゃん。」

「なんでしょう、お姉ちゃん。」

「……。」


そうだった。

この子は私のことをお姉ちゃんと呼ぶんだった。

ああ……。

お姉ちゃん呼び嬉しい……。


「おねえさん、ゆいかちゃんこまってる。」

「ああごめんね。

 いや、なんでもお願い聞いてあげようかなって。

 ほら、せっかく来てくれたわけだしね。」

「な、なんでも!?!?」


なぜかめぐるちゃんが反応した。


「……え。」


肝心の唯華ちゃんはこの反応。

あんまり嬉しくなかったかな?


「唯華!ちょっと相談しよ!」

「……だめです。これは私の権利です。

 いくらお姉ちゃんでも渡しません。」


と思ったけど、喜んでくれてはいるみたいだ。

良かった良かった。


それからちょっと2人の姉妹喧嘩を見守って。


「ではよろしくお願いします。」


唯華ちゃんが私に頭を下げた。

その望みは今日一日私とフランのお部屋にお泊まりすること。


楽しい夜になりそうだ。

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