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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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めぐるちゃんとキスの解禁


ふっふっふ。

今日からキス解禁。

そして小鳥は今日はアルバイトで夜まで帰ってこない。

つまりめぐるちゃんと最初にキスできるのは私だ。

やっぱり最初はほっぺかな。

あぁ、でもすごく照れる……。

喜んでくれたらいいな。


と思っていたのが午後15時。

そしてめぐるちゃんが帰宅した午後17時半。


「ただいまー。」

「めぐるちゃんおかえりー。」

「あ!王子様!ただいまです!」


ニコニコとしためぐるちゃん。

私がめぐるちゃんの部屋に上がり込むのもそう珍しいことじゃない。

だからここまではいつもどおり。


「王子様、なんだか楽しそうですね?

 良いことでもありましたか?」


制服をハンガーに掛けながら、そう尋ねてきた。

えへへ……実はね……。


「なんと今日から!

 恋人らしいこと解禁となりました!」


ぱちぱちぱちと自分で拍手。

さて肝心のめぐるちゃんの反応はというと。


「……。」


私の方を見つめてぽけーっとしてる。

あれ?

思ってた反応と違うな。

もっとこうアワアワと喜んでくれると思ってた。


「おーい。めぐるちゃん。」

「……。」


完全にフリーズしてる。

再起動はどうすればいいかな。


(……もうしちゃおっかな。)


本当はもっと溜めようかなって思ってたけど……。

再起動するにはやっぱりこれだよね。


「起きて。めぐるちゃん。」


そっとめぐるちゃんの首に腕を回す。

そして優しくその唇に触れた。


「えへへ……。めぐるちゃん、好きだよ。」


それだけ私は言った。

さて!

今日の目標は達成した!

一旦退却!

これ以上はちょっと恥ずかしいからね!


踵を返して部屋から出ようとした時だった。


ぱたんっ。

そんな音がして振り返ると、めぐるちゃんはベッドに倒れ込んでいた。


「め、めぐるちゃん!?」


慌てて駆け寄るとすやすやと寝息を立てていた。

多分、大丈夫だよね?

ほんとにやばかったらフランが駆け込んでくるはずだし……。


(そんなに嬉しかったのかな……。

 だったら嬉しいなー……。)


私もめぐるちゃんの隣に腰掛ける。

いつ起きるかな。

頭を撫でながら、起きた時のことを考える。

めぐるちゃんからもキスしてもらいたいな。

夜ご飯の前には起きてくれたらいいな。


よしよし。

のんびり眠ってね。


30分くらいして、ごそりと動く音がした。

あ、起きたのかな。

そう思った時、私の肩に手を置かれた。

そして。


あれ、と思う間もなく視界がぐらりと傾いた。


目の前にはめぐるちゃんの顔。

どうやら私は押し倒されているらしい。


「えと……か、解禁したんですよね……?」

「う、うん。そ、そうだね。」


私の頭はうまく回ってない。

あれ?

この答えで良かったのかな。


押し倒されたままの状態で、めぐるちゃんの唇が触れた。

目を開けられない。


(いい匂いする……。)


唇が触れる多幸感の中、私はぼんやりとそんなことを考えていた。



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