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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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静かな夜の、新たな日課


雛乃とメイドさんたちと別れ、3人での帰り道。

夜ごはんは雛乃のお家で食べたから、小鳥とも別れふたりっきり。

お風呂に入って、布団を敷いて。

あとはもう寝るだけ。


「お嬢様。ご一緒しますね。」


布団に潜り込むフラン。

私も布団に入ってフランを抱きしめる。

ここまではいつもどおり。

でもいつもどおりじゃないことがひとつ。


「フラン、ちょっと目をつぶって。」


私がそう言うとフランは目を瞑った。

口元をほんの少しだけあげてフランは笑う。

今日から始まる日課。

それを今からするのだ。


「えへへ……。照れちゃいますね……。」

「うん、私も……。」


目を閉じたフランの首に腕を回す。

ふー……。

観覧車の時ってどんな風にしたっけ?

すっごく緊張して頭が回らない。


「……お嬢様?」


あまりに私が動かないから、フランは心配して目を開けた。


「ごめん、緊張しちゃって。

 ちょっとだけ深呼吸させて……。」

「ふふっ。いくらでもお待ちします。」


もう一度フランが目を瞑る。

目を閉じたその顔は天使のように可憐で。

何度も何度も眺めてきたのに、思わず息を飲んでしまう。


そっとフランの頬に指を触れさせる。

するとフランは唇を少しだけ突き出した。

私はそこにゆっくりと顔を近づけた。


一瞬。

だけど確かにフランの温かさが私の身体に伝播した。


「えへへ……。」

「ふふっ。」


お互いに目を開けて顔を見合う。

とってもにやにやとした笑顔が目に映った。


「おやすみのちゅー、成功ですね。

 お嬢様、偉い偉いです。」

「褒めないで。すごく照れちゃう。」

「お顔真っ赤なのも可愛い可愛いです。」


フランがニコニコと私を撫でる。

私は顔を抑えて恥ずかしがることしかできなかった。


「うー……。」

「可愛い可愛い。」


寝る時間も近い。

だけどドキドキして眠れない。


照れを隠すように、フランをぎゅっと抱きしめる。

胸の中でフランがモゴモゴしてる。

少しすると、フランはモゴモゴをやめて強く私を抱きしめ返した。


「フラン、大好きだよ。」


「大好き。愛してる。」


私の口からは勝手に言葉が漏れた。

おやすみのチューは一日一回までの約束。

そうしないとずっとしてしまいそうだから。


キスで発散できない想いは口から溢れ続けた。


「お嬢様。」

「なに?フラン。大好きだよ。」

「えへへ……。私もって言いたかっただけです。」

「嬉しい。」


フランの口からも愛の言葉。

頭がとってもふわふわする。


「大好き。大好き。」

「お嬢様。大好きですよ。」


蕩けた頭じゃ気の効いた言葉なんて思いつかなくて。

ただ私たちは同じ言葉を繰り返し続ける。

だけどそれはとっても心地よくて。

寝ることも忘れて私たちはうわ言のように愛を囁き続けた。


それでもいつの間にか限界は訪れて。

無意識に瞼が落ちてくる。


意識を失う最後の瞬間。

温かいものが唇に触れた気がした。


おやすみのキスは一日一回。

このルールはいつまで守れるのかな。

考えたって、そんなことは分からなかった。


ただ幸せを感じながら、私は微睡みに身を任せた。

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