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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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いつもどおりの朝の終わり


フランの声で目が覚める。

そんないつも通りの朝。

もう少し寝たいと渋って、起こされて、ラジオ体操。

そう、いつも通りだった。


「では今日からはランニングです!」

フランがそんなことを言うまでは。


「え……?ラジオ体操したのに?」

咄嗟に聞いてしまう。

ランニングの代わりに始まったラジオ体操。

ラジオ体操をしたならランニングはしないのが道理ではないだろうか。

そんなことを力説した。

「たしかにな〜」

大家さんもコクコクと頷く。

私の演説は成功したかに思えた。


「バカ、みっともねえぞ」

いつの間にか来ていた小鳥に頭を叩かれた。

「で、でも!」

「ぁ゙あ?」

諦めろとばかりに拳をちらつかせる。

思想は暴力の前には無力だった。



「うぅっ……なんでこんなことに……」

出走者は4人。

フラン、私、小鳥、みゆちゃん。

全員ジャージ姿で横並びになる。

「ペースは合わせてやるから安心しろ」

「わたしもフランちゃんにあわせる」

「私もお嬢様に合わますので気負わないでください」

フランと小鳥が私のペースに、みゆちゃんがフランのペースに。

つまり私がペースメーカーになった。


「いってらっしゃ~い」


大家さんの掛け声でスタートを切る。

とりあえず三十分走ってみましょうとフランは言った。

現役の頃の私なら楽勝だっただろう。

でも今はどうかな!





「おねえさん、だいじょうぶ?」

ゴール地点であるアパートの前。

小鳥とみゆちゃんが出迎えてくれた。


「ぜぇ……ぜぇ……むり……」

私のペースがあまりに遅いから、二人は先行して走っていった。

私以外の3人はすごくケロッとしている。

私だけがこの場で死にかけていた。


「ていうかなんで急にランニング?」

小鳥がフランに聞く。

それは私も気になっていた。

ラジオ体操で様子見しようと決まったのはつい最近。

なんで方針が変わったんだろう。


「この前、お嬢様が女の子に追いかけられたんです。

 お嬢様の足が遅すぎて心配になりました。

 これでは悪漢に追いかけられたら逃げられません。」

「あー……なるほど。」


小鳥は納得したけど、私は納得していない。

悪漢に追いかけられることなんてないよ。

それにそんなに遅くないよ。

そんなことを言おうと思った。


「あ……な……おそ……よ」

どうにか搾りだせた言葉はそれだけだった。


「うん、これは必要だな。

 またこいつが渋ったら呼んでくれ。」

「はい!小鳥お姉様は頼りになります!」


そうして日々のスケジュールにランニングが追加された。


「おねえさん、マッサージしよっか?」

みゆちゃんの優しさが心に沁みる………

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