4人のお泊り会
ピンポーン、とチャイムが鳴った。
準備を終え、一度は落ち着いた雛乃。
ただしそのチャイムの音が再び雛乃に火をつけた。
瞳に炎を灯し、気合いは充分。
勇気を身体に込めて勢いよく立ち上がり……。
そして足を滑らして転んだ。
「雛乃!?!?」
「わ、私のことは良いから!玄関に!」
涙声の雛乃に急かされて、代わりに玄関へと。
もう足も大丈夫。
なんの問題もなく玄関へと着いた。
ドアを開くと、そわそわとする小鳥が居た。
「ってあれ?雛乃は?」
「転んでフランに慰めてもらってる。
ほれほれ、お入りなさいな。」
手を引いて雛乃ハウスへとご招待。
あ、でもそうだ。
「小鳥、ほれほれ。
この子たちどう思う?」
玄関に飾られたひよこの人形で小鳥にパンチ。
小鳥は軽く受け止めた。
「雛乃、いつも可愛いの置いてるよな。
いつも癒されてるよ。」
ひよこを受け取って、小鳥はそう優しく言った。
雛乃チョイスのお人形たちの良さが分かるとは。
さすが小鳥だ。
お部屋に入ると、雛乃はフランに頭を撫でられていた。
痛いの痛いの飛んでいけ。
フランはしきりにそう唱えている。
「雛乃、大丈夫か?」
「え、えぇ。お恥ずかしいところを……。」
顔を赤くする雛乃に、小鳥はゆっくりと近づく。
そしてフランと一緒に頭を撫で始めた。
「えっと……痛いの痛いのとんでけー。」
「……。」
小鳥のそれに、雛乃は口を呆然と開けた。
なにが起こったのか分かっていないようだ。
「……忘れてくれ。」
ほんのちょっとだけ間を置いて、小鳥は顔を赤くしてそう言った。
「忘れないよ。」
「忘れないです!」
私とフランが素直にそう言うと、小鳥は睨んできた。
でもしょうがないじゃん。
中々かっこよかったよ。
「雛乃は忘れてくれるよな……?」
「えっと……忘れられないかもです……。」
雛乃も目を逸らした。
小鳥はひとつ小さくため息をついて、雛乃の頭をもう一度撫でた。
忘れさせることは諦めたらしい。
「で、でも!もう大丈夫です!
ほら、みんなで遊びましょう!
せ、せっかくのお泊まり会だもの!」
雛乃はそう言って元気よく立ち上がった。
転ぶのに慣れてる分、立ち直りも早い。
ここは雛乃の言葉に甘えよう。
時間が勿体ないもんね。
ここからは楽しく遊ぶ時間だ!
「でもなにしよっか?
雛乃、なにか玩具とかゲームとかある?」
「Swichならあるわ。」
「よし、じゃあゲームしよう!
小鳥!リクエストある??」
「まずなんのゲームがあんのか教えてくれ……。」
「えっと、マリオとスマブラと……。」
「それならマリオ気分かな。」
ということでマリオをすることになった。
でもただマリオをやるんじゃつまらないよね!
「よし、デスマリオをやろう。」
私がそう言うとワイワイとした空気が鎮まった。
「お嬢様。デスマリオってなんですか?
聞いたことないです。」
「ふふ、いい質問だねフラン。
デスマリオとは……闇のゲームだよ。」
私の言葉にみんなが息を飲んだ。
いやまあそれは嘘。
小鳥と雛乃は呆れてる。
だけど構うものか。
ルール説明。
「順番にマリオプレイして、ミスした人が罰ゲーム。」
「お前どうせ負けるのに罰ゲーム好きだな。ドMか?」
「うっさい。」
小鳥が煽ってきた。
私を馬鹿にしてる。
いい度胸すぎるな。
どんな罰ゲームをさせてやろうか。
「そうだ。小鳥は負けたら語尾に『にゃん♡』ね。
ただのにゃんじゃないよ。あざといにゃんね。」
「てめえも負けたらそれだからな。
吐いたツバ飲み込むなよ?」
なんだかんだ小鳥はノリノリだ。
あとは雛乃とフランだけど……。
「私は大丈夫ですよ。負けないですから!」
「え、えぇ。どうせ負けるのは新入りだし……。」
フランはともかく雛乃まで私を馬鹿にしてる。
目にもの見せてやる。
ふたりとも、語尾ににゃんの刑だ。
「じゃあ順番決めよっか。
じゃんけん、ぽん。」
一番最初は私。
それから小鳥、フラン、雛乃の順。
これはついてる。
一番最初は一番簡単だ。
つまり一番ノーリスク!
ささっとこなして、2番の小鳥に繋いでやるぜ!
以下略。
「どうしてこんなことに……だにゃん。」
屈辱をこらえて言葉が震える。
フランはそれをニコニコと見守っている。
そして私もにやにやと見守る。
え、私が負けたと思った?
「雛乃、にゃんじゃないよ。にゃん♡。
ちゃんとあざとくやって。」
「絶対に許さない……にゃん♡」
手をぐーにして猫のポーズ。
あら可愛い。
「雛乃お姉様!すごく可愛いです!
動画!動画撮ってもいいですか??」
「フランちゃん、お願い……だにゃん♡
それはやめて……だにゃん♡」
いやまあ雛乃は完全に自滅したから。
私にミスさせようと、わざわざ弱いマリオに変えてから順番変えようとしたらノコノコに当たって死んだ。
自業自得だ。
「ふふっ。雛乃、すごく可愛いぞ。」
「こ、小鳥さんまで……。」
「雛乃お姉様、にゃん忘れてますよ。」
「もう!にゃん!」
照れながら怒る。
そんな器用なことを雛乃はこなしてみせた。
1周目は雛乃の負け。
まだ寝るような時間じゃないし……。
「よし、2周目しよう。」
私の言葉に雛乃以外が頷いた。
雛乃はさっきの敗北がよっぽど応えているらしい。
「雛乃ー。どうしたー?
へいへーい。びびってんのかー?」
「びびってなんかないわ!」
「にゃん」
「びびってなんかないにゃん……!」
語尾を指摘すると手を猫の形にして言い直した。
ただし、突き刺すように私を睨んで。
「絶対に仕返ししてやるにゃん……。」
「やれるもんならやってみな。」
それからデスマリオは計5周に渡って行われた。
積み重なる罰ゲーム。
誰がどうなったかは次回のお楽しみということで。




