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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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緊急避難


観覧車でキスをしたあと。

私はそれはもう大変なことになってしまった。


(立てない……。)


緊張から一気に解放されて、足に力が入らない。

立とうとすると足が震える。

きっと負けたボクシング選手はこんな感じだ。

ボクシング見たことないけど。


水族館から一番近いお家。

なおかつ多少は迷惑かけても良いお家。


「……それで私の家に来たのね。

 ちょっともう一回言ってもらえる?

 なんでそんなふらふらなのか……。」

「フランとちゅーしたら幸せすぎた。」


雛乃は大きなため息をついた。


「お嬢様が回復するまで居てもいいですか?」

フランが雛乃に尋ねると、それには首を縦に振ってくれた。

やっぱり雛乃は頼りになる。

「でもフランちゃん、そんなにくっつかないの。

 それじゃいつまでも回復しないわ。」

雛乃がフランを手招きした。

フランが名残惜しそうに私から離れる。

確かにずっとくっついてたらいつまでも力が抜けてしまう。

雛乃は賢いな。


「えー。今日はいやです。」


だけどフランは首を横に振った。

離れるどころかさらにぎゅっと私を抱きしめる。

私の力は抜けていく一方だ。


「雛乃、たすけてー。」

「助けを求める顔をしてないわ。すごいニヤけ顔。」


また雛乃はひとつため息をついて立ち上がった。

そして冷蔵庫からお茶を一本持ってきて、近くに座り込んだ。


「はあ……。でも羨ましいわ。」


じとーっとした目線。

まあでも急に家に来て惚気たらそうもなる。

ここは甘んじてその目線も受け入れよう。


「雛乃お姉様もお嬢様とキスしたいですか?

 雛乃お姉様ならいいですよ?」


フランが変なことを言い出した。

こほ、こほ、と雛乃がむせる。

でもそういえば私は雛乃の彼女でもあった。

フランの言うことも理には適ってる。


「雛乃がしたいなら……いいよ。優しくしてね。」


雛乃がつかつかと近寄ってくる。

ひゃっキスされちゃう!


ぺちん、と優しくしっぺをされた。

いやまあ知ってたけどね。


「それで?今日は泊まるのかしら?

 泊まりたいなら構わないわ。」

「いや、回復したら帰るよ。」

「……。」


すっごく不満そうな顔。

泊まってほしいのかな。


「フラン、もう今日はお言葉に甘えない?。」


私がフランに向けて言うと、フランは少し考えこんだ。


「うーん、ですが小鳥お姉様のご飯を用意しないと。」

「いいよ、小鳥の餌は気にしないで。

 ぴよぴよ勝手に食べるって。」


ぺしん。

さっきよりも強くしっぺをされた。


「小鳥さんを馬鹿にしないで。」

「お嬢様。今のはお嬢様が悪いです。」

2人から睨まれてしまった。

「じょ、冗談だよ。ごめんね、小鳥。」

すぐに謝るとフランが頭を撫でて許してくれた。

危ない危ない。

「でもそっか……。

 小鳥さんのご飯ならしょうがないわ……。」

雛乃が少ししょんぼりとした表情を浮かべた。

「はい。目を離すとすぐラーメン食べちゃいますから。

 今日はちゃんとしたご飯を食べさせたいのです。」

フランも真剣な表情。

ていうか小鳥、そんな風に言われてる方がショック受けると思うな……。

完全に幼い子の扱いされてる……。


でもこれは小鳥が悪い。

隠れてラーメン食べてるからこうなるのだ。


だけどせっかくだし雛乃のお家にお泊まりしたいな。

よし、ここはあの作戦を使おう。


「ちょっとだけ電話してもいい?」

「?急にどうしたの?別にいいけど……。」


雛乃からも許可をもらえた。

じゃあもう私の作戦は完璧だ。


ぴっぽっぱっと。

連絡先の一番上。


「もしもし。あ、小鳥。今ちょっと時間いい?」

『只今電話に出ることができません。

 留守番電話サービスに接続します。』

「あー。うん。フランとのデートすごく楽しい。

 ところで今は雛乃のお家なんだけどさ。」

『ピーという発信音のあとにご要件をお伝えください。

 ピー。』

「これからお泊まり会するんだけど来ない?

 あ、うん。良かった!じゃあまたあとでね!」


電話を切った。

小鳥は今の時間アルバイト中だし、電話に出れないことは知っていた。

だから会話してる風。

さて、雛乃は信じてくれたかな?


「こ、小鳥さん来られるの!??

 え、え、メイクしなきゃ!

 あと……ぬ、ぬいぐるみ!

 お気に入りのにしないと!!」


一気に慌ただしくなった。

ちゃんと信じてくれたようだ。

バタバタと段ボールからぬいぐるみを出して、飾る子を吟味している。


「……お嬢様。嘘はよくないです。」

「大丈夫。小鳥は電話に気づいたら絶対に来るよ。」


(それに……。)


「……こうしなきゃ、恐れ多いって断っちゃうもん。

 ね、そんなに悪い嘘じゃないでしょ。」

「……それはそうですね。」


その言葉を聞いて、フランは私の頭を撫でてくれた。

ちゃんと私の意図は伝わったようだ。


「さて、私も手伝おうかな。」


雛乃のお人形選び。

私も手伝いた……。


立とうとしたら、膝にまだ力が入らなかった。

そうだ、足がぷるぷるしてたのすっかり忘れてた。


床に向けて、顔からすっ転ぶ。

ただし、そんなことは問題にはならなかった。


「危ないです。お嬢様。」


危うげなく、フランが身体を支えてくれた。

へへへ……。

さすがフラン。

自慢の執事。


「お嬢様はまだしばらく休んでてくださいね!」


フランはそうひとこと言って、雛乃のお手伝いに立ち上がった。

お言葉に甘えることにしよう。

お泊まり会までに怪我したくないもんね。


ぐだりと寝転んで2人を眺める。

2人はどんなぬいぐるみを選ぶのかな。

そんなことを考えながら、私は過ぎていく時間に身を委ねた。




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