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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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めぐるちゃん家は大騒ぎ


「……って電話が来たんだけど。

 なんのことか分かる?」


さっきの鈴からの電話について聞くと、めぐるちゃんの顔は一気に青くなった。

そして表情を変えずにカレーを頬張る唯華ちゃんにゆっくりと向き直った。


「唯華、家出って今日の朝からだよね……?」

「はい、ちゃんとお手紙も置いてきましたよ。

 絶対に許しません。さようなら、と。」

「……っ!」


大慌てでめぐるちゃんは自分の携帯へと走っていった。


「え、うそっ!ごめんなさいっ!」


そしておっきな声でスマホに向かって謝り始めた。


「まったく。めぐ姉は落ち着きがないです。

 フランちゃん、おかわりいただいてもいいですか?」

「もちろんです!たんと召し上がってください!」


フランと唯華ちゃんはマイペースにのんびりと会話を続けていた。

ここはめぐるちゃんの様子を見たほうが良さそうだ。


「めぐる、どうした?大丈夫か?」

「めぐるちゃん、どうしたの?大丈夫?」


小鳥と被った。

ただめぐるちゃんは、そんな私たちも気に留められないほど焦った表情。

そしてそのまま、大急ぎでどこかに電話をかけた。


玲奈れなさん!!ごめんなさい!!

 うちに!うちにいます!

 連絡気づきませんでした!

 うちにいますので安心してください!」

『め、めぐる!?

 そ、そうなのね。そっちに居るのね。

 それなら良かったわ……。

 本当に良かった……。

 それで?あの子は……。』


めぐるちゃんが唯華ちゃんをちらっと見た。

唯華ちゃんはなんともなさそうにひらひらと手を振った。


「唯華は元気にカレー食べてます……。」

『……。』


沈黙。


『唯華に代わって。』

「え、え、でも玲奈さん……。」

『ごめんね。代わって。』


渋々という風に、めぐるちゃんが電話を代わった。


「お母さん、なにか言いたいことな

『このっ……バカ娘!』

「ば、バカ娘っ!ひどい!

 お母さんが私のゆめ……秘密を見たからでしょ!」


スピーカーと唯華ちゃん、2人の怒鳴り声が響いた。

速攻で怒りが振り切れてる。


『夢小説くらいで家出して他所様に迷惑かけて!』

「くらいって!絶対に許さないから……!」

『くらいよ!私だって書いてるんだから!』

「お、お母さん……。」


風向きが変わった。


『北斗の拳のトキって分かる?私あの人の……』

「玲奈さん!待って!!ストップ!」


めぐるちゃんが大慌てでスマホの向こうの人物にストップをかけた。

ま、まあ母のそういう話を聞くの辛いよね。


「お母様……。」


だけど唯華ちゃんは潤んだ目で感銘を受けていた。


「お母さん、家出してごめんなさい。」

『もう……無事で良かったわ。

 でももう二度とこんなことしないでね。』

「ああでも、今日は泊まってもいいですか……?

 新しいお友達ができたんです。」

『でもセキュリティとか大丈夫?

 貴方になにかあったら……。』


すごく心配そうな声。

まあセキュリティはまったく問題ないけどね。

フランも小鳥も居るし。

ただ説得力にはならないからなー。

どうしたものか……。


『ああ違うわ。ちょっと待ってて。

 警察に見つかったって伝えるわ。』


ぷちり、と電話が切れた。

……思ったよりも大事になっていたみたいだ。


「え、警察。」


ぐぎぎとロボットのようにぎこちない動きで、唯華ちゃんが助けを求めるようにめぐるちゃんを見た。


「わ、私、な、なんてことを。

 ちゃんとお父さんにはめぐ姉のとこ行きますって。」


涙目で弁解を始めた。

唯華ちゃん自身も大事になるとは思っていなかったようだ。


「唯華。まったくもう……。」


めぐるちゃんが両手を広げる。

唯華ちゃんはよろよろとその腕の中に倒れ込んだ。


「唯華はみんなが大事にしてるんだから。

 家出なんて大騒ぎになっちゃうよ。

 もうしちゃ駄目だよ。」

「う、うぅ……。」


よしよしと優しく撫でるめぐるちゃん。

普段とは違うお姉ちゃんとしての一面。

私も小鳥もフランも、ただ見守るしかできない。


てれれんってれれんっ


まためぐるちゃんの電話が鳴った。

きっとまたお母さんからだろう。


「唯華、出れる?」

めぐるちゃんは器用に片手で頭を撫で続けながら、電話を唯華ちゃんに差し出した。

「うん……。えっと……お母さん?

 ごめんなさい……。お家帰ります……。」

電話を受け取った唯華ちゃんは、マイクに向けてそう喋った。

涙を堪えて滲んだ声だった。


やっぱりこれ以上心配をかけない為には、一度帰るしかないんだろう。

安全を保証する手段が無い以上、私たちはその判断に異議を唱えることなんてできない。


唯華ちゃんのお泊まりはまた別の機会に。

みんながそう思った時だった。


『唯華。今日は泊まってきてもいいわよ。

 せっかくお友達ができたんだもんね。』


意外なことに、すんなりと認めてくれた。


『警察の偉い方……警視って言ったかしら。

 その方がそのアパートは絶対に安全だって。』

「?本当に本物の警察ですか?」

『え、ええ、ちゃんと本物よ。

 でも警察の方がそんなに言うなんて。

 めぐる、貴方はどんなとこに住んでるの?』

「え、普通のアパートですよ……?」


とにかく今日はお泊まりできることは確定した。

でもそんな怪しい警察なんて……。


(1人しか心当たりないよなー。)


唯華ちゃんたちの電話を聞くのをやめ、立ち上がる。

多分まだ近くにいるはずだ。

玄関の扉を開ける。

するとそこには当然のごとくに奴がいた。


「この貸しはちゃんと返せよ。」

「うん、今日のは本当にありがと。

 絶対に返すね。」


腕輪を外して扉の外から聞き耳を立てていた鈴。

綺麗な青い目でじーと私を睨んでそう言った。

警察として家出少女の捜査をしていたんだろう。

さらにお母様の説得までしてくれた。

これは大きな借りだ。

近いうちにちゃんと返さなきゃ。


「あ、話まとまったな。じゃあ俺はデートに戻るぜ。」


鈴が腕輪をつけなおす。

そしてすぐに踵を返して車に乗って帰っていった。


「お姉ちゃん、お泊まりしてよくなりました。

 ?どなたかいらしてたんですか?」


唯華ちゃんが後ろから声をかけてきた。

私は振り向いてそれに答える。


「うん、親友が来てたの。

 いつか紹介するね。」


私がそういうと、唯華ちゃんは嬉しそうに頷いてくれた。

おバカだけどたまにかっこいい私の親友。

鈴ともいつか仲良くなってくれたらいいな。


あ、


「唯華ちゃん、こっち来て。」

「?なんでしょうか?」

「いいからいいから。」


唯華ちゃんの目元。

溜まっていた涙を拭う。


「よし、これで綺麗な唯華ちゃんに戻ったね!

 今日は楽しもうね!」


そして手を引いてみんなのところへ。

お泊り会はこれで決定。

すっごく楽しみだ。

どんな夜になるかな?



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