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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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雛乃のお見舞い


運動会の翌日。

私たちのやることは決まっていた。


「彼氏としてお見舞いしにいっていい?」

『ただの微熱よ。それにもう大丈夫だから。』

「フランがご飯作りたいって。」

『……いいわ。ぜひ来てちょうだい。』


という経緯もあって、フランと2人で雛乃のお見舞いをしにいくことになった。

小鳥も連れて行こうと思ったけど、今日はお留守番。

準備できてない状態で、小鳥をお家に迎えるのは緊張するとのことだった。


「ねぎと卵と鶏ー♪健康おかゆー♪」

「とっても美味しいおかゆだねー♪」


フランと2人で口ずさみながら雛乃のお家へ。

いつもながら、フランと二人だとあっという間に目的地についた。

楽しい時間はあっという間にすぎるからね!


雛乃のお家はちゃんとしたマンション。

オートロックまでついてる。

さすがこのみちゃんから逃げるために引っ越したお家。

セキュリティは盤石だ。


チャイムを押して雛乃を待つ。

すぐに雛乃はエントランスのオートロックを開けてくれた。

エントランスを抜けて、雛乃の部屋がある3階へ。

また改めて玄関のチャイムを押す。

するとガチャリと雛乃が扉を開けてくれた。


「雛乃ー!生きてるー??」

「雛乃お姉様!大丈夫ですか!?」

「生きてるし、大丈夫よ。

 みんな、心配しすぎなんだから。」


雛乃は少し恥ずかしそうに口を尖らせて、私たちを家の中に迎えいれてくれた。

玄関には可愛い熊と猿のぬいぐるみ。

それにしっかり整頓された綺麗なお部屋。

前に来たのはサッカーの直後くらいだっけ?

やっぱり雛乃らしい素敵な部屋だ。

小鳥、余裕で呼べるとおもうな。

 

「ではご飯作って参ります!

 雛乃お姉様はゆっくり寝ていてくださいね!」


フランはぴゅーっとお台所へと駆けていった。

今日のお昼は蒸し鶏と卵のおかゆ。

食べるのが楽しみだ。


「それで雛乃?具合は大丈夫?」

「ばっちりよ。37.4分って微熱だったし。

 昨日のうちにすっかり熱は下がってたわ。」


雛乃はふふんっと笑った。

無事なら良かった。

小鳥なんて、大丈夫かなーってすごくそわそわしてたし。


「でも心配してくれたのは嬉しいわ。

 あ、そうだ。これあげる。」


雛乃は椅子に腰掛けて、机の上にあったお菓子をひとつ手に取って私に投げ渡した。

美味しそうなマドレーヌ。

よく見たら、机の上にはお菓子が山積みになっている。


「お菓子、買いすぎじゃない?

 そんなに食いしん坊だっけ?」

「お姉ちゃんがたくさんくれたのよ。

 私ひとりじゃ食べきれないわ。」


へー、お姉ちゃんが。

それなら納得……。


「え?」

「え?ってなによ。私が食いしん坊だって言いたいの?」


いや、そうじゃない。


「雛乃、お姉ちゃんいるの!?」

「あれ、言ってなかったっけ?」


雛乃がマドレーヌを齧りながら、写真立てを指差した。

そこには旅行で撮ったのであろう家族写真。

お父さんにお母さん。

それに温和そうなお姉さんにきりっとしたお姉さん。

雛乃を中心に、みんな楽しそうに笑っていた。


「うわー、みんな美人……。

 それに優しそう。いいなー……。」


家族揃って美人さんだ。

お父さんも優しそうだし羨ましい。

私の家庭とは全然違う、穏やかな雰囲気がその写真1枚から読み取れる。


「でもお姉ちゃんたちには困ったものよ。

 ちょっと待っててちょうだい。」


雛乃は立ち上がって、押し入れへと向かった。

そして大っきな段ボールを持ってきた。


「見てちょうだい。」

段ボールの封を開けて、私にその中を覗き込むように促した。

中を見てみると……。

「わ、すごい。これ全部お姉ちゃんから?」

中にはちっちゃいぬいぐるみが大量に入っていた。

「そうなの。昔、私が好きだったからって。

 もうそんな子どもじゃないんだから。」

雛乃はぷんぷんと口を尖らせた。

でもすぐに楽しそうに、箱の中の縫いぐるみを取り出し始めた。

「せっかくだし、そろそろ入れ替えようかしら。

 新入りはどの子が好き?」

聞かれてぬいぐるみたちを改めて見回す。

小さな子猫から中くらいのポケモンのぬいぐるみまで色々。

あ、私の好きなシェイミのぬいぐるみもいる。

「この子好き。」

私がシェイミを指さすと、雛乃はその子を私に手渡した。

それとシェイミの他に小さい虎のぬいぐるみと、中くらいな柴犬のぬいぐるみも合わせて手にした。

「玄関の門番、いつも変えてるの。

 しばらくはこの子たちに任せるわ。」

そう言って雛乃は玄関へと歩き出した。

そして抱えていたぬいぐるみと玄関に居たぬいぐるみを丁寧に入れ替えた。


「これでばっちりね。お役目ごくろうさま。」


さっきまで門番してた子たちを撫でて大事にしまい、雛乃はふぅとひと息ついた。


「みんなのお世話も中々大変だわ。

 ずっとしまってるのもかわいそうだもの。

 ほら、困ったものでしょ?」


雛乃は共感を求めるようにそう聞いてきた。

困ったものかー。

ただ雛乃が家族に愛されてることが分かっただけな気がする。


「お嬢様!雛乃お姉様!

 おかゆできました!」


フランの声に呼ばれて、席につく。

それからは雛乃と2人でゆっくりご飯を食べて、私たちはお家に帰った。


雛乃はもう元気。

小鳥にそう伝えると、とてもほっとした顔をした。

さらにそのことを雛乃に伝えると、とても嬉しそうに狼狽していた。


なにはともあれお見舞いは大成功。

雛乃の知らない一面も見れて、とても楽しいお見舞いになった。



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