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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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雛乃の関係更新


「お、おはようです!」


雛乃が元気な声で私たちの部屋に飛び込んできた。

小鳥が居るって分かってるから少し上擦った声。

これで小鳥への恋心をちゃんと自覚してないんだから可愛いものだ。


(でも今日は……。)


小鳥に彼氏ができたことを伝える会なんだよな……。

いや、雛乃も巻き込みたいけどね。

雛乃がどう答えるか想像つかない……。


「ねぇ、私たちじゃまじゃない?」

ちょんちょんっと小鳥の袖を引いて尋ねる。

私とフラン、今は居ない方がいいと思うけど……。

「あー……。できればいて欲しいかな……。」

小鳥はそう答えた。

それならいいけど。

私たち、ただの野次馬にしかなれないよ。


「え、えっと……。大事なお話って……。」


雛乃はそわそわとそう小鳥に聞いた。

多分驚くよなー……。

私とフランは置き物として、小鳥の言葉を待つ。


「えっと……付き合うことになった……。」


小鳥は恥ずかしそうにそう言った。

雛乃がその言葉をゆっくりと飲み込む。

最初はぽかんとした表情。

でもそれはみるみると変わって……。


「も、もしかして新入りと!?

 え、え!おめでとう!やっぱり!!」


満面の笑みで、私に向けてそう言った。

すっごく嬉しそう。

あまりに眩しい……。


「あ、え、えっと……。」


小鳥もその眩しさにやられてしまったようだ。

間違ってると言い出せずにたじたじとしている。

でもさすがにその誤解は解かないとまずいだろう。

頑張れ、小鳥……!


「私、2人のこととっても応援してたの!」

雛乃は尚もきらきらしている。

「雛乃、ちょっと聞いてくれ……。」

小鳥は勇気を出して、雛乃に向き合った。

さすがに雛乃も私たちの様子に気づいたのか、首をかしげながら小鳥に向き合った。


「……私はめぐると付き合い始めた。」


小鳥はそれだけ伝えた。

雛乃はぽかんとしてる。

そして私の方をちらりと見た。


「え、じゃあ新入りは……?」


複雑な表情。

雛乃はめぐるちゃんとも仲良し。

だからめぐるちゃんの幸せを祈りたいのは伝わってきた。

でも今、目の前にいるのは私で。

小鳥の言い方的に、私は失恋したみたいで……。


「え、えっと新入り……。

 げ、元気出して……。」


すごく憐れまれた。

いや、別に私は今そんな辛い状況じゃないよ。


「……小鳥、雛乃には自分で説明するんでしょ?

 いたたまれないから早くして。」


小鳥にコソコソと耳打ち。

うーん、と一度考えて小鳥はまた雛乃に向き合う。


「えっと……雛乃。よく聞いてくれ。

 変なことをいうけど、軽蔑しないでくれたら……。

 いや、やっぱり軽蔑したかったらしてくれ……。」


ひと呼吸。

 

「あたしもこいつもめぐると付き合ってる。」


歯切れのすごく悪い言葉。

でも小鳥は勇気を出して私たちの現状を説明した。

改めて言葉にすると、異常さが際立つ。

めぐるちゃんが悪女みたいだ。


「えー……っと……。うーん……。」


雛乃は口をまごまごさせて、情報を読み込もうとしている。

めぐるちゃんが悪い子だと思われたくないし、ここはフォローしないと。


「えっと、めぐるちゃんが浮気性とかじゃないよ。

 私たちのためを思って……。」

「私たちのためを思ってって……。

 なんだかDVされてる彼女みたいな台詞ね。」


逆効果だったかもしれない。

いらぬ悪印象を与えてしまった。


「はい!」

「え、えっと……フランちゃん、どうしたの?」

「私から説明させていただいても宜しいでしょうか?」

「じゃあお願いしてもいいかしら……?」


かくかくしかじか。

私と小鳥のそわそわを解消するために、めぐるちゃんが2人まとめて彼女にしてくれたこと。

それを噛み砕いて雛乃に伝えてくれた。


「状況は分かったけど……。変な状況ね。」


フランのおかげで、雛乃も状況を飲み込めたようだ。

でも大変なのはここから。

できれば雛乃にもこの輪の中に入って欲しいからね。


(まぁでも雛乃も私と同じ立場だったし……。

 大丈夫かな?)


2人で小鳥と付き合うのは私も雛乃も目指すところだったわけだし。

その中心がめぐるちゃんに変わっても、ずっと一緒にいられることに代わりはない。

だからそこを突けば……。


「なぁ雛乃、雛乃も良ければめぐるの……。」

「え、えっと……。それはお断りします。」


断られた。

しかもけっこう強めに。


「だ、だってめぐるちゃんはお友達だし!

 それに私が付き合いたいのは……。」


雛乃が小鳥を見る。

そうか、雛乃が付き合いたいのは……。


雛乃が大きく息を吸い込む。

そして一度小鳥を見て、吸った息を吐き出す。

もごもごとしたあと、勇気を出したようにようやく口を開いた。


「し、新入りだから!」

「え」


小鳥の驚いた声。

いや、だって、ねえ。


「し、新入り!い、いいわよね!」

「え、えっと、うん。」


私は勢いに飲まれて頷いた。

いや、意味は分からないけどね。

小鳥、めちゃくちゃ驚いてるよ。

ぽかーんとアホ面になってる。


というわけで関係更新。

雛乃と小鳥はいまだ友達。

私と雛乃は交際を始めた。


状況は一層混迷を極める。

果たして私たちはどこに向かってるのだろうか。


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