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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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関係更新の3分後


「おめでとうございます!」

「おめでとー。」


私たちが付き合い始めてすぐ、フランとみゆちゃんが拍手をしながら部屋に入ってきた。

私たちの会話はやっぱり全部聞いていたらしい。

フランもみゆちゃんもとてもニコニコと笑っていた。


「皆様で仲良しなのはとってもいいことです。」

「です。」


なんだかそう言われるととても恥ずかしい。

悪いことをしているという自覚はあるのだ。

それ以上にめぐるちゃんの提案が魅力的だっただけで。


「あ!」


ていうか一番大事なことを伝えないと!


「私、フランともう結婚してるみたいなものだよ。

 それでも大丈夫?」

「は、はい!もちろんです!」


めぐるちゃんは元気に返事をしてくれた。

良かった。

フランは届出を出してないだけでとっくにパートナーだから。

そこだけは絶対に譲れないのだ。


「ありがとうございます、めぐるお姉様。

 お嬢様、これからもよろしくお願いしますね。」


フランが私に抱きつく。

そしてそのまま私の頭を撫で始めた。

やっぱりとても心地いい。


「じー……。」


そんな私たちをみゆちゃんがじーっと見ていた。

私がウィンクすると、みゆちゃんも私に抱きついた。

前からフラン。後ろからみゆちゃん。

とっても幸せなサンドイッチだ。


「めぐるちゃん。わたしもはいっていい?」


みゆちゃんがそう問いかけた。

小学生を彼女にする高校生。

倫理的にはもちろんノーだろう。

でも……。


「うん、もちろんだよ。

 みゆちゃんも一緒だよ。」

「ありがと、めぐるちゃん。」


めぐるちゃんはいとも簡単におっけーを出した。

もう倫理観という概念なんて知ったことか。

そんな勢いを感じる。


「めぐる、ちょっといいか。」

でも当然、小鳥がひと声かけた。

さすがに小鳥はまだそこまで倫理観が欠けているわけではないらしい。

「え、え、はい。」

めぐるちゃんは首をかしげながら、小鳥に向き合う。

なにもおかしいことなんて無いと思っているのかも知れない。


「さすがに小学生は……まずくないか?」

「だいじょうぶ。なんねんだってまてるよ。」


小鳥の質問に、みゆちゃんは親指を立てて答えた。

みゆちゃんはしっかりとちゃんと分かってるらしい。

私と小鳥で顔を見合わせる。

お互い同じタイミングでため息をついた。


「みゆちゃん、きっとみゆちゃんにはもっと……

「ううん、おねえさんたちがいいの。」


私の言葉を遮るように、みゆちゃんはそう囁いた。

私、今日遮られてばっかりだな。

でもそれだけ力強く言ってくれるのが嬉しくて、私はもうそれ以上は言えなかった。


「……小鳥ちゃん。」

「ああもう!わかったよ!」


もう小鳥も吹っ切れたらしい。

みゆちゃんもパーティーに加わることが決定した。


「よろしくね。だいすきなおねぇさん。」


ぐりぐりとみゆちゃんが頭を背中に押し付けてくる。

かわいい……。

まあでもでもよく考えたらフランも設定上は13歳。

元から私はロリコンって思われてもおかしくないし、今さらなのかも知れない。


(……あれ?)


今さらだけど、めぐるちゃんって18歳超えてたっけ?

これ普通にめぐるちゃん相手でも事案なのでは……?


「めぐるちゃん……。

 そういえば今いくつだっけ……?」

「?17ですよ。」

「分かった。私たちは絶対に手を出さないからね。」


小鳥もうんうんと頷いている。

良かった、先に気づけて。

めぐるちゃんとだと、気をつけないと雰囲気に流されかねないからね。

気を常にしっかり持たなきゃだ。


「だ、大丈夫です!

 私もちゃんと待てますから!」

「このバカがお腹出して寝てたら?」

「……。」


めぐるちゃんは黙り込んだ。

こわっ。

油断できないじゃん。


「だ、大丈夫です。

 き、きっと我慢できます……。」


めぐるちゃんは眼を泳がせながら、絞りだすようにそう答えた。

一応だけど私もしっかりしておこう。

恋人だけど、恋人らしいことはしない。

そういうのは最低でも相手が18を超えてから。

よし、覚えた。

これでめぐるちゃんに手を出すことはない。


「ふぅ……」

小鳥が1つため息をついた。

「なんか朝からバタバタだったな。

 ちょっとだけ休ませてくれ。」

そう言って小鳥は部屋からでていった。

「ことりおねぇさん、まって。」

「あ、小鳥ちゃん!私も一緒に戻るね!」

みゆちゃんとめぐるちゃんも小鳥に続いた。

部屋に残されたのは私とフランだけ。


「お嬢様、おめでとうございます。」


フランはそう小さな声で私に囁いた。

まだちょっと複雑な気持ちはあるけど……。

これで小鳥にそわそわせずに済むのかな。

だったら嬉しいな。


でも喜ぶ前に……。


「フランは私たちの会話全部聞いてたんだよね。

 私が告白に答えられなかったことも知ってるよね。

 なんで小鳥にちょっと嘘ついたの?」

「その方が話がまとまるかと。

 思いつきの作戦でしたが、うまくいきました!」


フランはふふん、と鼻高々に笑みを浮かべた。

確かにその通りだった。

だけど、今はそれを褒めることなんてできなかった。

だって……。


「フラン。褒めたいからこれ解いて……。」

「えへへ。嫌です!

 もっともっと私から撫でさせてください!」


まだ私は手足を縛られたまま。

そんな私をフランはひたすら撫で回していた。


「いい決断をして偉いです。

 これでこれからもずっとみんなで一緒です。

 偉いです。偉いです。」


そうフランはずっと褒めてくれた。

もうそろそろランニングの時間。

だけど私はフランが褒めてくれるのが気持ちよくて。

それに皆とこれからも一緒なのが嬉しくて。


「……ちょっとだけ顔拭いて。」

「ふふっ。もちろんです。」


フランが私の顔を拭く。

その優しさに、私は涙をこぼしてしまった。

寂しさじゃなく、安心からくる涙を。

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