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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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お城女子会


「おっしろー♪お嬢様とおっしろー♪」


午後1時。

カーテンを閉め切った暗い車内。

フランの楽しそうな歌が響く。

お城=ラブホテル=いかがわしい場所。

そんな方程式はフランの中にないらしい。

ただ楽しそうにお城に行ける喜びを歌っていた。


ぶるぶるとスマホが震えた。

メッセージは後部座席に座る山城さんから。


『どういう状況なの???

 私を誘拐してどうするつもり???

 暇とは言ったけど!!』


後ろを振り向くと、山城さんは不満そうに口を尖らせていた。

小鳥と山城さんのグループラインを作成。

そこで今回の経緯を説明した。


『フランがお城みたいな形のラブホに興味持っちゃって。でも小鳥と3人で行くのはしんどいので、頼れるかっこいい保護者枠として付いてきてもらえたら嬉しいです。』


そう送って後ろを振り返る。

すると山城さんは満更でもなさそうな顔をしていた。

ちょろい人だなー。


『ていうかラブホ行ってなにすんだよ。』

小鳥からのメッセージ。

『最近はラブホ女子会ってのもあるらしいし。

 適当にだらだらゲームでもしようよ。

 Switch持ってきた。』

そう送ると、小鳥はスタンプで『了解』とだけ送り返してきた。


しばらく車で移動して、ついにその外観が見えた。

確かに見た目は綺麗だけど……。

中はラブホテルなんだよなー……。

そんな楽しいものじゃないと思うな……。


無人のエントランス。

フランが楽しそうに部屋を選んだ。

小鳥と目を合わせると、困ったように肩を竦めた。

そのまま部屋へと歩いていく。

中学生1人、大学生2人、大人1人。

ラブホ女子会にしても変なメンバー。

ていうかフラン連れてきて良かったのかなーって気すらしてくる。


扉を開ける。

そこにはもうとても大きなベッドが鎮座していた。


「わ!すごいです!お姫様のベッドですね!」


フランが楽しそうに私の手を引っ張る。

とりあえず最優先事項は……。


「小鳥!Switchテレビに繋いで!」

「おうよ。」


テキパキと小鳥がSwitchをテレビに繋ぎ始めた。

フランが満足するまで、ゲームで時間を潰す。

それが今日の私たちのミッションだ。


「……ねぇ、お酒頼んでもいい?。」

「大丈夫ですよ!でも飲み過ぎないでくださいね!」

「……うん。今日は抑える。」


山城さんはルームサービスで何やら色々注文している。

そしてその間にSwitchのセッティングは完了した。

もう完璧。

ラブホだからとエッチな雰囲気を期待していた人が居たら残念でした。

ここからはただのゲーム会にしてやるぜ!


「……これはなんでしょうか?

 なんでマッサージ機が?」

「……お姫様だって肩は凝るからね。」


フランが手に持ったものをそっと元の位置に戻す。

ここからはただのゲーム大会だぜ!


ぴんぽーん


「……ルームサービスきた。とってくるね。」


山城さんがルームサービスを受け取りに行った。

さて、今日はなんのゲームをしようか。

山城さんはゲームの腕も未知数。

となればスマブラとかよりもパーティーゲームの方が良さそうだ。


「……じゃあ私はのんびり見てるから。

 なんか難しいゲームとかしてくれると楽しいな。」


ソフトを選んでいると、山城さんはそう言ってお酒とおつまみの封を開けた。


「え、山城さんもやりましょうよ。」

小鳥が声を掛けると、山城さんはふぅっと小さく息を吐いた。

「……私、ゲーム引くほど下手だよ。

 ちょっとやってみせてあげようか?

 スマブラ入れてもらっていい……?」

すごくのんびりとした速度で山城さんがコントローラーを握った。


それから3分。


「……ほらね。」


山城さんは弱い敵にボロ負けした。

確かに超弱い。

これならゲームは私と小鳥でドンキーの続きでもしようかな。

そう思った時だった。

フランが優しく私の肩をぽんぽんと叩いた。


「お嬢様お嬢様。」

「どうしたの、フラン?」


何か言いたいことがあるらしい。

みんなでやりたいゲームでもあるのかな。

だから私はいつも通りに聞き返した。


「これはなんでしょうか?」

「しまって……。」


駄目だ。

やっぱりここはフランの教育に良くない……。

見せちゃいけないものが多い……。


「小鳥お姉様?」

「フラン、頼む。元に戻してくれ。」

「……?」


小鳥もすごく気まずそうに目線を逸らした。

いや、だって。

フランどころか小鳥にだって早いよ。

見るだけで恥ずかしい。

なんかそういう場所で遊んでるんだなーって意識しちゃうし……。


「……フランちゃん、こっちおいで。

 私の膝の上でゲーム見よ?」

「かしこまりました!

 メアリお姉様、温かいですね!」


山城さんがフランを抱えて動けないようにしてくれた。

ナイス判断。

とても助かる……。


「……フランちゃん。動いちゃだめだよ。」

「抱きしめられてるから動けないです!」


そんな会話を聞きながら、ゲームの準備もできた。

結局ドンキーコングの続き。


「……悪い。ミスった。」


「ごめん!私もミスった!」


「ぐえっ。」


「ぎゃーっ!」


びっくりするくらい集中できない!

家だともっと集中できるのに、場所がだめすぎる……。

小鳥も私もミスばかり。

全然進めない。


「……ふたりともっ。ふふっ。が、がんばれーっ。」

「ふれー!ふれー!です!」


でも2人が応援してくれてるしね!

もうちょっとだけ頑張ろう!


それから30分、そわそわする心をどうにか落ち着かせようやく1つステージをクリアできた。


(……無駄に大変だったな。)


気づけば汗まで掻いてる。

普段やるよりも数倍疲れた。

「……あ、フランちゃん。」

山城さんのそんな声。

気づけばフランが私の横で手を取っていた。


「汗流して差し上げましょうか?」


フランが指差す。

その先にはすけすけのシャワールーム。

ふぅ……。


「いや、今日は疲れたから帰ろうか。

 お風呂は帰ってから入るね!」

「はい!かしこまりました!」


ゲームを片付けて、車に戻る。

ひとまずそれで私たちのラブホ女子会は終わりとなった。




それにしても小鳥の耐性の無さにはびっくりする。

ほとんど喋らなかったじゃん!

でもそんなところもかわいい……。


こんなこと思っちゃ駄目なのに、どんどん私は小鳥に惹かれてる。


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