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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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旅行の終わり


旅行も残すスケジュールは飛行機に乗って帰るだけ。

アクシデントも旅の醍醐味。

なにかあるかなって思ったけど、そんなことは特になく普通に搭乗エントランスまで来れた。

やっぱりフランは偉大な執事だ。

チケットの管理から時間の調節まで、できないことは何一つない。

フランの前にアクシデントなんて起こるはずがないのだ。


(とはいえ……。)


なにか起きて欲しかったのも事実だ。

というのも小鳥の様子が元に戻らない。

お土産を買うためにした別行動以降、情緒がおかしい。

急に冷たくなったり、かと思えばしおらしくなったり。

そして気を抜くと積極的に手を繋ごうとしてきたりする。


「悪い、ちょっとお手洗い行ってくる。」


飛行機の出発ロビー。

小鳥が席を外した隙に私たちは大慌てで会議を始めた。


「小鳥ちゃん!どう考えてもおかしいです!」

「え、えぇ。これじゃ身が保たないわ……。」


特に被害を受けている雛乃が項垂れた。

元々小鳥から雛乃へはスキンシップがそう多い方ではない。

優しく褒めるくらいがデフォルト。

なのにさっきからやたらと手を繋いだり、頭を撫でたりしている。

距離感がおかしい。

いったいどんなバグが起きてる?

もはや嬉しいとか照れるよりも心配が勝ってきた。


「様子が変になったのはラーメン屋巡りからだよね。」

「なにか悪いものでも食べたんでしょうか……?」

「小鳥さんは悪いものなんて食べないと思うけど……。

 でもやっぱり様子がおかしすぎるものね……。」


めぐるちゃんと雛乃とコソコソ話。

するとフランが手を高く挙げた。


「はい、フラン。」

「ラーメンは元々悪い食べ物です!」

「だよね。つまりラーメンのせいで決まりだ。」


結論が出た。

やっぱりラーメンのせいだ。

小鳥からしばらくラーメン抜けば元に戻るかな。


「とりあえずしばらく様子見よう。

 しばらくラーメン抜いたら元通りになると思う。」

「そっか……。それなら任せるわ……。」

「私もこっそり食べないように見守ります。」


話はまとまった。

あとは小鳥を待って、ラーメン禁止令を発布する。

かわいそうだけどしょうがない……。


「……ぷっ」


笑い声。

誰から?


「フラン?」

「鈴お姉様です。」


そっか、鈴の笑い声か。


「おい鈴。てめぇなんか知ってんだろ?」

「い、いや!なんも知らない!知らないって!」


鈴は慌てて手を振って誤魔化そうとした。

そんなんで誤魔化されると思うなよ。


小鳥をイメージして鈴を強く睨みつける。

すると鈴はおもむろに立ち上がった。


「お、お花摘んでくるな!じゃ!」


ぴゅーと早足でどこかに逃げていく。

好都合。

絶対吐かせてやる。


「じゃあちょっと行ってくるね。」


フランの手を引いて立ち上がる。

まだ飛行機が飛ぶまで時間はあるし、ゆっくり追い詰めてやろう。

だけどその時だった。


「え、えと。その……。

 ああでも……。良いのかな……。」


なにか言い淀むこのみちゃん。

ていうか鈴とこのみちゃんは一緒だったんだもんね。

このみちゃんに聞くほうが早いか。


腕輪で鈴の場所を調べると、私たちからそう遠くない位置で追いかけられるのを待っていた。

むかつくからスルー。

このみちゃんに事情聴取を始めよう。


「このみちゃん、なにか知ってる?

 小鳥の様子が変なの。

 心配だから知ってたら教えて欲しいな。」


私が聞くと、このみちゃんは小さく唸った。

喋るか迷い中。

でも少し待つと、絞り出すように話し始めた。


「いえ、さっきお土産選び中に……。

 僕たち小鳥さんと出くわしたんです。

 それで一緒にご飯食べたんですけど……。」


やっぱり鈴とこのみちゃんが関係しているのは合ってたみたいだ。

あとはどんな話をしたのか……。


「鈴ちゃんが小鳥さんは皆のこと、恋愛的に好きだよって吹き込んだんです。それを小鳥さんは真に受けてしまったみたいで……。」


ふむ……。

つまり、小鳥は私たちのことを好きだと勘違いした?

それで頭がバグったと?

ていうか私と雛乃はともかくめぐるちゃんも?

いや、でもめぐるちゃんも小鳥のこと好きな片鱗は確かにあるし……。

もうなにがなんやらだ!

でもとにかくバグった理由は小鳥が変な勘違いをしてるからだと判明した。


(……でもそもそもなんでそんな洗脳することに?)


鈴が面白半分に洗脳したのは分かった。

だけどなんでそんな洗脳が通じたんだろう?

だけどその質問はできなかった。

小鳥が帰ってきたからだ。


「……悪い。混んでた。」


小鳥はひとことそう言って、私にくっつくように座ろうとした。

くっつくのは嬉しいけど……。

さすがに洗脳を解いておこう。

いくらなんでもかわいそうだ。


「小鳥、ストップ。」

「……あ?なんだよ。」


小鳥が私を弱々しく睨む。

私は息をひとつ大きく吸い込んだ。


「私たちのは友情!!

 恋愛感情ではありません!!」

「っ!??」


小鳥が驚いてる。

ここは畳み掛けるしかない。


「雛乃とめぐるちゃんからも友情です!

 みんなもそう思うよね!」


私の言葉に雛乃は強く、めぐるちゃんは少し迷ったあと頷いてくれた。

実際のところ、雛乃は小鳥のこと好きだし、めぐるちゃんもそうかもだけど……。

ごめん、ちょっと今は小鳥を治すの最優先で。

バグって弱々しい小鳥、みてられないし……。


「……」


小鳥はぽかんと口を開けて、私を見据えた。

私はただドヤ顔を作って小鳥に自分の正しさをアピールする。

こういう時は自信があると見せることが肝心なのだ。


「くくっ。」


小鳥が小さく笑う。

そして次の一瞬で、小鳥の顔はみるみる赤くなった。

変な勘違いをしていた自分に気づいたんだろう。

楽しそうな笑いは一瞬で収まった。


「……悪い。あたし、おかしかったな。」


そう言って項垂れた。

変にくっつくこともなく、いつも通りの距離に座って。

周りを見ると、雛乃もめぐるちゃんもほっと一息ついていた。

ひとまずこれで全部解決。

これで元通りだ。


小鳥に好意を伝えていこう作戦も一時中断するしかない。

鈴め、本当に余計なことしかしない。


まあそこから先は特に語ることもない。

鈴に今度しばくからと宣言して飛行機に乗って。

雛乃と鈴とこのみちゃんと別れてアパートまで歩いて。

最後はお風呂に入って布団に倒れ込んだ。

それであっけなく旅は終わり。






だけど……。



(でも私の気持ちは結局、恋愛?友情?)



ベッドの中、私は悶える。

結局、小鳥に宣言したことが正しいことなのか、間違っていることかは私にも分からない。

彼女になりたい、友達で居たい。

どちらも自分の本心すぎて……。

そんなしこりを残して沖縄旅行は終わりとなったのだ。


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