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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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帰り際、黒歴史は突然に


車に戻る途中だった。


知らない女の子がこっちをじっと見ている。

制服を着てるから多分高校生。

全体的に線が細く、ガラス細工のような印象の女の子。

「フランが可愛いからかな?」

「いえ、私のことを考えてる訳ではなさそうです。」

そう言いながらフランが腕輪を見せる。

あ、そっか。腕輪でそういうの分かるのか。

自分の腕輪を使ってみる。


「……?」

どうやら私のことを考えているみたいだった。

でも全く身に覚えがない。

私の友達と言えるのは高校時代に一緒につるんでいた小鳥とりんだけだ。

そして大学でも私はろくに友達を作っていない。

今の私を知る人物なんて……。


「あの……?もしかして王子様ですよね?」

いつの間にか女の子が目の前に来ていた。

ていうかあれ、王子様って……


背筋が凍った。


「ひ、ひと違いです!!!」

背中を向けて脱兎のごとく逃走する。


(やばいやばいやばいやばいっ!!!)

冷や汗がだらだらと零れる。

「お嬢様!?」

手を繋いだままのフランが慌てている。

突然のことに何が起きてるかも分かってないみたいだ。


「やっぱり!!王子様だ!!」

後ろからそんな声が聞こえた。

私はただひたすらに撒くことだけを考えていた。


車の目の前まで逃げてきた。

あとは車に乗って、逃げて、忘れる。

それで私の黒歴史には向き合わずに済む。


あれ!?ない!?車のキーがない!


「……お嬢様!お嬢様!

 車のキー落としてましたよ!」

フランはずっとそのことを叫んでいたらしい。

私はそんなことにも気付けなかった。


「はぁ……はぁ……これ……」

振り向くと顔面を蒼白にした女の子。

「おとし、ましたよ……」

彼女は車のキーをどうにか私に渡す。


そしてそのまま横を向くと


「おぇぇ」

胃の中のものをぶち撒けてしまった。


私はそれを見捨てて逃げることもできず、私の黒歴史へと向き合うことを余儀なくされたのであった。

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