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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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甘やかす夜

ベッドの中。


フランと私でめぐるちゃんをサンド。

めぐるちゃんの顔はこっちを向いている。

真っ白で整った綺麗な顔。

期待するように乱れる息。

その期待には応えなければ。

たくさん甘やかしてあげよう。


「ひゃ」


腰に手を回すと、小さく言葉が漏れた。

距離がさらに近づく。

息が私の首にかかる。

ちょっとくすぐったい。


「わ!」


めぐるちゃんの背中側。

そこにいるフランが私の身体ごとぎゅっとめぐるちゃんを抱き締めた。

3人小さく固まる。


「えへへ。二人とも暖かいです。」


永い永い一瞬。

人とくっついてる時間はすごく長く感じた。

普段と同じ10秒だとは思えなかった。

だけどフランの言葉で正気に戻れた。

今日はめぐるちゃん甘やかすデー。

私がぼんやりしてちゃ駄目だ。

ちょっと気合いを入れよう。


「めぐる、今日はお疲れ様。

 いっぱい歩いて頑張ったね。」

「めぐるお姉様、ワンピースも似合ってました。

 すごくかわいかったですよ?」


前と後ろからめぐるちゃんを褒める。

いい子いい子。


「めぐるは身体が綺麗だよね。

 白くて細くて……。羨ましいな。」

「えい!」


フランがめぐるちゃんの首を甘くむ。

めぐるちゃんの身体が硬直した。

私も服の中に右手を入れて、素肌を撫でる。

いけないことをしてる気分だ。


「二人ともだ、だめです……。」

「だめじゃないよ。

 今日はたくさん甘やかすって決めたんだから。」

「ぁぅ……」


背中を撫でるとめぐるちゃんはくすぐったさを堪えるようにきつく口を結んだ。


「ほら、力もっと抜いて。」

「めぐるお姉様。お嬢様の言う通りに。」


それでも緊張したままの身体。

力をほぐすように手や足を揉む。

ちょっとずつ力が抜けていく。


「よくできました。偉いよ。」


耳元で囁く。

ちょっとまた緊張が戻ってきた。


「ふふっ。だめだよ。力抜いて。」

「でも……。」

「でもじゃないですよ。ゆっくりでいいですから。」


焦るような呼吸音。

それがちょっとずつ普通の呼吸に変わっていく。

普通の呼吸になったら腰に回す手に力を入れる。

また焦るような呼吸に変わる。

その繰り返し。


「いじわるです……。」


めぐるちゃんはそう呟いた。

返事の代わりに頭を撫でた。

むぅっとめぐるちゃんは小さく鳴いた。


「ふふっ。めぐるお姉様が可愛いからですよ。」


フランもめぐるちゃんの頭を撫でる。

2人で髪をわさわさと。

めぐるちゃんはちょっと恥ずかしそうに私の胸に顔を埋めた。


「いい子いい子。」


5分くらい?

その状態でゆっくりと褒め続けた。

するとゆっくりとめぐるちゃんの腕に力が入り始めた。

私との間に腕を入れて、少しずつ押す。

そして小さな声でボソリと呟いた。


「ありがとうございます。満足しました……。」


ほんとに?

私が聞くと真っ赤な顔で小さく頷いた。

フランと私のサンドイッチから解放する。

めぐるちゃんは枕に顔を埋めてしまった。


「よしよし。お疲れ様。いやじゃなかった?」


私が聞くと、小さく首を横に振った。

ちょっと落ち着く時間が必要かな。

フランの手を弄りながら、少し待つ。

枕に顔を埋めたままのめぐるちゃん。

でもその耳からは次第に赤色が抜けていった。


「なんで」


くぐもった声。

言葉の続きをゆっくり待つ。


「なんでこんなことしてくれたんですか……?」

「ふふっ」


思わず笑い声が溢れてしまった。

だってそんなの決まってるもん。


「ごめんね。せっかくの旅行だもん。

 めぐるちゃんに楽しんで欲しかったんだ。」

「私も同じです。

 めぐるお姉様はお嬢様が大好きですからね。」


それにめぐるちゃんは今日みんなのペースに合わせて、たくさん歩いてくれたしね。

あんまり体強くないのに頑張ってくれたんだもん。

労いは必要だ。


「私……」


めぐるちゃんが何かをいいかけた。

でもすぐに首を横に振って枕に顔をおしつけてだまりかこんだ。

何か言いづらいことがあるみたいに。

だけど意を決したように、続きはすぐに口からこぼれた。


「……王子様のベッドに忍び込もうと思ってました。」

「え」


絞り出すような声で衝撃的なことを言った。

聞き間違い?


「えっと、フラン?」

「お嬢様のベッドに忍び込む予定だったと。」


それってつまり……。


「で、でも満足しましたから!」


私の考えを遮るようにめぐるちゃんがパタパタと手を動かす。


「だって旅行だし……。特別なことしたくて……。」


もじもじと指をベッドの上で動かしてそういった。

ふむ……。


「も、もういいですよね!

 も、戻りましょう!みんな待ってます!!」


めぐるちゃんがベッドから勢いよく立ち上がり、私たちの手を引いた。

深く考える暇などなく、私は現実に引き戻された。


(……まあみんなを待たせちゃ悪いしね。)


その手に引かれるがまま2階へと。

めぐるちゃんが満足したから甘やかしタイムは終了。

これからは普通のお泊りな夜だ。


「まあでも小鳥には怒られるかな。」

「大丈夫です!ただ2人で撫で撫でしただけですから!」


フランがそういうなら大丈夫かな。

そして私たちはみんなと合流。

やっぱりちょっと怒られた。

それでもゆっくりご飯を食べて、順番にお風呂に入って。

それからまたみんなで遊んで。

1泊目は無事に終了と相成った。

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